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棺桶を担ぐ少女は死に場所を探している  作者: 久我 一
#第1章
7/13

死に場所を探すために3

 そこに村はあった。


 奥には森があり、村などの家よりも高い木が連なっている。緑の葉が生い茂り、鳥の囁きが聞こえてくるのがわかる。のどかで空気が美味しい村だ。


 村の周りには周囲の木より小さいが村を囲むように配置され、遠くまで木だけしか見れない。


 村の中には家があり、広場みたいに開けた場所。それに牛や羊など、他の魔物とは違い、人に危害を滅多に与えない魔物達が柵の中に解き放たれている。


 村の中に畑の数は指で数えるほど、それも小さい。だいたい家一個分くらいの面積で、家の隣にあるのがほとんど。何かの作物を植えているのだと思うが、まだ芽はでていない。


 村人達は痩せすぎず、中肉中背が多い。年齢もばらけている。年寄から赤ん坊までたくさんの人々が暮らしている村である。


 平和な村。そう表現できる村だ。


 だが、もうすぐ変わってしまう。平和では無くなってしまう。戦いが始まってしまうのだ。平和の村なのに。


 その平和な村に危機が訪れようとは誰一人も村の人達は知らなかったのだ。






♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎




 緑の葉が生い茂り、数々の高い木々が道の両方の端から端までつらなっている。


 道を歩いているのは二人組の人。一人は銀髪の男。腰には剣を帯び、周りを警戒している。もう一人は紫色のロープを纏い、顔が見れなくなっているが、歩くごとにゆらゆらと見える銀髪が見えてくる。体格的に女。背は隣の金髪の男より低い。女の方は剣を帯びていなく、女の体格より一回り大きい黒い棺桶を担いでいる。


 金髪の男の名はアーサー。そして紫色のロープを纏っているのがメル。


 彼らは今とある場所へと向かっている。


 その場所は昨日いた洞窟から少し離れた場所に位置する村である。


 そこに何の目的で行くのかというと……。


「それで、死に場所って具体的にどう決めているのですか?」


「……感覚」


 目的は一つ、彼女の死に場所を探すためだ。


 それは彼女の願いであり、旅の目的でもある。だが、僕は違う。僕の願いは彼女を守る事。それも永遠に。だから彼女には死んでほしくない。


 なら何故、彼女と共に行動して死に場所を探しているのかって?それは死に場所を探す事が彼女の旅の要であり、彼女の願いでもあるからだ。


 僕は彼女に死なないでほしい。でも彼女の願いは叶えてあげたい。そう思ったから、彼女と共に旅をしている自分がいるのだ。


 でも僕の言葉には矛盾が生じてしまっている。


 死なせたくないのに死に場所を探している。これっておかしいよね?


 でもこれが彼女の願いだから──別の方法を考えた。


 その方法が彼女にとって良い方法なのか悪い方法なのかは、この時のアーサーは知らなかったのである。


 時は彼女と契約した翌日の朝に遡る。


 僕と彼女──メルさんは死に場所を探すために旅をすることになっている。


 今、僕達は準備しているところである。


 まぁ、準備と言っても、洞窟に僕達がいた痕跡を全て消すそうなので、焚き火の後始末等々を来た状態まで元通りにするだけなんだけど。


 何で痕跡を隠すのだろうと思ったが、彼女は美しいし、高貴そうな雰囲気が微かに漂っているから、何かしらの事情があるのだろう。だから痕跡を隠している。何かから逃げているのだろう。そうとしか考えられない。


 僕が焚き火の後始末等々を終わらせた後に彼女が洞窟に向かって魔法を放った。何の魔法か分からないが、僕が知っても意味がないだろう。


 知っても理解ができなそうだし。


 ただ旅と言っても、具体的にはさっき言った死に場所を探すのだが、彼女の死に場所を探す旅には計画性がない。


 洞窟を出てからは森へ一直線。ずっと真っ直ぐ歩いている。道という道を歩いていないのだ。故に自我が強い人なのだろう、彼女は。


 それにしても僕はものすごく不甲斐がない。彼女の後ろにいるだけだ。森を突き進んでいる先頭は彼女だ。全く守ろうとしていない。でも、彼女がついて来て、と言っているんだ。逆らえるわけない。だから森を抜けたら、彼女の隣にいようと僕は決めた。


 どれくらい進んだか分からないが途中道を発見したので彼女に伝えると、森を突き進むことをやめて道に沿って進むことになった。


 森の時とは違い、僕は彼女の後ろにいるのではなく、隣にいる。もう一度言おう、隣にいる。気分は良好。されど幸福。それに胸が高鳴っている。それでも周囲の確認は怠らない。彼女に害があっては本末転倒。隣にいる資格なんてないのだから。


