表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
棺桶を担ぐ少女は死に場所を探している  作者: 久我 一
#第1章
8/13

死に場所を探すために4

♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎


 アーサー視点 



 僕は赤熊(レッド・ベアー)を倒し、その首と胴体を担ぎながら村に向かった。


 森は静かだ。鳥の囁きも葉が揺れる音すらも聞こえていない。ただ僕の足音だけが聞こえてくる。


 僕とって負けられない戦い。そう思って挑んだ赤熊(レッド・ベアー)の討伐。それは呆気なかった。


 僕は自分が思っているほど弱くはなかったし、彼女よりは強くはない。そのことがわかった。


 だから僕は赤熊(レッド・ベアー)くらいの魔物なら倒せることが分かった。その事で僕は一歩踏み出せたのだ。


 重い赤熊(レッド・ベアー)の死体を担いで村に着いた。着いたときには村の人が数人来て僕達が止まっている家まで運んでくれた。優しい村人達だ。


 家の前で赤熊(レッド・ベアー)の解体をする。村の人達にも手伝ってもらって。


 解体している途中で村長にあったので魔物討伐が終わった、と報告をした。


 赤熊(レッド・ベアー)を解体し終わって、家の中に入る。家の中には彼女はいなかった。どこにいるのだろうか。見てもらいたかったなぁ。


 赤熊(レッド・ベアー)を倒した僕だが、まだ赤熊(レッド・ベアー)よりも強い魔物なんて沢山いるのだろう。だから粋がってはいけない。


 彼女に報告できる魔物といえば、物語とかに出てくる(ドラゴン)悪魔(デーモン)くらいだ。(悪魔(デーモン)に関しては部分的に魔物ではない。魔人である種類の悪魔(デーモン)がいるため)


 魔物討伐を終えた僕は、もう一度森へと向かった。


 あの村の人達のためにも村に危害を加えそうな魔物は討伐しなくてはならない。あんなに優しい村人達が僕のいた村みたいになるのはいけない。


 森に入って一時間が経った。周りは全て同じ木。剣の柄を握りしめて一歩ずつ前に進む。


 周りには魔物の気配もないし、遠くにも魔物の姿が見つからない。引き返した方が得策だな。


 来た道を戻り、村へと帰ろうとするが僕は止まった。


 後ろから刺さるように僕を見ているような気がした。視線を感じたのだ。


 振り返って確認するが、後ろには人や魔物の姿の欠片すら見えなかった。気のせい……なのかな?


 歩き始めた時の森とは違って不気味な森へと印象が変わった。さっきまで聞こえなかった風の音も聞こえている。


 まぁ、後少し歩けば村に到着する。それまで周囲の確認だけは怠らないようにしよう。村に帰るまでが討伐だから。


 周囲の確認を怠らずに不気味な森を抜け出して村に到着した。


 結局のところ、解体した一匹だけしか討伐できていなかった。


 疲労が溜まり、精神的に辛くなっているのがわかる。あれだけ周囲をよく観察していたのだから仕方がない。


 村についた僕は泊まる家に入る。


 家の中には食料を棺桶に入れているメルさんがいた。


「何やっているんですか?」


 反射的に出てきた言葉はこれだった。ただの疑問だ。


 普通に考えてほしい。棺桶を武器として魔物に投げたりしているのに、棺桶に食料を入れている。そもそも棺桶は死体を入れるものだ。だから武器や食料関連として使われることはないのである。


 すると疑問を解決する答えを彼女は言った。


「この棺桶(コフィン)は私の武器であり、魔法鞄(マジックバック)でもあり、私の大切な物でもあるのよ」


 魔法鞄(マジックバック)についてはアーサーは村に来る行商人が使用していたので知っていた。だからアーサーはメルがした行為に納得するように頷いている。


 魔法鞄(マジックバック)とは、原理は分からないが、魔法で空間を広げて小さなポーチでも気がまるまる一本入るくらいまで内容量を大きくすることができる。僕はそう聞いている。


 でもその魔法鞄(マジックバック)を武器として使っているのは初めて見た。世界を見て彼女以外に魔法鞄(マジックバック)を武器として使っている人なんていないだろう。


 疑問が解決したので魔物討伐が終わったと彼女に報告して、「森周辺を見てくる」と言い、家を跡にした。


 今日僕は赤熊(レッド・ベアー)を倒した。彼女の力を借りずに僕の力だけで倒したのだ。


 森周辺まで来て、僕は剣を振るう。


 剣を振るごとに感覚が研ぎ澄まされている。速さだって段々と上がっている。力もだ。


 彼女と肩を並べられる日は遠くない。だが、彼女を守れるようになる日は遠くなりそうだ。


 今の僕は彼女を守れない。逆に守られている。


 でも一月後、半年後、一年後はどうだろうか。その日の僕は今の僕よりも強くなっている。それは彼女も同じだ。だから僕は彼女よりも己を極める時間を確保しなければならない。


