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Counter!!  作者: 大和尚
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「えっ!?」



 俺は驚いた。

目をしばしばさせる。

うーん。

目を閉じる。

うーん……変わらない。

何が?

数字がだ。



 佐久間さんの運転するワンボックスカーで目的地前まで来ていた。

《降臨の家》本拠地は長い壁に覆われていた。

門構えも立派で、いざという時のためかとても重厚で頑丈そうであった。

だが信者のためか門は開け放たれていた。

門番はいるものの物々しい警備といった感じではない。

そして門から街道へ伸びる道沿いには土産物屋や食事処が所狭しと並んでいる。

ちょっとした観光地である。


 広い駐車場もあり、車はそこへ止めた。

人の様子を見るという名目で土産物屋や露天を見て回った。

恐らく《降臨の家》の信者が営んでいるであろう店の数々。

そこにいる人達は特におかしい所はなかった。

一般市民、そんな言葉が似合う人達であった。

一通り様子を伺った後でワンボックスカーに戻った。

そして信兄の依頼で調査開始となった。


 まずは定番という事で『カウンター』『人を殺した回数』で調べました。

ええ、そして驚いたのですよ……。


 俺はあり得そうにない数字を見てしまったのだ。

駐車場のワンボックスカーの中から双眼鏡で見えた遠くの建物の中にいるであろう人が出した数字をだ。




「一万三千……七百十一……」


「は?」

「えっ?」



 俺は茫然としながらも数字を口にした。

それに反応したのは信兄と佐久間さん。

浅井さんは、ちょっと怖い目で俺を見ている。

他のメンバーは静かな物だ。

理解が追いついていないのかも知れない。

俺でもそうなりそうな話だ。


 俺は動揺しつつも異常な数値を天に伸ばし赤く固定化。

一万三千七百十一、人を殺した回数。

異常だ。

異常過ぎる……。

戦時下じゃないんだぞ?

一応平和な国だぞ?

どうなってんだ!?

俺の力がイカレタのか!?

慌てて回りを見る。

駐車場にいる人々……ゼロ、ゼロ、ゼロ……ゼロの大行進だ。

目を閉じて目を手でマッサージ。

俺、疲れているのかな?

再び、双眼鏡を手に取り赤い数字を見た。

一万三千七百十一、異常な数字は変わらない。

増えてはいないのが幸いか?


 俺は何か恐ろしいモノを見てしまったようだ……。




「お、おい!カズ!大丈夫か?」

「斉藤君!一万って数字はさっきの条件の話だよね!?」



 俺の様子を見て助手席にいる信兄が俺に声をかけてくる。

運転席にいる佐久間さんも俺を振り返って声を大きくしている。




「うん……人を殺した回数であってるよ……一万三千七百十一……」



 俺の途切れ途切れな言葉を聞いて黙り込み、静かになる車内。

俺の後ろの席で身動ぎした気配を感じた。

シンラ達も俺に注目しているのだろう。

そんな俺の手が温かくなった。

温かい……いや俺の手が冷たくなっていたのかも知れない。

温度の主は詩織だった。

詩織の手が俺の手を握っていた。

心配そうな顔の詩織が目に入って来た。

あぁ、悪い、心配させてしまったか。




「俺の力がおかしくなったかと思って駐車場の人達を見たけどゼロだらけだ。間違ってないと思う」


「そ、そうか……」

「ぬぅ……」

「何てことだ……そんな数字があり得るのか!?」


「浅井さん、俺もそう思います。ですが、この異常数字以外ではゼロと……一桁までですね」


「いるのかい?他にも殺人者が?」


「はい。異常数字の周辺にゴロゴロいますね。どうなってんだ宗教組織、いや《降臨の家》」



 俺は詩織の体温を感じて少し平静を取り戻した。

みんなに伝わるようにゆっくり話す。

仕事ではクールな信兄も動揺しているようだ。

俺の力を疑っていないからこその動揺。

佐久間さんも同じだろう。

それでも眉をひそめて難しそうな顔だ。

そして黙っていた浅井さんが詩織を挟んで向こうから聞いて来た。

そんな数字があり得るのかと。

また、ゆっくりと言い含めるように話した。

俺は平静だと伝えるようにだ。

殺人者。

この《降臨の家》本拠地の奥には殺人者が何人もいる。

俺の力がそう言っている。

だが何の証拠もない。

それはこれから調べていくしかない。


 俺はそんな場所である《降臨の家》に呆れた。

そんな奴らが、どんな人を救えるってんだ!

