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昼休み

昼休み。


教室の空気はいつも通り騒がしい。


弁当を広げる音と、どうでもいい会話が混ざり合っている。


俺は机に突っ伏しながら、特に何をするでもなく時間を潰していた。


本当ならクラウドを開いてもいいが、さすがにこう何度も同じ名前を調べるのも無駄だ。


出てこないものは出てこない。


それはもう分かっている。


「優くん、今日静かじゃない?」


後ろから佐倉の声がする。


「いつもこんなもんだろ」


顔を上げずに答える。


「いや、いつもより考え込んでる感じ」


こいつは変なところだけよく見ている。


「別に」


短く返す。


それ以上話す気は無い。


「神崎さんのこと?」


図星を突かれて、少しだけ言葉に詰まる。


「……違う」


「絶対そうじゃん」


楽しそうに言ってくる。


俺はため息をついて体を起こす。


「お前さ、そんなに気になるなら直接聞けばいいだろ」


「それはつまらないでしょ」


意味が分からない。


だが、佐倉はそういうやつだ。


「優くんがどうするか見てる方が面白い」


「性格悪いな」


「知ってる」


あっさり認めるあたり、やっぱりこいつはよく分からない。


「ねぇ優くん」


「なんだよ」


「神崎さん、普通じゃないよね」


少しだけ声のトーンが落ちる。


冗談じゃない。


本気のやつだ。


「……さぁな」


俺は視線を逸らす。


分かっている。


だが、言葉にするほどでもない。


「クラウドにも無いし」


小さく続ける。


やっぱり気づいている。


全部じゃないにしても、違和感くらいは感じているらしい。


「お前も見たのか」


「ちょっとだけね」


“ちょっとだけ”で気づくのは十分おかしい。


普通はそこまでしない。


やっぱりこいつも、多少は俺に近い。


「で、どう思う?」


佐倉が身を乗り出してくる。


「どうもこうもないだろ」


俺は肩をすくめる。


「記録が無いだけかもしれないし、ただの不具合かもしれない」


自分でも無理があると思う。


だが、それ以上の説明も思いつかない。


「ふーん」


佐倉は納得していない顔をしている。


当然だ。


俺も納得していない。


その時だった。


「何の話?」


不意に声が割り込む。


俺と佐倉は同時にそちらを見る。


神崎が立っていた。


いつからそこにいたのか分からない。


気配が薄い。


チップ越しでも感じ取りにくい。


それが余計に気持ち悪い。


「別に」


俺は短く返す。


「ただの雑談だ」


「そう」


神崎はそれ以上追及してこない。


そのまま俺の前の席に軽く腰をかける。


距離が近い。


「優くん」


また名前を呼ばれる。


この呼び方にもまだ慣れない。


「なんだよ」


「昨日もクラウド見てたよね」


さらっと言う。


心臓が一瞬だけ強く鳴る。


「……見てたけど」


「やっぱり」


神崎は小さく笑う。


昨日見た、あの笑い方だ。


周りのやつには分からない程度の、ほんのわずかな変化。


「よく使うんだ」


「まぁな」


「便利?」


また同じ質問。


今度は少しだけ、意味が違って聞こえる。


試されているような感じだ。


「だから便利だって言ってるだろ」


少しだけ強めに返す。


神崎はそれを聞いて、軽く頷く。


「そっか」


それだけ言って立ち上がる。


用はそれだけらしい。


「……変なやつだな」


小さく呟く。


神崎はもう自分の席に戻っている。


何事も無かったように。


「ね、言ったでしょ」


佐倉が小声で言う。


「普通じゃない」


俺は何も答えない。


答えられない、の方が正しい。


クラウドに無い存在。


俺の行動を見ている転校生。


そして——


何かを確かめるような質問。


「……やっぱり面倒だな」


机に肘をつきながら呟く。


だが今回は、無視して終わる話じゃなさそうだ。

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