 剣を振る速さが速くなっている。


 僕の意味を失わないためにも僕は──





「強くならなくてはならない」


 素振りが前よりも集中してできていたと実感できる。


 日々日々強くなっていく自分。彼女の隣に立てる日はそう遠くはないだろう。


 素振りが終わった僕は次に魔法の練習をする。


 まずは周りを確認して人がいないこと状況を作る。鞘から剣を取り出して自分の腕を斬り付ける。痛い、だがこれでいい。斬られた傷を元通りにする様に僕は魔法を使用する。回復魔法だ。


 回復魔法によって僕の腕の傷はみるみると回復していく。それを体力が無くなるギリギリまで感覚で行った。


 十回くらいで僕の体は脱力感に覆われた。これが魔力の減少なのか分からないが、今の僕の限界だと知る。


 剣術の訓練、魔法の訓練が終わり、次にまた剣術の訓練をした。


 二回目の剣術の訓練が終わった後に泊まる家に帰ろうとしたが、村長と出会して話をした。


「君達二人は村を出て行った後、どこに行くのじゃ?」


 村を出て行った後、どこに行くか。僕は彼女についていくから分からない。だから僕は『分からない』と返事を返す。 


 村長はカッカッと笑い、話を続ける。


「そうか、そうか、分からない、か。君達の格好を見るに冒険者じゃろうて。冒険者なら中央都市国家でも行くといいぞ。あそこは冒険者にとって依頼が多いからの」


「ありがとうございます。彼女と相談でもしてみます」


 中央都市国家。この大陸の中央部分にある国。


 彼女に死に場所を見つけさせないためにもいいかもしれないな。中央都市国家に行くというのは……。


 考えてもいいかもしれない。ありがとう村長さん。


 僕は笑顔で村長が家に戻るまで見送った。


 そして自分も家に帰り、この事を彼女に伝える。


「村を出た後ってどこに行くのですか?」


「いや、決まってないよ……」


 どうやら決まっていないらしい。無計画だそうだ。彼女が心配になってくるが、これはチャンスだ。


「よかったら中央都市国家に行くのはどうでしょうか?この大陸の中央にある国で、メルさんの死に場所を探すにはもってこいだと思うのですが?」


 彼女は首を唸り、僕の提案に従って中央都市国家に行く事になった。予定は二日後である。


 今後の予定が決まったとともに剣術と魔法の訓練で疲れた身体が休息を求めている。僕は深い眠りについた。

 





 朝……か。


 光も風も入らず、音もあんまり聞こえてこないので今は朝ではないのかもしれない。


 深い眠りから目覚めた僕は身体を起こし、周囲を確認する。残念な事に、彼女はいなかった。


 疲れ切った身体は嘘かのように昨日の訓練前まで元通り。ではなく、昨日よりも軽くなっているし、体力にも余裕があるように感じられる。

 

 家を出て村の周りを走り、村に彼女がいるか確認する。


 走った最中で彼女を発見できなかった。彼女はどこに行ったのだろう。


 僕は一度家に戻り、剣を持ち昨日訓練した場所に行く。


 そして森へと僕は歩き出した。


 森の中は昨日と同じで何も変わっていない。


 森の中を歩き、少し時間が経った頃、森の中で狼の群れと遭遇した。


 彼女と同じ銀色ではなく、濁った銀色の毛並みをしている狼だ。


 狼の群れは遭遇した瞬間に吠えながら襲いかかってきた。


 狼一匹一匹の目が血走ってる、ように感じられている。いや違う、ようにじゃなくて血走ってした。


 魔物ってこんなに凶暴なんだ。昔にサミス家の方々と狩りに行った時はそこまで凶暴ってよりは怒っていたってくらいの感覚だったのに……。この森の魔物は違った。


 狼の群れが飛びかかってくる。それに対し僕はタイミングを合わして剣を振るう。


 狼の群れは全部で八匹。まずは一匹の首を跳ねた。続いてもう一匹も倒す。


 森にある木を遮蔽物もとい狼の攻撃を防ぐ盾として使用し一匹、もう一匹と確実に倒していく。そして狼の群れとの戦闘は終わった。


 僕の身体には何一つ傷はなく、戦闘が終了した。


 倒した狼の群れを一箇所に集め、僕はどうにか村に持って帰ろうと考えたが、すぐには思いつかなかったので、持てる分五匹まで持って村へと帰って行った。


 余談であるが、昨日の赤熊(レッド・ベアー)と同じく、村の人達に手伝って貰い解体したのだった。そしてその後に置いて行った残りの三匹も村に持って行った。






 赤熊(レッド・ベアー)を狩った二日後。彼女と中央都市国家に向かう為にこの村を出発する事になった日。


 剣を持ち、この村に来た当時の格好に戻った。


 僕らはこれから彼女の死に場所を探す旅に出る。


 この旅は彼女は死に場所を探す為にある。だが僕は違う。この旅の僕の目的は彼女をいかに死に場所から遠ざけるか。でもそれには問題がある。それは彼女の死に場所が具体的に決まっていない事だ。