 道を歩くが周りは木だらけ。そろそろ草原とか村とか見えてもいいと思うのだが、全然見えてこないし、何もない。


 魔物だって、薬草とかの材料とかの草だって、一回も見てない。ずっと同じ木ばっかり。


 そろそろ何かしら見えて来てもいいんじゃないかな、と思った矢先、草原が見えてきた。辺り一面に草だらけだが、さっきまでいた木よりかは見えやすい。


 草原が見えてきたのだが、まだ道に沿って歩いていくと、村を発見した。のどかな村、そう印象づけるのが適切だった。


 村の奥には僕達が歩いていた森に歩きが広がっており、家の屋根より小さい木なんて見つけられないほど、木が成長している。


 ゆっくりと歩き、村に到着すると、家の隣にある小さな畑に桑で土を耕している人に声をかけた。声を掛ける前に彼女に尋ねてからだけど。


 ここの村人に僕たちがどういった経緯でこの村に来たのか言い、この村の村長に話をさせてほしいとお願いした。ちなみにここまで来た経緯は全て彼女の作り話。彼女は何かから逃げているから隠さなければいけない。胸が痛いむのだが。


 事情や経緯はともあれ村人は村長の家へと案内してくれた。仕事中なのにすみません。


 この村の村長宅に上がり、村長に数日だけ村に泊まりたい、と事を伝えた。村長は少し悩んだ上で了承してくれた。条件付きで。


 泊まる場所は空き家。決してボロいとか壊れているとかではなく、全く使われていない家。


 数日泊まるだけなら何も問題ではない。


 僕と彼女は泊まる空き家に上がり、今後について話す事になった。


 荷物──は特になく、床に腰を下ろした。剣は帯剣したままだと座りづらいので剣は壁に立て掛ける。彼女は棺桶を床に下ろし、一つだけある椅子に腰を下ろした。それから話は始まった。


 話はこれからの行動について。


「条件を達成させないといけなくなりました。先に終わらせておきますか?」


「そうね。なら明日行くわ」


 まず話をする為に条件について説明する。


 この空き家に泊まるための条件は魔物討伐である。村長曰く、最近森で赤熊(レッド・ベアー)を見かけたから討伐してほしいとの事だ。僕が武器を持っていたから言ったのだろう。


 魔物討伐。そして僕は今日で成人した。


 赤熊(レッド・ベアー)相手に勝てずに彼女を守れるのか?それは否。否である。できるはず無い。そんなんで彼女を守れるなんて夢だ。ただの幻想である。


 だから魔物討伐は僕がしなければならない。それは僕が彼女を守れるという証明でもある。


 だから、だから──





「──僕の職業(ジョブ)って分かりますか?」


 まずは彼女に聞こう。それから決めなければ……。





♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎




 結論からいうと、僕は今森にいる。


 過程は色々とあったが、まぁ結論から言えば、僕一人で赤熊(レッド・ベアー)を討伐することになった。


 そして過程を説明する。


 まず職業(ジョブ)を教えてもらった。僕の職業(ジョブ)は《聖魔騎士》というらしい。ありがとう神様。そして守れよ彼女を。


 次にスキル。スキルは全部で四つ。【剣術】と【浄化(カスタロフィ)】と【回復魔法】と「混沌症候群(カオス・シンドローム)】。彼女は最後のスキル以外の三つのスキルについて説明してもらった。


 【剣術】は剣を扱うのが上手くなる。それで剣術の隣にはレベル?というものがあり、十段階で表記されているそうだ。それで僕は今、十段階中、三段階目。


 彼女からは熊ぐらいなら大丈夫と言ってきた。彼女がいうのならば僕は大丈夫なのだろう。


 【浄化(カスタロフィ)】は霊とか呪いとか消せるスキルだそうだ。彼女からはレベルは十段階中、十段目だと言う。彼女は職業(ジョブ)の補正っと言っていたが、凄いのだろう。僕の浄化(カスタロフィ)は。


 【回復魔法】は文字通り、回復できるそうだ。傷を受けた時、便利になるな。十段階中、一段階目。魔力が操作できるようになったから魔法は使えると思う。赤熊(レッド・ベアー)討伐が終わったら試してみよう。


 そして最後は彼女が何にも説明しなかったスキル【混沌症候群(カオス・シンドローム)】。このスキルは死にそうになった時にしか使わないでと彼女直々に言われたくらい危険らしい。使い道は無さそうだ。


