表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アダムとイブのその先に  作者: まある
14/20

14.合流

幸太郎達が班の部屋に向かうと、中は伽藍堂(がらんどう)だった。


「誰も居ない……?」


温谷(ぬくたに)の野郎も居ねぇ」


シーンと静まり返った部屋に、人気を感じる事は出来なかった。


(しばら)くすると、四方にある部屋の一つから、背の高い男が出て来た。


「あ、副班長」


副班長と呼ばれたその男は、温谷(ぬくたに)炎源(えんげん)と言い、炎天(えんてん)の弟である。


その性格は真逆で、熱血な脳筋の兄とは違い、冷静で氷の様な性格であった。


「遅かったですね。皆さんなら、先に任務に向かってもらいました」


「え?全員がですか?」


「ええ。少し予想外の事が起きまして。あの炎天(ばか)共々、援護に向かわせました」


炎源は、大きめの端末を落とさない様、腹に押し付けながら軽く操作した。


「貴女方にも早急に向かって欲しいのですが、どうやら向こうが、まだだそうで」


「向こう?」


幸太郎がそう訊くと、炎源は「ええ」と端末を見せた。


「……櫻井さん達と?」


「ええ、貴女方はまだ下級ですので、規則として合同で現場に行ってもらいます」


「待てよ。前回のは、俺らだけで行ったろ」


炎源の言い草に苛立った劉牙(りゅうが)は、軽く舌打ちをして、ポケットに手を突っ込んだ。


「それは、イレギュラーのレベルが低かったからでしょう。規則で強化するまでもない、という事です」


「んなっ……!」


仰々しく溜息をすると、再び端末を操作した。


「異論は認めませんし、そんな時間もありません……あちらの部屋に全て用意してあるので、さっさと合流地点へ向かって下さい」


掌を上にして指し示したのは、炎源が出て来た部屋だった。そして、「それでは」と言うなり、別の部屋へ入っていった。


(本当に兄弟か疑わしい程だな)


氷の様に冷たい言葉や態度に加え、人を寄せ付けないオーラが放たれ、度々疑われる程だった。幸太郎もその一人であり、性格の寒暖差に悩まされることもあった。


「おい……弱虫」


「なっ、何?」


「さっさと行くぞ」


劉牙は吐き捨てる様に言うと、さっさと部屋まで歩いて行った。




□■□




合流地点は任務場所の近くだった。


幸太郎達が着く頃には、既に茉莉奈(まりな)が到着していた。幸太郎に気付くと、「あ」と片手を挙げた。


「幸太郎さんに、劉牙さん!お久しぶりですね」


嬉しそうに微笑んだ茉莉奈は、落ちかけた眼鏡を掛け直した。


「久しぶり……龍太(りゅうた)くんは?」


「あー……あそこら辺に居ると思いますよ」


そう言って指し示した先には、既に戦闘が始まっている場所だった。


「弟の能力は、解析(サーチ)という、相手を見れば、その能力や何処が弱点か見抜けるものなんです」


「へぇ、そりゃあ便利だな」


興味を持った様子の劉牙に、茉莉奈は「はい」と頷いた。


「だから、班では引っ張りだこで……今回も先輩方に連れられてしまいました」


「ふーん……つーことは、実質三人でやれってか?」


「まぁ……はい」


もごもごと口ごもった茉莉奈は、気まずそうに横を向いた。


微妙な空気に耐えかねた幸太郎が、口を開こうとした時、端末が鳴った。届いたメッセージを開くと、五センチ程のアバターが投影された。


「副班長!?」


思わず驚いた幸太郎に、投影された炎源は仰々しく溜息をついた。


「何故驚くのか理解不能ですが、無事合流出来たのですね。ところで、弟さんが居ない様ですが」


「あ……それなんですけど……」


茉莉奈から全てを聞いた炎源は、「なるほど」と頷いた後、一度消えた。その数分後、またメッセージが届いたかと思うと、「ごめーん」と龍太が駆け付けた。


「はぁ……これで全員揃いましたね」


「本当にご迷惑をお掛けしました」


眉尻を下げた茉莉奈は、炎源に向かって頭を下げた。炎源は深い溜息をつくと、「それで」と目線を下げた。


「貴女方には、ここから二キロ先に居るイレギュラー(それ)の対処をして頂きます」


「二キロ先って、確か住宅街じゃあないっけ?」


「ええ、そうです」


首を傾げた龍太に、炎源は顔色一つ変えずに頷いた。


「おい、そんなのやばいだろ」


「ええ、恐れていた事態です」


今にも駆け出しそうな勢いの劉牙に、平坦な声で言い放った炎源は、何度目かの溜息をついた。


「これだから単細胞は嫌なんですよ」


「あ?何が言いたいんだよ」


「既に、住人は全員避難させました。なんともまぁ……一から十まで言わなきゃ分からないというのは、非常に残念ですね」


「……」


仰々しく呆れ、悪態をつく炎源に対し、見るからに不機嫌そうな劉牙は、言い返すでもなく、黙って炎源を見詰めていた。


「……まぁ、良いでしょう。 さっさと片付けて来て下さい」


それだけ言うとプツリと消え、画面は黒くなった。


「……よくあんな腹立つ人の下で、出来ますね」


「はは……」


茉莉奈は、幸太郎に同情の眼差しを送った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