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棺桶を担ぐ少女は死に場所を探している  作者: 久我 一
#第1章
6/13

死に場所を探すために2

 フワフワと浮いている奇妙な球体。


 きっと、その奇妙な球体が彼女みたいな声で話しかけてきたのだろう。脳内に……心に響くように。その方法は分からないが。


 奇妙な球体から敵意などは感じない。安全なのだろう。ちょっとばかり安心する。


 あれから奇妙な球体は何にも喋ってはいない。だから、僕は質問してみることにした。質問すれば返答してくれると信じて。


「君は何なんだ?どうして彼女──メルさんの声で僕に語りかけているんだ?」


「・・・・・・」


 返事はない。この奇妙な球体が喋っていたのではないのか。それとも僕の幻聴か......。いや、さすがにどう考えても幻聴ではないだろう。幻聴だったら、僕はヤバイ人である。


 そしたら、この球体は何だろうか?遇全現れただけでは示しがつかない。


「そろそろ喋ってくれませんか?」


 結論、この球体が喋った。


 どう考えてもそれしかない。状況的に考えてこの球体が喋ったのだろう。そう考えないと僕が納得できない。


 お願いだ。喋ってくれ!喋らなければ、この球体は何なんだ?と言う話になってしまう。


「......分かりました、喋りますよ。私の名は・・・・・・です。早速ですが、貴方の五感の件なのですが、じきに戻りますよ。それと、私は、貴方が考えていることが分かりますし、貴方の脳内に直接話せます」


 五感が戻る!!考えていることが分かる?この球体が話した内容に対しての喜びと驚異で僕の頭の中はいっぱいになっている。


 それにしても考えてることがわかるってことは──


「──喋らなかったのってわざとなんじゃ……」


「正解です。ちょっと......反応が面白かったので」


 ひどいと思うのだけど、ずっと無視するよりは優しいのだろう。


(ひどいのは変わらないけど......)


「心の声聞こえるってさっき言ったばっかりなんだけど.....」


 球体が嘆いている。考えて喋るのだから多目に見てほしい。そしてどう考えても僕は悪くないだろう。悪いのはこの球体だ。人の心の声を聞く方が悪い。


「勝手に私のせいにしないでほしいのだけど......その......ごめんね」


「何かすみません」


 とりあえず謝った。自分に悪気がなかったとしても、自分が気づいていないだけだっていうときもある。だから謝った。僕が悪くなくても。


「別に謝る必要なかったのに」


 謝る必要はなかったか。だが、気まずい感じになってしまったのは謝る。ごめんなさい。


 僕と球体の間に気まずい雰囲気が漂う。沈黙......どちらとも喋らないからそうなる。


 僕はちょっとした勇気を振り絞り声をかける。


「それで、僕はいつになったら、戻るのですか?時期にって言うことはまだまだ時間がかかるって言うことですか?}


 僕は早く五感が戻ってほしい。ものすごく待つのは嫌だ。待っている間に失うことはもう嫌なんだ。


「大丈夫。もう戻るわ」


 そして球体は語りだす。僕の視界が薄れてくなかで。


「貴方には......貴方の中にはあの方の力が......あの方のーー」


 視界が薄れていくなかで同時に意識も薄れていった。






 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 夢を見た。男の人の夢だ。


 その人は鎧を纏い、剣を掲げ、目の前の怪物と戦っている。彼は一人だった。周囲には彼と怪物以外誰も何もいない。周りは草も生えていない広野が広がっている。


 彼は怪物と対峙する。彼は剣を怪物に剣を向けると、剣が輝き出した。まるで御伽話の伝説の聖剣みたいに。


 それからは一方的な戦いだった。


 剣を持った彼が次々と怪物の攻撃をかわしていく。怪物の次の動作などが分かっているように。そして彼の持っている剣が怪物の首を切った。一太刀で頭と胴体を分けたのだ。


 そこで男の夢が終わった。


 あの男は誰だったのか。顔は見れなかった。だが、性別に関しては分かった。何故だろう。僕には分からなかった。


 夢が終わり、僕の視界は現実に戻された。視界は洞窟の天井。僕が意識を失うまでいた洞窟だった。


 体を動かして辺りをうかがう。意識を失うまでいた彼女がいなくなっていた。


 彼女はどこだ?どこにいる?周りを確認するが彼女はいない。


 僕は洞窟を出て辺りを探すが、視認できてはいない。


「メルさん!どこにいますか!!メルさーん!」


 思わず声が出てしまった。彼女を……大切な人を失う事が怖いんだ。


 汗が出てるのがわかる。呼吸も過呼吸になってきてる。僕は凄く焦っているのがわかってきた。


 もう一度、彼女の名前を叫ぼうとした時、横の木の裏から彼女が現れた。神出鬼没。その言葉がお似合いだった。


 彼女は僕に会うとともに一言……。


「うるさい……静かにして」


 怒られた。次から……いや、今から静かに行動することを心がけようと思う。いや、喋らないと言ったほうが正しいのか?それとも声量の問題か?必要最低限しか喋ればいいのだろう。


