↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Counter!!  作者: 大和尚
46/63

2-32

2-32




「し、信兄、通路の先にいるあの人を知ってる?」


「カズ?……どっちだ?」


「あぁ、えっと左側の男の人」



 俺は未だ収まらない動揺の中で信兄に聞いた。

ここは国会議事堂内部であり、殺人現場だ。

今は警察関係者が多くいる。

それ以外だと政治家関係者だろう。

俺は知らない男の人だが、信兄なら知っているかもと思ったのだ。


 ゆっくりこちらに歩いてくる二人組の一人である男性を信兄に伝えた。

もう一人はスーツの女性。

何となく浅井さんに似ている気がする。

その女性の背の高さは判らないが、男性はその女性より頭一つ分以上大きい。

かなり大きいのではないだろうか。

少なくとも俺よりは大きいと思われる。

短めの髪、シュッと引き締まった顔、全体的に男臭く凛々しい感じだ。

灰色のスーツも似合っている。

社会人として慣れていそうな感じからして、それなりの歳ではないだろうか。




「んー、ああ」

「知っている人!?」


「知っているぞ。今回活躍した……松永さんだな」

「間違いありません」

「ええ。カズ君、松永さんがどうかしたの?さっきの呟きは?」



 俺の問いに答えてくれたのは信兄だけではなかった。

佐久間さんも信兄に同意している。

浅井さんもだ。

そして浅井さんは俺に質問の先を促してくる。

俺の後ろで制服の裾を掴んでいる詩織も聞いているだろう。




「活躍って……」

「総理大臣の護衛、SPの松永さんだ」


「SP!?」



 あ、やばい、ちょっと声が大きかったかも!?

松永さんとやらは特に変わらずにゆっくりと歩いている。

俺の周囲にいる鑑識の人や刑事さん達も俺に注目したりしていなかった。

ふぅ、危ない。




「どうした?」


「ここを離れよう」



 信兄が俺の様子を見て心配そうな顔で聞いてくる。

俺は信兄に少し小さい声で、ここを離れようと告げる。

心を落ち着かせ、頭を働かせたい。

そのためには時間が欲しい。


 頭に?マークを浮かべてそうな信兄の腕を引っ張って通路の端に寄った。

直ぐに離れたかったが、来た道から松永さんって人が来ているのだ。

建物内部に詳しくない俺は他の通路を選べない。

せめて端っこにという訳だ。

俺、詩織、信兄が動いたので浅井さんと佐久間さんも壁際に寄って来た。

浅井さんは話の続きが気になるのか、俺を凝視したままだ。

照れるけど、そんな場合ではない。

気配を消したい。

浅井さんからではなく松永さんって人から身を隠したい。

あああ、俺と詩織は制服のブレザーだ!

今、ここにいるのがおかしい人物筆頭だ!

浮いている自覚はある。


 信兄を盾にしてなるべく姿を晒さないようにしよう……松永さんって人に注目されませんように……

俺は信兄の陰に隠れるように身を縮めた。

詩織は俺の後ろだ。

大丈夫だろう。

早く、すれ違ってしまいたい。


 時間が長く感じる……。



 信兄を盾にしても天に伸びる黒い数字の一部は見える。

近づいている。

もうすぐだ。

それに合わせてここを去りたい。

相手の足取りが遅いので焦れる。


 本当にいつもと同じ時間の流れなのか疑わしい。



 今だ!!




(信兄、松永さんって人に注目されたくない。こっそり俺達を隠してくれ)


(お、おう)



 俺は小声で信兄に頼んだ。

何が何やら判らんが了解。信兄はそんな感じであった。


 間に信兄を置いて相手に合わせて歩き出す。

詩織も付いてきている。

信兄から浅井さん、佐久間さんにも俺の依頼が伝わったようだ。

そんな二人は相手に視線も向けない。

自然体のままだ。

さすがといえよう。



 俺達はゆっくりとその場を立ち去るのであった。

そして相手の足は止まっていた。

どうやら現場を見に来たらしい。

たぶん俺の事は見つかっていない。

気にした様子もなかった。

やばかった。


 足が進むにつれ、気持ちに余裕が出てくる。

俺はホゥと息を吐いた。


 通路の角を曲がり距離をとった。

ここら辺ならいいかな?

その後の展開も考えると離れすぎも困る。




「あの人、SPの松永さんって人の頭上に異常な殺人数が出た。一万越え、たぶん《降臨の家》本拠地で見た人だと思う」



 俺は息を整えてから一気に話した。

これが今わかっている事の全てだ。

なぜ?

どうして?

未だに疑問が渦巻いているが事実だけを述べた。

見た数字だけは衝撃で吹っ飛んでしまったのは申し訳ない。

一万以上の数だったのは間違いない。

また見れば判る事だし、そこはどうでもいいだろう。

あんな数字の持ち主がゴロゴロいるとは思えないからな。


 俺の言葉を聞いた面々が驚いた顔になった。

解る。

すごく解る。

俺も通った道だ。

声も出ないほど驚いている。

いや、既に先を考えているのかも知れない。




「カズちゃんはこんな時に嘘なんてつかないよ!」



 静かになった空間を破ったのは詩織。

詩織は俺の言う事を信じてくれている。

あー、嬉しいもんだな。

しみじみそう思う。

今度、ケーキを奢ってやろう。

二つまでなら奢るぞ。

そんな事を思っていると信兄達もしゃべりだした。




「そう……みたいだな」

「どうなっているの……」

「お、おい、総理大臣のSPだぞ!?」



 信兄が俺の顔を真面目な顔で見ている。

嘘ではないと信じてくれたようだ。

詩織の言葉が大きかったのかも知れない。

そこまでしないと信じられないほどの衝撃だったのだろう。

超危険人物が警察官で総理大臣の護衛だったのだから無理もない。

浅井さんは口元に手を当てて床に視線を向けている。

考え込む時の体勢なのだろうか?

