エピローグ 皇国の皇女殿下
「リリィさん、その...」
ルーファスはベッドに横たわり、モゾモゾと身をよじらせる。
「こら! ルーファス動くでない、ちゃんと入らぬではないか!」
顔を赤らめたルーファスは、恥ずかしさから両手で顔を塞ぐ。
指の隙間からチラチラと此方を伺う視線が、なんともいじらしい奴よ。
「あっ...」
ルーファスは気持ちの良さに抗えず、思わず吐息を漏らした。
どうだ、私のテクは中々のものだろう!
「えぇい! これしきの事で恥ずかしがるでない!」
私はルーファスの耳元に顔を近づけ、息を吹きかける。
思わず撫でくり回したくなるルーファスのふわふわな金髪が、私の吐息に揺れ此方を誘う。
大海に反射する太陽の煌めきのごとく美しいブルーの瞳を潤ませるルーファスは、何とも嗜虐心を唆った。
「うっ...!」
手応えを感じた私は、思わず舌なめずりをし恍惚な表情を浮かべる。
アルフレッドでも試したが、やっぱりこの瞬間が1番気持ちよい。
「ふふん、ちゃんと出たではないか!」
先端についた汚れを、私はちり紙で丁寧に拭き取る。
「ほれ、ままだ終わらぬぞ! こっちに顔を向けよ」
私はルーファスの頬にそっと触れる。
「え、あ、その、それはちょっと...」
さっきからモジモジ、モジモジと、この前の大胆さはどこに行った!
「ルーファス! 男なら覚悟を決めよ」
ここまできて躊躇するルーファスに私は喝を入れる。
恥ずかしいのは、お前だけじゃないんだぞ!!
してやってる私の身にもなってみよ!
「あ、あと、その...言いづらいんですけど...」
ルーファスはチラチラと此方を見る。
「ん、私は下手くそだったか?」
むぅ、棒の当たりどころが悪くて痛かったか?
嫌よ嫌よも好きのうち、あの表情を見る限りは気持ち良かったように見えたのだがな。
「その...さっきから、当たってますから!」
あぁ、そういうえばこやつ先程から胸を何度もチラ見しておったな。
初めて会った時から、ずっとチラ見しておったから気にもしていなかったぞ。
「なんだ、ルーファスは耳かきより此方の方が良かったのか?」
私は豊満な胸を両手で抱えて強調する。
こんな贅肉のどこが良いのか、男は理解不能だ。
「ばっ、馬鹿な事言わないでください! もう、これ以上はダメです!!」
ルーファスは立ち上がり、前屈みでそそくさと部屋から出て行った。
ほれみてみろ、私の耳かきが気持ちよかったから、腰砕けになっておるではないか!
“コンコン”
開きっぱなしの扉を叩いたウォルターが、ヘイスと共に入れ替わりで部屋に入ってくる。
「殿下、健全な若者をたぶらかしすぎてはダメですよ」
失礼な! 私はただ単にこの前のお礼をしただけである。
邪な気持ちを抱くルーファスが悪いのだ!
