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転生令嬢の天穹革命歌  作者: 蜂屋漣
第2章天才少女、高校生活を謳歌する
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第14話


「はっくしょんっ!!、はっ...くしゅんっ、うっ...ゲホゲボ!」


「あんたってほんと馬鹿」


「うぅ...めんぼぐないでず」


高校生初の登校日である入学式の今日、私は風邪を引いてしまいました。


呆れた顔の優希は軽く私を罵倒しながらも登校前に様子を見に来てくれていた。


「まったく、入学式前だって言うのに仕事するからでしょ。あんな馬鹿なことしたら誰だって風邪ひくし。今日は一日しっかり頭冷やすことだね。」


「すいません」


「別に謝ることじゃないし。じゃあ俺行くから。」


「行ってらっしゃい」


そう言って部屋から出ようとする優希に小さく手をふる。


最近の優希はツンデレで可愛い。少々じーんと来ながら、私は自分の不甲斐なさに心が折れかけていた。


本当なら今日は、鴻崎学園の入学式であり、私は新入生代表の挨拶をしなければ行けなかったのだ。


急遽任せてしまった次席の人には本当に申し訳ないことをしてしまった。

恨まれないといいな...。


なぜ私がそんな大事な日に風邪を引いてしまったかというと、後回しにしていた会社からの以来の曲作りをしていたからだ。

御手洗社長から、一ヶ月後までにある曲の作曲を頼まれていたのだ。


面倒で後回しにしていた結果、気づけば締切まで後3日を切っていた。

しかし、死ぬ気で2日間寝ずに曲を完成下まではよかったのだが、なんと会社に行く日に限った暴風雨。

その日は穂積も休日のため、なんとなく両親に送って貰うのも悪く思い、走って会社まで行った。


ずぶ濡れになって帰ってきて、寝不足でそのまま布団もかけずに爆睡。

案の定目が覚めて直ぐに頭痛と身体の熱で即ぶっ倒れた。


もともと、私の部屋は楽器や機材が置かれているためか、あまり歩くスペースがなく、ストーブは危ないため置いていなかった。


そのため、まだ冬の風が去り切っていない春の初めに、寝不足とずぶ濡れな免疫力を無くした身体で布団もかけずに長時間そのままにしていれば、そりゃあ風邪も引く。


そんな不運...馬鹿なことをしたおかげで私はこの通りベッドから1ミリを動けなくなくなってしまっていた。


ズビッ...ズビッ


「ああああ!...あっ、はっ...くしょん!」

くしゃみと鼻ずまりで頭がクラクラしながら、ひたすら起き上がっては鼻をかむを繰り返していた。


上を向いているときつくなるため、うつ伏せになったりと、結構ベッドの中でも忙しい。


ふと部屋を見回して、ものがほとんど置かれてない部屋に新鮮味を感じた。


部屋が暖かくて、空気も澄んでて居心地がいい。


実は、私の今いる部屋はいつもの私の部屋ではない。我が家がよくお客さんを家に泊める時に使う客室である。


私の部屋で療養しても治るものも治らないと踏んだ家族は、急遽私をこちらに移動した。

私が熱を出した時、もともと部屋を立ち入り禁止にしていたこともあり、私の部屋から反応がない事に異変を感じ取った加賀美さんが颯爽と駆けつけ、私は救出された。


今までほとんど誰も見た事のなかった変貌しきった私の部屋に、家のものは唖然となりながら策を講じ、結果私はもうひとつ部屋を与えられた。


もといた私の部屋はそのまま、仕事部屋として分けることになった。


最初は私も渋ったが、家族の土下座せんばかりの訴えと、申し訳なさで了承した。


医者からは、絶対安静にと言われたので明日も恐らく学校は行けない。


(ああー、人生初の高校の入学式が...青春の1ページの幕開けがこんな形とは...)