 職業(ジョブ)、スキルと終わって残る過程は森に()一人(・・)ということ。


 彼女はいない。それは嫌われたというわけでは無い。僕が決めたことだ。そもそも討伐は彼女が行くつもりだった。でもそれを僕は断った。


 理由は単純。昔の僕とのけじめ。彼女を守れるという証明。それだけだ。


 僕が討伐している間に死に場所を探してくるという条件で彼女は了承してくれた。


 本当なら彼女と一緒にいたい。守りたいと思う。でもこれだけは絶対に証明しなければならない。自分に、彼女に。


 なので僕は今、森に一人でいるのである。


 森は木だらけ。魔物の姿などまだ一匹も発見できていない。発見できているのは薬草や花とかだけだ。


 まずは討伐の前に標的を探さなければならない。


 僕は歩き出す。これは己の戦いなのだから。


 勇気と責任が混ざり合っている。それには恐怖もある。


 証明するんだ。僕が彼女を守れるという証明を。勇気、責任、恐怖、そんな気持ちどうだっていい。


 深く息を吐く。集中し、自分の意思を統一させる。


 やっと見つけた。森の奥に赤い何かが通り過ぎたのを目視した。


 今が正念場。いや、証明の場。赤熊(レッド・ベアー)の体格は優に二メートルを超え、横幅場広く、そして隙だらけのように見える。


 赤熊(レッド・ベアー)と対峙する。相手は素手。だが凶暴な爪、歯、人が真似できない身体能力も兼ね備えている熊の魔物。


 対峙してわかるが別に恐怖すらしないし、倒せると思えてくる。勝つビジョンが見えてきてしまっている。


 僕は一歩踏み込んで赤熊(レッド・ベアー)の首を狙い──剣を放った。


 赤熊(レッド・ベアー)の首が宙に浮かぶ。胴体と首が切断されているのだ。まさに一撃必殺。また一刀両断。


 魔物を殺すのは成人する前に思っていた時より非常に簡単だった。命を奪ったのに悲しくなんてなかった。昔の僕が見ていたら「酷い」っていうはずだろう。


 変わってしまった。自分でも気づくくらい変わってしまった。でもこれでいいんだ。今の僕は昔の僕ではもうないのだから。


♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎


 メル視点


 村に着き、彼に村長に話をさせて私は周りの景色を見た。村の半分以上は森に囲まれている村。


 村の畑の数は多いのかわからないが、前の村よりは数は少なく、また畑面積が小さい。家の敷地と同じくらいしかない。


 村人の数も少ない。家が少ないのだからそれに比例して少ないのだろう。


 この村は私の死に場所に相応しいのだろうか。


 答えは今のところは否である。


 アーサーという青年がこの村の村長に数日だけ寝泊まりできるかの交渉をしている。


 彼は何かと便利だ。村に立ち寄る際には交渉をしてくれる。顔が見られないので彼には感謝しかない。


 彼と村長の交渉は終わり、私達が泊まる家に案内してくれた。


 家はお世辞でも言えないくらいに汚い、が住めないわけではない。数日間だけなら大丈夫そうな家。あの時に住んでいた家よりものすごく小さくなるが自室よりかは狭い。問題は無さそうだからいいわ。


 私は家に入ると棺桶を床に置き、一つだけある椅子に座った。


 彼は壁に剣を立て、床に腰を下ろした。そして口を開く。


「条件を達成させないといけなくなりました。先に終わらせておきますか?」


「そうね。なら明日行くわ」


 この家に泊まるには村長が出した条件を達成させなくてはならないことになった。その条件とは魔物討伐。森にいる赤熊(レッド・ベアー)の討伐だそうだ。赤熊(レッド・ベアー)は森に生息していることが多く、縄張り意識は低く、仲間意識も薄い、よく同族同士で殺し合っている事もある。


 まぁ、赤熊(レッド・ベアー)程度なら塵も残さずに討伐できる。なら早ければ早い方が良いだろう。私の目的の為にも。


 彼に伝えようとした時、彼は深刻そうな顔つきで私に言葉を投げかける。


「──僕の職業(ジョブ)って分かりますか?」


 一瞬の空白。青年はどうやら職業(ジョブ)を知りたい様子。


 私は彼を見る。次々に職業とスキルが見えてくる。見たことない職業(ジョブ)と見たことがないスキルが一つと見たことのあるスキルが三つ。


 知らないスキルを注意深くしっかりと見る。


 【混沌症候群(カオス・コントロール)】。効果は術者を中心に範囲十五メートルの生物に対し、感情を反転。そしてランダムに入れ替える効果があった。


 これは危ないスキルだ。そして使わず封印した方が良いスキルだ。でもこのスキルは何かと便利になりそうだ。


 だから彼が危なくなった時にこのスキルは使ってもらおう。彼のスキルは強力だから。


 そして私は彼に言った。


「君の職業(ジョブ)は……《聖魔騎士》。私が知らない職業(ジョブ)よ」





















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