↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
86/93

実は人助けをしていた(本人も助けられた方も気付いていない)



 リリアンヌが用意したカードは、可愛いイラストの下に文字が書かれており、子供たちからの反応も上場だ。


「最初は絵を見て取っていいからね。それで、取ったカードの下の時をよく見て。

 それを5回やったら、裏返して文字だけの方でやるからね。

 行くよー。かめ!!」


 リリアンヌの声で皆がかめのイラストが描かれたカードを探す。イラストの下には『ka me』と書かれている。


「あっ!!シューの『ka()』だ!!」


 嬉しそうに取ったカードを見ているカシュー。その姿にイザベルは頬を緩める。


 (カシューは愛らしいのぅ。……どう見ても女の子(おなご)にしか見えぬ)


 和やかに始まった文字の学習。ユナイ担当の計算も、もう少し堅苦しさはあるものの似たような雰囲気だ。



 問題は──。



「絶対に、勝つ!!そんで、ボッコボコにして皆の前で謝らせてやるからな!!」


 そう息巻いていたギート。だが、やはりボコボコにされたのは彼の方だった。


「まだまだぁ!!────うぐぅっ!!」

「ちくしょー!!────ぶぼぉっ!!」

「死ねぇーー!!────ぁがっっ!!」


 なかなかめげない彼は、基礎練習などやろうともせず、ひたすら木刀でローゼンへと向かっていき、素手で倒されている。

 その間、ローゼンは木刀の持ち方や立ち方を教えているため、ギートには視線すら向けていない。


「バケモノめ」


 肩でゼイゼイと息をするギートをルイスは鼻で笑った。


「当たり前だろ。ああでなければ、将来、騎士団を率いるなど無理だ」

「騎士団を率いる?」

「そうだ。ゼンに認められれば、将来は騎士かもな」

「あいつ、騎士団長になるのか?」

「さあな。だが、ゼンほど武術の才を持った者に俺は会ったことがない」


 (前世を含めてな。しかも、あれだけの才を持っていながら努力を惜しまない。直に誰も敵わなくなるだろうな)


 ルイスは子供達一人一人に丁寧に向き合うローゼンを眺める。



「あんたは、見てるだけなのか?」

「俺か?やってもいいが、手加減は苦手でな。それに、俺は守るというより殺す方が得意だから教えるのには向かない」


 (何せ、殺られる前に殺れるように鍛えたからな。イザベルに害をなす者を、イザベルの目に触れる前に殺れるように。

 ……だが、記憶が戻る前からそれはイザベルに止められていたな。自分でやるから手出しをしないように言われたから、実際に殺ったのは数える程だ)


 悪役令嬢と名を馳せていたイザベルだが、実はルイスから幾人もの命を救っていたりする。

 そのことにイザベル自身も、助けられた側も気が付いていないだけだ。


 本当に危ないのは皇太子のルイス。イザベルは知らず知らずにストッパーの役目を果たしていた。

 そのことに気が付けている者はいるのだろうか。



 ルイスはギートへと視線を向ける。


「どうするんだ?俺に教えて欲しいのか?

 殺さないようには気を付けるが、骨は何本折れるか……、内臓も傷付けない保証はできないな」


 全く表情を変えずに言うルイスにギートは瞬きもできない。冷や汗が流れ、ガチガチと奥歯が鳴る。


 その様子をルイスはつまらなそうに見ると、ローゼンへと視線を戻す。


「素直に教わってこい。お前は弱い。それでは、何も守れない」


 その言葉に悔しそうにはしたものの、ルイスに殺気を放たれて、ギートはおとなしくローゼンのところへと向かった。


 (孤児院の子供が学ぶのがイザベルの望みだからな。しっかりやれよ)


 ギートが真面目に取り組むかを少し見た後、ルイスは静かに立ち上がる。



「ゼン。俺は行く。お前はここで続けててくれ」


 ローゼンが頭を下げたのを横目にイザベルの元へと向かう。ルイスはイザベルが子供に教えている姿を見逃すつもりは全くなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。