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信兄に連れて行かれた先は以前のマジックミラーがある部屋だった。
マジックミラーの先では事情聴取が行われている。
亡くなった政治家の第一秘書であった。
他の部屋では第二秘書、家族の方々も呼ばれているとの事。
忙しくなりそうだ……。
「既に解っている情報として、第三秘書は一週間ほど前に入った新人だという事だ。亡くなった政治家本人が連れて来て一度だけ挨拶をしたと彼は言っているので確認してくれ」
「えっ?入ったばっかりであんな事件を起こしたの!?」
「ああ。犯行のためだけに入ったとしか思えない。だが連れて来た本人以外自身が亡くなっているのがなぁ……」
「口封じとか?」
「そうなんだろうが……」
「とりあえず調べるね」
「あぁ、頼む」
信兄が何を調べるのか指定してくれる。
こういうのは楽でいい。
俺は信兄の指定してくる条件で力を使っていくのであった。
第一秘書の調査を終え第二秘書、休憩を挟んで亡くなった政治家の家族と調査を進めた。
結果、第一秘書、第二秘書ともに第三秘書には一度しか会っていなかった。
政治家の家族にいたっては一度も会っていない。
本当に犯行のためだけに来ただけらしいと解った。
ついでに調べた結果では二人の秘書は真っ黒であった。
犯罪のデパートと言われた政治家の秘書ならば、当然なのか?各種犯罪に直接関わっていた。
《降臨の家》とはずぶずぶでした。
幹部の知り合いは多いし、依頼も受けていた。
救いがあるとすれば、殺人や暴行といったものがなかった事であろう。
その代り賄賂の件数がとても多かった。
貰うのも渡すのもだ。
なんだか虚しいものがある。
この国、大丈夫なのか?
全てがそうではないのだろうが、そう思ってしまう。
「犯人から辿るしかないか……」
信兄はため息を吐いた。
犯人に直接繋がる手がかりがないと解ったからだろう。
地道な作業になるはず。
だからこその溜息。
先は長そうだ。
こうなると俺の力で出来る事は少ない。
せっかく役に立てると思ったのに……悔しさがこみあげてくる。
「ですな」
「犯人が亡くなったのは痛いわね」
「ああ」
「斉藤君がいますからね」
「ええ。本当に残念」
佐久間さんが信兄の呟きに答えた。
信兄と違って落胆の表情ではない。
佐久間さんは現場で足を使う人だという。
地道な作業を苦にしないのだろう。
今の状況も当然と受け止めていそう。
そういう意味では信兄よりタフだ。
浅井さんは護衛の人に拳銃で撃たれた犯人が亡くなったのを悔しがっている。
信兄と佐久間さんもそれには同意見らしく頷いている。
確かに俺であれば意識があろうがなかろうが、情報を引き出せる。
最短距離を突っ走れないのは残念という気持ちは解る。
大人達からの期待。
そして信頼。
それを感じられて少しだけ落ち込んだ気分が良くなった。
あ、そうだ!
「信兄、ここの仕事が終わったんなら行きたい所があるんだけど」
「ん?ここはもう大丈夫だ。行きたい所ってのはどこだ?送るぞ」
「犯行現場。もしかしたら犯人の霊がいるかもでしょ?」
俺は思い付いた話をした。
犯人の霊がいる可能性についてだ。
人が亡くなって霊になる条件は解らない。
アゲハとタイヘーは強い執着や霊力の強さが関係しているんじゃないかって言ってた。
でも可能性はあるよね?