佐久間さんは今にも俺に掴みかかってきそうな剣幕。

いつもとは違う乱暴な口調。

そこから衝撃の度合いがわかろうというものだ。




「《降臨の家》本拠地で出た殺人数は黒い色で固定したんだ。あの人の頭上の数字は黒く固定されているよ」


「……間違いなさそうだな。だが、問題は警察官だという事だ!」

「ええ」

「警察官が一万以上の殺人を?まさか!?」

「あり得ない話だ。彼は三十半ばくらいだろう、どれだけの頻度で人を殺したらその数字に届くというんだ」

「そうですとも!」

「ないわね……となると……除霊師?アゲハの言っていた方かしら?」



 俺は数字について判っている事を話した。

《降臨の家》本拠地で調べた人を殺した回数については黒い色を固定し天に伸ばしてある。

あの人の頭上の数字はそれだった。

信兄は納得してくれたようだが、信兄達と同じ警察官だという問題にもぶつかっていた。

俺と詩織以外の前ではあまり感情を表に出さない信兄が憤っている。

俺の言った事を信じてくれているからこその憤り。

浅井さんは既にいつもの様子に戻っている。

感情のリセットが早い?

見習いたいものだ。

浅井さんと対照的なのが佐久間さんだ。

動揺から立ち直っていないどころか、更に感情を乱している。

だが責める事は出来まい。

これが普通だと思う。

どちらかと言えば俺も佐久間さんよりだろう。

未だ、細かい部分を考えられる余裕がない。

佐久間さんは俺の言葉を信じれ切れなくなっていそう。

否定気味だ。

それも仕方ないと思う。

信兄は松永さん?について言及してきた。

歳は三十半ばらしい。

確かにそんな感じに見えた。

そして数字の異常さを納得できる理由を探し出した。

浅井さんもそれに続く。

警察官の人殺しより除霊師の方が現実的らしい。

いやそう思いたいという気持ちもありそうだ、やはり同じ警察官ともなると複雑な気分に違いない。

俺?俺もそっち寄りだけどバイトなもんで。




「そう、そうですな!戦争に参加できるような立場ではない。それしか考えられませんぞ!」

「佐久間さん、相手が同じ警察官だからというのはわかるが落ち着こう」

「は、はい」


「あの時に《降臨の家》いたというのかしら?休みだったの?うーん……」

「調べるしかないな。だが気を付けなければいけないぞ、こっそり調べないとな」

「ええ」



 浅井さんの意見を聞いて激しく頷くのは佐久間さん。

何というか迷路で出口が見つかったというか救いの手が差し伸べられたので縋ったというか、そんな感じがする。

自分の中で折り合いが付けられる結論が呪術師だったと思われる。

そんな佐久間さんを信兄が淡々とした口調で諭す。

佐久間さんの動揺っぷりが信兄を落ち着かせたのかも知れない。

人の振り見て我が振り直せかな。

そんな二人の話を他所に、考え込んでいるのが浅井さん。

動揺してはいたが、それ以上に気になる事がありそう。

それも俺の言葉を信じているから出てくる言葉だ。

《降臨の家》本拠地にいた異常数字の持ち主がここへ現れたのは疑っておらずどうやったらあの時あそこへいたのかを考えてくれている。

嬉しい。

すごく嬉しい。

カッコイイスレンダー美人さんは内面も素晴らしい。

サイン貰おうかな……。


 調べるのに気を付けなくてはいけない?こっそり?

あぁ、異常数字の持ち主が松永さんなら警察内部の人だものな。

調べるのは難しくないだろう……こちらにしてもあちらにしてもだ。

だからこちらが調べているというのを知られないように調べようという事か……それなら解る。




「信兄、俺、《降臨の家》本拠地にいた異常数字の持ち主にあったら調べたい情報がいっぱい思いついたんだ」


「俺もだ。これはチャンスかも知れんな。あっちから出て来てくれるとは……」

「前向きね。良い事だわ」

「自分は同じ警察官という事で動揺してますよ……」

「それも解るわ。信じたくない気持ちはあるもの」

「そうでしょう!」

「確かにそれはあるね」

「はい」


「っと、カズ、今のお前は目立つ。詩織もな。調べられる場を探すか設けよう」

「それ、それお願い出来る!?」

「ああ、任せろ。最悪でも遠目で見れる位置は探しておくさ」

「頼んます!」

「さすがお兄ちゃん!」

「お!そうか?そうだろう!!」

「うん!」


「やるぞー!!」

「おう!」

「おーう!」



 俺は信兄に頼んだ。

《降臨の家》本拠地ではあの人の個人情報取得に走ってしまった。

もっと知っておくべき情報があったのにだ。

あの時は一気に解決しようとし過ぎた。

でも……名前を調べるのに含まれそうな漢字は色々試したんだよなぁ……名前に松が入っている回数とかも調べなかったかなぁ……。

名前に漢字が入っていないのかと疑ってた。

外国人なのでは?そう思ってすらいた。

松永さん……うーん。


 信兄は俺の願いを聞いてくれるようだ。

遠目でも構わない。

視認出来る位置でジッとしてくれれば問題ない。

謎だらけだが、解決への道は見えて来た。

シスコン兄貴は違う意味でやる気を出したが、俺もやる気満々だ。


 あの人の謎が《降臨の家》攻略において重要な気がする。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。