呆れと同時に怒りも湧いて来た。




「……考えてみました」



 後ろの席から声が聞こえた。

林さんの声だった。

俺を含め、全員の視線が林さんに向く。

誰も何も言っていない。

話を聞く体勢だ。




「戦争を経験しても出る数字とは思えません。かと言って戦争以外では出ない数字でしょう」


「続けてくれ」


「はい。直接殺さなくてもミサイルの発射ボタンを押したらどうなるのか?たぶん数字に反映するのでしょう」


「だろうな」


「それでも一万を超える数字が出せるのかは疑問です。少なくとも核ミサイルは撃たれていませんし、戦術核ではそこまでの死者は出ません。それだけの犠牲者が出た戦争は近年ないはずです」


「確かにないな。累計で一万を超える犠牲者が出ていたとしても一人で殺して回った訳じゃあるまい」


「はい、僕もそう思います。あ、もう一つ可能性を思い付きました!病気……意図的に疫病をばら撒いたとかですかね?クスリを扱っていそうですし……」


「ふむ……『エンジェルラダー』以外のクスリってのがないとは言い切れないな」


「しかし僕の記憶にある限りではそれだけの死者が出た疫病は原因を特定されていますね……やっぱり戦争なのかな……」


「まぁ、それが正しい原因ではなかった可能性もある。それに捏造された可能性もだ」



 静かな車内に林さんの声が響く。

戦争。

俺もこの異常な数字を見てそう思った。

そして条件は殺人教唆ではなく、殺人だ。

自分自身の手で殺した回数のはず。

林さんが言うようにミサイルの発射ボタンを押して複数の人が亡くなったら数字に反映するだろう。

粉々になったミサイルに数字は出まい。

しかし林さんは近年でそれだけの犠牲者が出来た戦争はないと言う。

信兄も戦争での犠牲者数を覚えているらしい。

記憶力良すぎだろう……俺なんて言われてからネットで調べないと解らないぞ!


 林さんは戦争以外の可能性にも思いあたったようだ。

疫病。

昔ほど猛威を振るう事はなくなっているが、少しずつ形を変えて現れる疫病はある。

それでも進んだ医学で対応出来ているのが現状だ。

林さんは自分で言い出しながらも自分で否定もしていたり。

信兄は情報そのものを疑っているようだ。

自分達の目で見て確認した訳じゃないからな。

誰かが何らかの意図で偽装していた可能性は捨てきれない。

こうなると特定は難しいだろう。


 何なんだ、あの異常な数字は……。



 俺だけではなくみんな黙り込んだ。

それぞれに林さんと信兄の言ったことを咀嚼して自分の中に情報として取り込んでいるのだろう。

何が正しく、何が間違っているのか解らない今、それぞれで考えていくしかない。

異常な数字。

それを理解出来ずに動揺した。

しかし誰も俺の力を疑っていない。

こんな状況だが、少し嬉しくなった俺がいる。

そのおかげで問題から目を逸らさずにいられる。


 真実はいつも一つらしいから、必ず辿り着く道があるはず!






「カズ、ゼロ以外の数字を固定してくれ」


「任せて!」



 直ぐに答えが出せないと信兄も思ったようで、俺に依頼して来た。

俺達は出来る事を一つずつやっていくしかない。

まだやれることはたくさんあるはずだ!。

まずは一つだな!

俺は《降臨の家》本拠地にいる『人を殺した回数』がゼロ以外の者達の数字を天に伸ばし赤く固定させていくのであった。

あ、赤い数字は他でも使ってるな……違う色にしよう。

黒、黒でいいよな!犯罪繋がりでクロって事で!




「私も考えてみました」



 そんな車内に黙っていたアゲハの声が上がった。

新たな意見、そこに期待が高まる。

みんなの視線が一番後ろの席にいるアゲハに集まった。

ビクッと身じろぐアゲハ。

人の視線が集まるのに慣れていないのかも知れない。

割と地味な人だし……。

シンラが何気なくそんな事を言った事があった。

その時のアゲハは目に見えて落ち込んでいたね……気にしているんだと思う。

それはそれ、目立つのも好まないのだろう……結構面倒な人だ。

二十台半ばともなると色々とあるのかも知れない……俺には触れられそうにない部分だ。

気を付けようと思います。


 っと、そんな話じゃない!新たな意見を是非聞きたい!

アゲハは陰陽師だ、特殊な知識、目線から意見を出してくれるに違いない!

きっとそうだ!!


 俺は勝手に盛り上がっていた。


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