まさに漫画でありがちなとほほとこぼしたくなるような気持ちだ。


ひたすら悔やみながら目を閉じる。

さすがに今の状況で意気揚々と作曲する気になれず、今は寝た。



* * *



次の日熱も冷めて登校を明日に控えた中、こっそり私は家を飛び出した。


行ったのは美容院。昼辺りから、こっそり近くの店を予約して計画していた。


「こんにちはー!」


「いらっしゃいませ」


私が入ったお店は、少しオシャレでシックなイメージのお店だ。


今日は平日なこともあり店員は2人ほどしかいなかった。


「今日は、何になさいますか?」


「肩より少し上の辺りまでバッサリお願いします!」


元気よく鏡越しに店員さんにそう言うと、店員さんは驚いて少し戸惑っていた。


「え...本当にいいんですか?とても長くて綺麗な髪なのに…」


「いいんです!明日から高校生になるんで、イメチェンしたくて!!」


その言葉に理解したのか、店員さんは少し悩んで分かりましたと言うと、私の髪を切り始めた。



美容院の帰りは思わずスキップしてしまうほど気分が良かった。


家族の驚く顔が見れる上、高校生活始まる前のイメチェンはワクワクしてしまうものだ。


気分良く帰宅し、玄関の扉を開けるとそこには加賀美さんが私に素早く気づいていお出迎えしてくれていた。


いつもの無表情でお帰りなさいませと一言おって頭を礼をして、頭を上げて私の顔を改めて見ると加賀美さんは目をこれでもかと言うほど開いた。


驚愕の色が分かりやすいほどに見えて、私は思わずニヤニヤしてしまう。


加賀美さんは持っていた手拭いをポトっと落として未だ固まっていた。


それも一瞬のことですぐさま現実に戻り手拭いを拾った。


「気分転換に髪を切ってみたのだけれど、似合う?」


「ええ、とてもお似合いです」


「本当?!良かった」


まあ予想のつく反応だった。


けれど、ドッキリは実はこれからだ。

本命は母だ。


母は私の長髪をたいそう気に入っていたのだ。


もともと女の子が欲しかった母は、自分に似た女の子の私を可愛がった。


今は無くなったが、昔は紫苑の髪を毎日溶かしていたそうだ。


今は定期的に髪に良いシャンプーやオイルを買っては私にくれる。


もともとのロングストレート&姫カットは母の趣味だったりする。


そう考えると、唐突に考えてしまう。

私が髪を切ったらますます私は紫苑で無くなるのかもしれない、と。

大広間に向かっていた足が自然と止まる。


「お嬢様?」


話しかけられている事にもその時気が付かないほど、私の思考は迷っていた。


人格が紫苑から私に変わり、もともと紫苑っぽさのある外見である大和撫子風の容姿だったのが、髪をショートボブの明るめ印象にガラッと変わってしまった。


だんだんと私らしくなるにつれ、紫苑らしさが無くなって来たことに、家族はどう思うのだろうか。


もし悲しむ以上に私のことを嫌いになってしまったらと思うと心配だ。

悪魔が付いたーとか言われたらきつい。


そう考えれば考えるほど足が進まなくなってきた。廊下でいきなり止まって黙り出した私に加賀美さんはだんだん異変を感じどうしたんですか?と神妙な面持ちで声を掛けてきた。


「あっ、いや...両親はこの髪どう思うかなって...」


思考から離れ、心配する加賀美さんに聞いてみる。すると加賀美さんは少し考えてから言った。


「大丈夫ですよ」


その表情は僅かに微笑んでいた。


「確かに驚かれるかもしれませんが、きっと受け入れてくれます。お嬢様なりに、新しい環境に向かおうとしているのだと思ってくれるはずです。私はそう思います。」


「そうかな、ありがとう。そう言ってくれて」


こういう時、加賀美さんは私に気を使ってくれるのが少しくすぐったい。


少し自信を持ち、私は再び歩き出した。



* * *


「いやあああああああ!!紫苑ちゃんの髪が...」


「おかえり紫苑。その髪型も似合ってるよ」


「ああ...あの美しかった黒髪が、こんなに少なく...」


「へー、似合ってんじゃない?」


想像通りの反応であった。

父と弟は、私のイメチェンを認めてくれているみたいだが、母はやはり相当悲しんでいた。


母は私に近づいて、私の髪に触れるか触れないかの距離に手をかざしてあわあわ言っていた。

その様はまるで水晶玉を占う時の動きに似ていて出来れば辞めて欲しい。


かといって手を払うと余計泣きそうなほど今の母はメンタルがやられているため、私は黙って耐えるしか無かった。


ごめん...


けれどいよいよ耐えられなくなった私は、手を胸の前で組んで母に詰め寄り、少し上目遣いの体制をとる。


「お母様、どうか許してください。私、どうしても新しい場所におもむく際は新しい自分で向かいたかったのです。お母様に言えば、反対されると思って...」


高校受験の時に分かった事だが、母は押しに弱い(家族には)。だからこの攻撃は以外に聞く。


それに、私はつい最近婚約を破棄されたばかりだ。失恋で髪を切ったとも考えられるはず。


予想通り母は勢いをなくし、そうよねあなただってそうしたい時くらいあるわよね、といって名残りおしげに私の髪をもう一度触る。


つくづく母の外での時の変わりようが激しい。今でこそこんなんだが、人にピアノを教えている時はとても厳しい。


いつもキビキビしていて、冷静沈着。


母を知る人間はみな揃って氷の女王と命名している。


こんな母の表の性格に兄は見事に似てしまっていた。


余りの母の変わりように最初は私も驚いたが、兄と会った時にまるで生き写しでわないかというほどそっくりであった。


やっぱり家族だな...


私は少々あきれながら、ごめんなさいっと言って笑ってしまった。


そして家族で夕食をとり、早めに解散して部屋に戻って一息つく。


まだリメイクもなにもしていない元客室の部屋には、少し大きめのベッドと勉強机とクローゼットだけの部屋に、まだ慣れずにソワソワしてしまう。今まで楽器と紙の束で埋め尽くされた場所で寝ていたため新鮮なのだ。


取り敢えず明日の準備を整えて、明日着ていく新しい制服を少し手入れして壁にかけると、そのまま私はベッドに座った。


少しだけ、高校生に不安はある。


前世でも体験したことの無い高校生というものにまさかなれるとは夢にも思わなかったのだ。


この瞬間に彼女がいないことを少し寂しく思う。克復した筈なのに、こうゆうときにふと思い出してしまう。


あの時の寂しさは、未だ拭えない


大きな期待と僅かな心細さを残して、私は明日に備えて眠りにつく。


明日から高校生としての波乱の春が始まろうとしているとは知らずに...







新章!ついに高校生編です!!

ここまで見てくださった皆様本当にありがとうございます。

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