「ふむ、なんならお主らもしてやろうか?」
くくっ、ヘイスめ、動揺しておるな。
こやつ目つきが悪い割に、ぼっちのせいか中身はウブな子供だ。
「ご冗談を」
ウォルターが鼻で笑う。
こやつは逆に結婚していたからか、こういった類では揶揄い甲斐がないな。
「それはそうとお前たち、私に何か用があるのではないか?」
耳かきをくるりと回し2人を指す。
「今回、反乱を起こした貴族たちはやはり他国と繋がっていました」
事の顛末をまとめるとこうだ。
実力ではなく家柄だけでのし上がったために、重要ではないポストをたらい回しにされたダミアン。
実力はあったがその性格に問題があると判断され、神器を授与されなかったアーロン。
不満を溜めていた2人は、幼いアルフレッドであればどうにかなると他国に唆された。
アーロンは神器を手に入れ、ダミアンは大臣のポストを利用し反抗する貴族をまとめ上げ、事前に死期のわかっていた父上の葬儀に合わせて他国の貴族を招き入れる。
しかし、呪いが解けたイレギュラーの私が加わった事で、あ奴らの計画は簡単に破綻した。
「アーロンの持っていたベーゼントエーデルシュタインが、殿下に乗り移ったのは向こうも予想外だったそうです」
ちなみに、ベーゼントエーデルシュタインは今も私が持っている。
神器にはそれぞれ人格があるようだが、その名称から私は彼らの由来を悟った。
目の覚めた神官長に詰め寄り確認したが、やはり神器は元々は人であった者達である。
例えばアルの持っているタイラントであれば、この国の初代皇帝と名前が一致しているように、ベーゼント、スペンサー、ジェラルド、アナベル、ヴァイオレット、レナード、サーマン、他の神器も書物を紐解くことで彼らのルーツを明らかにした。
「それと来賓の1人が殿下との対話を望んでおります」
ふむ、これは何かありそうだな。
「いいだろう」
私はベッドから立ち上がり、外に居たルディとノエルを連れて来賓の滞在している客室へと向かう。
「こちらです」
扉を開けると、椅子に座った上質なベージュのロングヘアーの男と目が合う。
男は椅子から立ち上がると、私の目の前で跪く。
「お初にお目にかかります、リリィヴァイス皇女殿下、私の名前はオーラン・ストレルカ=スターリー・ギベーリスラーヴァと申します」
美しい造形の顔立ちだ、年の頃は20代前半か。
ストレルカ王国、スターリー家のオーラン、確か第4か第5王子だったな。
「ふむ、私に話があるそうだが?」
「はい、ですが...」
オーランは私の従者達に視線を向ける。
ああ、そういう事か。
2人きりになる事をヘイスは渋ったが、私は従者を下がらせる。
部屋の中は、一足先に従者を下がらせたオーランと私だけの2人のみとなった。
「さて、それで?」
流石につまらぬ用ではないだろうが、くだらぬ事であればどうしてくれようか?
「殿下に私のクーデターに付き合っていただきたいのです」
ほう? こやつ、デートに誘うように軽やかに面白いことをいうではないか。
私はオーランに皇国が手を貸すメリットを問う。
「ストレルカ王国をリバティー皇国の傘下に治め、地下や山々に眠る多くの資源を手に入れる事ができます」
「いいだろう、乗った」
私の回答にオーランは驚く。
「どうした?」
「まさか、即決なされるとは...失礼、少し驚きました」
ストレルカ王国は北方の寒い国である。
そのため流通面がまず悪く、食糧や医療面で常に不足している事、貧富の差による人材流出等の問題などを常に抱えている事だろう。
大方、クーデターの原因もそこに起因していると思われる。
その点に関しては解決策があるので問題ない。
それよりも、ストレルカの資源が手に入る事の方が重要だ。
「クーデター成功の際にはオーラン王子がトップに立つという事でよろしいのか?」
「いいえ、トップには妹を据えます、彼女の言葉の方が市民に響くでしょう」
その上で執政はオーランが執り行うと言う事で決まっているそうだ。
「では、私の方から皇帝陛下に話を通しておこう」
頭を下げるオーランを横目に私は部屋を出る。
ストレルカ王国の北星騎士団はかなり強靭だと噂に聞く。
大方、私の力を目の当たりにして協力を乞うてきたのであろう。
「機嫌が良さそうだな、デッドエンドディーヴァ」
当然だ、私の目的は別にある。
ベーゼント曰く、私に呪いをかけたのはストラルカ王国の者の可能性が高い。
魔王研究だったか、あの魔法使いは、なぜ私にターゲットを絞って呪いをかけたのか。
その目的の一端を知る事ができるのであれば、これほど手取り早い物はないだろう。
オーラン王子には感謝せねばな、魔法使いが死んだせいでこの呪いのお礼をする相手もいなかったのだ。
さぁ、私の復讐を始めようか。
ブクマ、評価、ありがとうございました!
ここまで連日更新しましたが、2章スタートまでここで一旦区切ります。
チートの文面を意識しすぎて、思ったよりファンタジーの方に寄りすぎました。
一応の前置きは終わったので、恋愛方面に戻しにいくのか、このままファンタジー強めでいくのか少し考えます。




