表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アダムとイブのその先に  作者: まある
12/20

12.鍛錬

「目立った傷は消えたみたいね」


ベッドに横たわる幸太郎の側で、林檎の皮を剥きながら八千代は言った。


結局、戦いから一週間後に目を覚ました幸太郎は、疲労骨折と打ち身など、外も中も大怪我をしていた。


そして、劉牙(りゅうが)の怪我は幸太郎より酷かったが、三日で目を覚まし、今では、無理矢理動いては傷が開いてを繰り返している。


むろん、炎天(えんてん)に怒られ、完治するまでの休暇を渡された。


看護師達の回復系能力(ヒール)の甲斐あって、目に見える傷は塞がり、骨折などの中身の傷が残った。


「うん。看護師さん達のお陰かな」


「そうね、本来ならこんな早く治らないもの」


小さく笑った八千代は、「あ」と何か思い出した様に手を止めた。


「そう言えば、城崎(しろざき)さんが、出来具合を見てくれって言ってたわ」


「あー!あれか。うん、許可が降りたら見に行くよ」


不良品の銃の事を思い出した幸太郎は、今の状況を考えれば、当分先だろう。


(早く見たいのにな)


溜息をついた幸太郎を横目に、八千代は剥き終わった林檎を皿に盛り付けた。


「それで、氷室くんは懲りたのかしら」


話に挙がった劉牙は、拘束され、半ば無理矢理寝かせられていた。


「うるせーな。てめぇには関係ねぇだろ」


「冷たいなー。まぁ、いいや」


林檎が乗った二つの皿を、それぞれのサイドテーブルに置くと、上着に腕を通した。それを見た幸太郎は寂しげに「え」と言った。


「もう行っちゃうの?」


「ごめんね、この後任務が控えてるから」


「そっか。じゃあ、頑張ってね」


掌だけを少し挙げて、弱々しく手を振る幸太郎に、八千代は「じゃあね」と一言だけ言うと、そのまま部屋を出た。


残された幸太郎は、気まずさに口を閉ざしていると、舌打ちをした劉牙が「つーか」と口を開いた。


「どうやって食うんだよ」


「あ……」


何故なら、二人は外傷が治っただけであり、中は全く治っておらず、掌とつま先と頭位しか動かせなかった。


むろん、林檎など食べれる筈もなく、十分後に来た看護師に回収されたのであった。




□■□




それから一ヶ月経った頃に、二人は全快した。


それを当然の如く、祝いに来た炎天は開口一番こう言った。


「さぁ、鍛錬に行くぞ!」


「は?」


「え?」


祝われると思いきや、「鍛錬」と言われ、困惑した幸太郎は、断る事も許されず、ずるずると勢いに流された。


鍛錬場Aに連れてかれ、まず腹筋などの基本的なトレーニングをさせられ、その後、それぞれの前に戦闘機械(マシーン)が置かれた。


トレーニングで疲れ果てた幸太郎は、「いやだぁ……」と小さく漏らした。


「そんな嫌がる事はない!これは過去の戦いを記録した機械だ」


「記録……」


炎天はそのまま「むろん」と続けた。


「君達のも記録されている。しばらくは、そのおさらいをしてもらう」


「つまり、勝てりゃあ終わりって事だろ」


言うなり、脇に置いた大剣を持ち上げ、機械の上に手を乗っけた。


機械は、実際より三分の二位の大きさで、劉牙がその性能を疑う程だった。しかし、電源を入れるとその強さは同じだと分かった。


入れた瞬間、動いた腕に素早く攻撃され、ギリギリのところで(かわ)した劉牙は、腕の着地面を見て驚愕(きょうがく)した。


「おいおい、煙立ってんじゃあねぇか」


腕が上がったところだけ、ちろちろと細い煙が立っていた。


「威力は同じって事か」


そう口の中で呟くと、幸太郎も電源を入れた。


(八千代ちゃんが頑張ってるんだ。僕もやらないと)


微かに見た光景を頼りに、幸太郎は軽やか___とは言い難いが___に攻撃を避けていく。さらに、隙を見て銃を撃ち、機械に(かす)らせた。


一方で、劉牙も劣らず、素早い攻撃にも慣れ、大剣を振る余裕も出来た。しかし、どれも致命傷までには達せず、掠る程度だった。


及第点止まりの二人を見て後、炎天はひっそりと鍛錬場から出た。廊下を歩きながら、端末で電話を掛けた。


「私だ、温谷だ___ああ、その件だが___では私の方で動こう」


言葉少なく話した内容は、炎天と電話相手の脳に閉じ込められ、第三者に明かされるのは当分先だった。


まだ何も知らない、無垢で白そのものの幸太郎達を頭に思い浮かべ、炎天は唇の片端を上げたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