また最短距離を走れるかも知れない。
「おぉ!そうだな!いるかも知れないな!行こう!!」
「なるほど」
「その手もあるわね」
「でも国会議事堂に入れてもらえるかな?」
「今なら大丈夫だろう」
「そうね」
俺の提案に信兄達も乗り気になってくれた。
地道な作業を思えば、ちょっとした移動など問題ではないのだろう。
表情も明るくなったように思う。
提案して良かった。
結果が出れば最高だな。
問題は俺や詩織を同伴で事件現場である国会議事堂に入れるかだ。
さすがにダメかも知れないと俺は思った。
だが信兄と浅井さんは大丈夫だと言ってくれた。
静かにしていた詩織も含めて移動するのであった。
不謹慎だが、貴重な体験が出来るとあってテンションあげあげ。
落ち込んだ気持ちが急上昇。
俺の気持ちが伝わったのか詩織も似たような感じになった。
俺の足取りは軽い。
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「見た事ある建物だよ!カズちゃん!」
「おう!何か緊張するな!」
「ね!」
国会議事堂を目の当たりにして興奮してしまう、俺と詩織。
信兄達は平然としたものだった。
既に来ていたらしいからさもありなん。
《降臨の家》関係の政治家だったかららしい。
俺と詩織は緊張しながら信兄達の後ろを着いて行くのであった。
警備員、それから警察官、刑事さんらしき人、多くの人とすれ違った。
その度に何だこの子達は……といった視線を向けられた。
私服よりマシだが制服でも、ここでは浮いている。
奇異の目で見られるのも無理はない。
建物の中は割と綺麗で新しかった。
もっと古くて重厚感があると思っていた。
そういう部分もあったけどさ。
食堂は一般人でも入れるらしいから、そのうち行ってみたい。
美味しいのかな?
何となくご馳走を想像してしまった。
「あそこだ」
「トイレ前?」
「ああ」
「犯行現場で間違いないわ」
信兄に連れられて来た場所はトイレの前であった。
ここが犯行現場らしい。
俺はキョロキョロと辺りを見回してしまう。
未だ何かの作業をしているのは鑑識の人っぽい。
あ……血痕?壁に黒い染みがあった。
綺麗な壁に目立つ黒っぽい色。
生々しい。
その時の状況が目に浮かぶ。
(詩織、壁に血痕らしきものがあるから見ない方がいいぞ)
(うん……見ないようにするよぅ。ありがとねカズちゃん)
(おう)
俺は作業の邪魔にならない程度の小声で詩織に忠告した。
詩織は幽霊だのお化けだのは苦手だが、特に血を忌避してはいない。
だけど見ていて気持ちの良いものではないので言っておいた。
詩織は小声で礼を言ってくれた。
でも詩織も仕事があるんだよね……俺より霊が見えるからさ。
「うーん、どうだ?」
信兄が聞いて来た。
どうだ?というのは犯人の霊がいるかどうかだろう。
信兄も霊力が強いらしいので俺と同じ程度には霊の存在を感じ取れるのだ。
俺達が警察病院の霊安室でぼんやりとした霊を見てから信兄も意識して見たら見れたそうだ。
だが詩織ほどハッキリは見えないらしい。
文武両道な信兄、それに近い詩織。
霊力に関しては詩織が信兄を上回っていると判った。
その信兄が聞いて来たのだ、おそらく信兄には見えないのだろう。
俺は首を左右に振る。
俺にも見えないし感じられない。
念のために詩織を見た。
詩織も首を振っている。
ダメか……。
犯人の霊はいなかった。
亡くなった政治家の霊もだ。
霊になる条件を知りたい。
「ごめんね。無駄足だった」
「いいさ」
「そうよ。可能性はあったんだしね」
「ですな」
俺は信兄達に謝った。
時間の無駄。
忙しいのに申し訳ない。
信兄、浅井さん、佐久間さんの言葉、様子から本当に怒っていないのが伝わってくる。
見えないけどいるかも?
念には念を入れてみよう。
やれることはやっておきたい。
俺は力を使う。
『カウンター』
『人を殺した回数』
意味はないけど数字を出す定番になっている条件だ。
危ないヤツの判別にも使える。
トイレ前、人の頭上以外に数字は出なかった。
ダメだ、霊はいない。
本当に無駄足だったか。
俺は申し訳ない気持ちを抱えたまま、一度は伏せた顔をあげた。
帰りますかね……。
「えっ!?」
俺は通路の先を見て声をあげてしまった。
「カズちゃん?」
詩織が俺の制服の袖を引っ張って名前を呼んだ。
俺の驚いた声が聞こえたのだろう。
だが俺に答える余裕はなかった。
黒い数字。
俺が固定した数字。
なんでここに?
どうして?
同じ疑問だけが頭を巡る。
「一万……越え?」
やっとの事で絞り出せた言葉。
信兄達の視線が集まるのを感じた……。