「……分かりました」


 僕と彼女はさっきまでいた洞窟へと向かっていく。


 焚き火は僕が意識を失っていた時に消えていたらしく、もう一回つけることになった。


 多分だが、彼女は隠している。本当は僕が意識を失っている時に危ないから消してくれたのだろう。優しい。


 焚き火をつけた僕はちょっとだけ疑問に思った。


 感覚が鋭くなっている気がしたのだ。


 まずは視覚。目が良くなっている。遠くのものまではっきりと見えるようになっている。そして視界も広くなっている。


 次に聴覚と臭覚。周りの音が細かく聴こえてくる。臭覚もそうだ。木が燃える臭いも嗅げるくらいになっている。


 触覚もそうだ。感覚が研ぎ澄まされているのが分かる。


 味覚はどうだろうか?まだ分からないが前とは変わっているのだろう。


 結果、五感がものすごく発達……いや、進化している。明らかに前より良くなっている。


 試しに僕は剣を振ってみる。もちろん洞窟の外で。


「凄い……」


 前より剣が軽くなっている。まさか力まで強くなっているのか?


 いつもの素振りをしてみる。一振り、一振りと集中して素振りをする。集中力も半端ないくらいに凄くなっていない。いつもより集中できているのが分かる。


 集中して一振り、それを百回繰り返す。


 昨日までの素振りの時とは感覚が違った。昨日までの素振りが一とするなら今の素振りは十以上の成果が絶対にあると思う。


 素振りが終わった僕は洞窟へと戻った。そこで僕は驚愕した。


 洞窟の中にはさっきまでなかった赤い熊の死体が薪の横に置いてあった。十中八九、彼女が狩ってきた魔物だろう。だが、僕が彼女に会った時から洞窟に行くまで赤い熊なんて近くにはなかった。素振りをしている時だった洞窟の前にいた……もしかしてただ単純に僕が集中しすぎていたのかもしれない。そうだ、それしかない。


 僕は焚き火から離れた位置にある壁に剣を立て、腰を下ろす。


 特にすることもないので彼女を見つめる。時々、彼女にバレないように焚き火も見たりする。そこで僕は異変に気づいた。


 焚き火の周りに赤い何かが浮いていることに気づいたのだ。見間違いだと思い、目を擦る。だが、赤い何かは浮いている。


 よくここまで気づかなかったものだ。いつもの僕だったら、もっと早く気づいただろう。それも焚き火をつけた時に。


 理由は明確。身体能力がより良くなっていることへの驚きで周りが見れていなかったのだろう。現状それしかない。


 だが、不思議だ。この赤い何かと五感……身体能力が高くなっていること。これは彼女に聞く必要がありそうだ。


 僕は彼女のもとまで移動し、問いかける。


「僕が意識を失っている時に何があったのですか?」

 

 意識を失ったのも彼女がいた時。意識が失っていた時に会話した球体の声も彼女の声。何かしら彼女が関わっているのは確定事項だ。


 彼女は答える。魔力を扱えるようにした、と。


 魔力……第六感。それを扱えるようにしたらしい。


「手、貸して」


 彼女は自分の手を前に出し、僕の手を触り、前へ出した。


 彼女と僕は今、繋がっている。それと胸が痛い。だがそれだけではなかった。

  

