異端児は殺すしかあるまい
イザベルとリリアンヌが教えている部屋の前で、ルイスはうち震えていた。
(はぁぁぁぁぁ……。何て可愛いんだ。子供と視線を合わすためにしゃがむなんて、何て心優しい。それに、あの慈愛に満ちた微笑み。
世界中の者がイザベルの優しさに、たった今、浄化されたな。されなかったものは、異端児だ。殺すしかあるまい)
物騒かつ阿呆なことを本気で考えながら、気配を殺しつつイザベルをルイスは覗き見る。そんなルイスに、偶然にもリリアンヌはいち早くに気が付いた。
(何あれ?ベルリンのストーカーだよね!?女の子をつけ回すなんて許せない!!)
前世の死因が元カレから逃げている間の事故死であるリリアンヌは、ルイスへと侮蔑の視線を向ける。そして、覗いていたドアから一番見えにくい場所へとイザベルを誘導した。
「リリー、どうしたの?」
「ううん。何でもないよ」
更にイザベルを自身の影へと隠したリリアンヌは、ルイスの様子を伺おうと振り向けば、そこには──。
「─────っっ!!」
「あら、ルイス様?どうなさったのですか?」
「こっちはゼンが上手くやってくれているから、手伝いに来た。どうだ?順調か?」
笑みを浮かべながら聞くルイスが立っている。
(えっ!?だって、ドアのところにいたよね?いつの間に!?
覗いてたくせに、今来ました!!みたいな感じを出してるんだけど。ベルリン、気付いて!!気付かないようにさせたの私だけど、早く気付いて!!婚約者のヤバさレベルが順調にアップしちゃってるよ……)
当然、イザベルに伝わることなく、ルイスは文字の練習を共に見ることとなってしまった。
だが、ここでルイスの予想を裏切ることが起こった。
「では、私はローゼン様のお手伝いに行って参りますわ。お一人では大変でしょうから、サポートをしませんと。私も武術を少しだけ嗜んでますもの。少しはお役に立てることがあるかもしれませんわ。
ルイス様、リリーは能力も素晴らしいので、しっかりとご覧になってくださいまし」
まさか、時給に加えて能力給を支払うということが、ここで足を引っ張るとは思わなかったルイスは、苦笑いを浮かべながらも頷いた。
(本当に小夜の頃から、俺が思いもつかないことをやってくれる。そういえば、柿の木に自らよじ登っていたこともあったな)
(いやいやいやいや、殿下とは無理だから。確かに私が教えてるところを見てもらわないといけないのも、ゼンが一人で大変なのも分かるけど、ベルリン行かないで!!)
頷いて了承の意を示したルイスを、リリアンヌは信じられない!!という目をして見たが、見事にその視線をスルーされる。
こうして、イザベルはローゼンの元へと行き、リリアンヌとルイスは子供達に文字を教えることを再開した。