 これは難所でもある。だけど僕の目的にとっては容易である。


 なぜなら、死に場所が決まっていない=決める時間、が成り立つ。


 それなら話は簡単だ。決める時間を極限まで増やせばいい。その単純な答えに辿りつくことができる。


 あぁ、簡単だ。簡単で簡単じゃない。それは僕の能力で決まる事だ。彼女の隣に立てる事も、彼女の死に場所を探す時間を増やす事も僕の能力によるものだ。


 彼女は僕を必要としている。彼女が必要としている人は僕みたいな人ではない。僕は彼女を必要としている。僕は彼女に必要とされる人になりたい。


 まだこの関係でいい。違う関係になる時は彼女と僕はお互いを必要としている関係になるといいな。


「──ねぇ、空見てないで早くいくよ」


 棺桶を担ぎながら彼女が振り向き僕に言った。その表情は笑わず、泣く事もなく、いつも見ている無表情。


 銀色の髪が風で散り、より一層美しく感じる。

 

「あぁ、ごめん。では行きましょうか、中央都市国家に」


 僕は笑いながら彼女の隣へと走って行った。




 ある者は始まり。ある者は序章。ある者は一歩。ある者は進歩。


 とある英雄は答えた。ここが第三の始まり、序章だと。


 とある王女は答えた。ここが始まりだったと。


 とある作家は答えた。ここが物語の始まりだったと。


 とある神様は答える。ここが悲劇の旅の始まりだった事を。


 過去を知る者がいても未来を知る事はできない。ただ未来を予測する事はできる。それは獣も人も神も同じであった。






 ♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎


 メル視点


 赤熊(レッド・ベアー)の討伐は彼がする事になった。


 それは彼が名乗り出たから。


 私はすぐに考えて結論を出した。これは彼の実力が確認できると思い彼に頼んだ。


 そして彼が赤熊(レッド・ベアー)を討伐するために森に入った後、私はこっそりと森に入った。


 木を使い姿を現さずに彼を尾行する。


 途中に色々な魔物が襲ってきたが返り討ちにしながら彼を見る。


 そしてだいたい一時間後のこと、彼は赤熊(レッド・ベアー)と遭遇した。


 赤熊(レッド・ベアー)は彼を視認すると襲い掛かってくるが、それを彼は首と胴体を一刀両断。胴体はそのまま倒れ、首は宙を舞い、何かが潰れる音とともに地面に落ちた。 


 彼の実力は私の実力の百分の一程度。つまり私がいずれ戦う相手には歯が立たない。だが、見込みはある。


 今は百分の一だ。時間をかければ私と同等以上になるが、そんなに時間をかけてはいられない。


 だから私がする事は彼に短い時間で効率よく実力を上げてもらう事しかない。


 彼が赤熊(レッド・ベアー)を担いだところで私は一人で村に戻る。

  

 私がこの村に数日間いた、という痕跡を消さなくてはならない。


 村全体に魔法をかける。


 私達が村を出て行った後に私たちに関する記憶が消される、という魔法を村にかけた。そしてその魔法を隠蔽するための魔法もかける。


 残りの魔法は出発時にすればいいので、私は泊まる家に向かって行ったが、途中に彼が素振りしているのが目に入った。


 私は確信した。あの青年は確実に実力をつけていると。


 努力した人は報われる。昔小さい頃に読んだ本に書いてあった言葉。その言葉はきっと彼に似合う言葉だろう。


 私は素振りをしている彼を見て、家に帰った。


 家では彼に棺桶の事を聞かれたり、私の死に場所を探すために中央都市国家に行く事を提案してきた。


 私は彼の提案を受けた。私の死に場所を探す旅をが明後日始まる事になったのだ。


 そして二日後。私達は荷物をまとめ中央都市国家があるとされる北の方角へと歩いていく事になった。


「──ねぇ、空見てないで早くいくよ」


 彼は雲があんまりない空を見上げていた。


「あぁ、ごめん。では行きましょうか、中央都市国家に」


 彼はそう言った後に笑いながら私の隣に並んできた。


 ここからが私と彼の旅の始まりだった。






ここまでお読みいただいて、

「ブックマーク」がまだの方は是非ともログインしてブックマークお願いします!


それとこのページの下の方に行くと「評価」の項目もあります。

評価点数を入れると、小説そのもののポイントに反映されますので、「評価」も是非ともお願いします。

「評価」に関しては率直に入れていただければありがたいです!


作者のモチベーションが上がります!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