 一瞬、何かが頭の中に通ったような気がした。違う、気がしたではない。何かが通ったんだ。


 すると僕の手に青白い何かが流れているのが視認できた。水みたいに流れてる。


 手の指の先から足の指先まで流れている。


 これが魔力.....。これが力......。体が凄く熱くなっている。力が、魔力がみなぎっている。


 この力があれば、彼女を永遠に守れる。


 希望が沸いてくる。守れるという希望が。


「ありがとう。君のおかげで僕は守りたいものを守れるようになったよ」


 彼女は一度首をかしげ、納得したのか笑顔になった。僕の気持ちが伝わった。これは......絶対伝わっている。なんかちょっと恥ずかしくなってきた。


「そうなのね。なら力を渡した代わりに私と契約して」


「え、いいですよ」


 僕は即答した。契約ということは、彼女と一緒にいられる機会が増える。彼女と話せることが増える。そういうことなんだろう。はっきり言って嬉しい。だが、彼女は困ったような顔をしている。 


 まさか──了承しちゃ駄目だったのか......。不安になってしまう。


 汗が顔をつたって地面に落ちる。物凄く不安だ。


 彼女は僕と一緒にいるのが嫌なのだろうか?嫌じゃない。嫌と言われたくない。彼女だって僕が嫌いではないはずだ。むしろその逆だろう。嫌いなら彼女は僕を助けない。違う、嫌いでも助けるだろう。


 ふと、目から出た何かが頬をつたって洞窟に落ちた。


 ポタポタと家の屋根から水滴が落ちるように僕の頬をつたって落ちている。それは涙である。涙がでているという事は、嬉しいから泣いている──のではない。悲しいから泣いているのだ。


 僕は、彼女に嫌われる事が悲しい。だって彼女は僕の生きる希望。守りたい人なのだから。


 彼女は僕の顔を見た後、自身の手の指に傷をつけた。血が流れている。


「ちょっと何しているんですか!?」


 彼女のもとにより僕は服の端っこを破り、彼女の指に巻こうとしたが拒否された。


 早く応急処置をしなくては彼女は怪我をしたままだ。未だに彼女の綺麗な指先が傷ついてしまっている。


 困った表情を浮かべながら彼女は「大丈夫──」と笑って言って。


「──だってもう傷は治っているもの」


 嘘でしょ……。それならそれで越した事ではないが。どうやって治ったんだ?まさか魔法。魔法なのか?でも魔法ならありあるし、納得がいく。


「魔法ですか……」


「うーん、ちょっと違うけど、まぁそうよ」


 ちょっと困った顔をしながら彼女は答えてくれた。


 傷が治って良かった。僕は何もしていないけど。分かったことは魔法って便利だなぁ。


 破った服の端を折りたたみ、彼女と向かい側の壁へと行こうとした時、後ろから彼女に声をかけられた。それは契約のことだった。


「ほら、貴方も血を出してくれないと契約ができないじゃない」


 契約。確かに彼女はそう言った。


 僕は彼女と約束している。いつも一緒にいれる。それの契約。


 僕は迷わず手の指を切った。切ったといっても彼女みたいに傷をつけただけ。彼女といっしょの行動。でも僕は魔法が使えないから切った指は治らない。


 血がでている指を彼女に差し出す。

 

 ドクドクと血が流れ、指が刺激される。


 彼女は僕の手を取りゆっくりと顔を近づけて──





 ──指の血を舐めた。


 ──────────!?


 何も考えられなかった。数秒ほど僕の心臓が止まったのだけはわかっている。胸の鼓動が高鳴り、呼吸が少し荒くなっている。これが契約なのか……。


 だが、彼女は僕の指を舐めた後、さらに僕の指を口に含んだ。


 チュゥゥゥゥッと血を吸っているのだろう。そして今の僕の胸の高鳴りは僕の人生の中で感じた事もないくらいだ。呼吸も少しどころか急激に荒くなっている。体も熱くなっている。


 血を吸った彼女はそっと口から指を取り出す。


 彼女の口から僕の指に白い糸が繋がっている。白い糸は自然と地面落ちていった。


「ありがとう。これで血の契約は終わりよ」


 彼女は微笑みながらお礼を述べた。


 契約は終わった。終わったのに、未だに僕の胸の高鳴りが治らないし、体も熱いまま。呼吸も荒いままだ。


 状況を整理しよう。


 僕は彼女に指を舐められ、口の中に入れられ、彼女との契約が成立した。


 でも口の中に僕の指を入れる事はない。舐める事もない。絶対にだ。彼女は僕以外の人にもそうするのだろうか。いや、断じて違う。彼女はそんな人ではない。断じて……断じて違う!


 そうだ。これは契約だ。彼女との契約だ。僕以外に彼女と契約させるわけにはいかない。僕と彼女だけの契約なのだから。


 僕と彼女の契約だから──






 ──彼女の隣は僕だけだ。





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