6.Among Friends
「おい」
ヤクザさんが言う。
わたしは「はい」と返事しようとしたけど、出て来た声は「ひい」だった。
「先輩! もうちょっと優しく! エリちゃん、大丈夫、この人、剣崎さん、刑事だから。恐いのは、ほんと顔だけ。女の子にはすごく優しいよ。ほんと、前に、乱暴されている女の人を助けるために、犯人を半殺しにしたこともあるし……」
半殺し!
どういうフォロー!
「お前は黙ってろ」
怖い刑事さんはマホトーンをとなえた!
「はい……」
猫屋敷さんはしゃべれなくなった!
「コンペイトウで願いが叶うって思っていたんだってな」
はい……、思っておりました。
「安心しろ、すべて裏はとった」
はい?
なんのことでございましょう。
刑事さんは警察手帳を開いて言った。
「期末テストで百点を願っただろ」
しかり。
頷く。
「百点だ。全科目じゃないが、三科目とも百点とっている。それから、歌手の桃城裕二に歌ってもらったのは、これも事実だ。SNSにお前と二人映った写真が残っている。彼のスケジュールとも一致する」
「え?」
「他にもあるが……、つまりだ……、もし本当に願いを叶える魔法のコンペイトウだったら、最後に願いをなかったことを願えば、お前が願った、それらの事実もなくなるはずだ。おい、俺は間違ってるか?」
ひいっ! 怖い!
「ま、間違いございませぬ……」
「幻覚剤を服用した上で、強力な自己暗示にかかっていただけだ……。だいたい、魔法のコンペイトウなんかあるわけないだろ」
きっと、魔法使いとか、ドラえもんなら持ってますぅー。
ぎくっ。
察したのか、恐い刑事さんイラっとしたみたい。
このうつけが! とか思われてそう……。
でも、刑事さんは声を和らげた。
「だから……、お前は悪くない。もし自分を責めているのなら、それは誤りだ……、元気を出せ。いいな」
あれ? ? ?
この人……、いい人?
よこ見て頬をかいてる。なんかかわいい?
わたしは「はい」と返事した。
電話の呼び出し音が鳴ると、二人の刑事さんは去ろうとする。何かの捜査中だったみたい。
ステージでは「胡椒芸術」っていう、変な名前のおじさんジャズバンドが演奏をはじめた。
わたしは何度も何度も刑事さんにお礼を言って見送った。
「そうだ、あの公園にいってごらん」
人ごみの中に消えて行く猫屋敷さんが、最後に手を振りながら言った。
「エリぃ」
香織がおたおたと駆けてくる。
「大丈夫だった?」
香織、わたしがヤクザに、いちゃもん付けられてると思って、何かあったらすぐに通報しようと携帯を持って、離れて見張ってたみたい。
「うん、ぜんぜん大丈夫、ありがと、心配してくれて」
なんか、いいな。心が温かくなる。
「あれ、エリ、なんか、変わった?」
「え? 変わったように見える?」
必殺、質問返し!
「ううん、なんでもない、あの人たち、何だったの?」
「うーん、あとでゆっくり話すよ」
「そう……、じゃあ、エリ、とりあえず、これからどうしようか?」
「うん、じゃあ、遊ぼっか、そのあと、一緒に公園に行こ」
香織は、すこし間をおいてから、元気よく「うん!」と言った。
二か月ぶりくらいに公園に来た。
入り口に花束が置いてあったので、二人で合掌して黙祷する。
ブランコに並んで座っておしゃべりしていると、砂場の方から三毛猫が歩いてきた。
「ミケ?」
目をこすっても、やっぱり、いる。
「ニャア?」
猫は足を止めて、わたしを見た。
「ミケだよね?」
「ニャア」
そうか!
ミケが死んだのが悪夢みたいな幻覚だったんだ!
わたしはミケに駆け寄って、ぎゅっと抱きしめた。
ミケ、ミケ、わたしのミケ。
生きてて、ありがと。
また、いっしょに遊ぼうね。
腕の中のミケは「ニャア」と鳴いた。
「ねえ、香織」
「なに?」
「うん……、王子様って……」
香織が不思議そうな顔をする。
「ううん、何でもない!」
そう言って、わたしは香織を駄菓子屋さんに誘った。
甘いものと、あと、ミケにおやつ買ってあげよ。
ミケを抱えて、二人で路地裏道を歩く。
空は透き通るように青い。太陽の光はとても暖かかった。
第七話 了
メリークリスマス&よいお年を!
第八話「殺人者は、未来から……」は、元旦公開。
サンタさん! 来て! プレゼントちょうだい!
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