2-27
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「人殺し、この人って何なんでしょうか?」
「定義の話か……」
「はい。人が死ぬと霊になる場合があります……霊は人でしょうか?」
「「「……」」」
みんなの視線を一身に浴びて居心地悪そうにしながらアゲハが話し出した。
アゲハの問いかけに反応したのは信兄。
俺が力を使った時の言葉、『人を殺した回数』この中の人とは何なのかをアゲハは問うている。
哲学的な話?
いや人が死ぬと霊になる場合がある。
霊とは人か?
アゲハはそう言っている。
車内の仲間達が考え込みだした。
静かな車内。
なるほど、俺は人という言葉を使った。
漠然としてだ。
何か深い意味があって使った訳ではない。
調べるのに一番適したものだと思ったからだ。
そしてアゲハが言いたい事も解った。
その人という言葉が何を示すのか……。
警察病院、それから霊山の樹海、そこで確認出来たのは霊の存在と霊の上に出た数字だ。
人と同じように反応した。
つまり霊は人であり、人は霊なのだ。
俺はそう考える。
結論とまでは断言出来ない。
だがそう考えるのが妥当だと俺は思った
霊は人のソフトなのではないだろうか?
そして肉体をハードとするなら、話が合う気がする。
ソフトとハードが揃って初めて人として活動出来るのではないか?
俺の力はソフトに反応する。
アゲハの言葉を借りるなら霊は人で人は霊なのだ。
他の人がどう考えるかは解らないが俺の中ではこれが答えだと思う。
「人には魂があり、それが霊。霊はソフトで肉体がハード。二つ揃って、初めて人として活動出来るんじゃないかな?そして俺の力はソフトである霊に反応していると思う」
「カズちゃん、私もそう思った!霊も人なんだよ!」
「カズ、詩織、俺の結論も同じだ。霊も人だ」
「言い得て妙ですね……霊が見えないのが残念です」
「なるほど、そう考えると辻褄が合うわね。ふぅっ……人がいっぱい殺されたと思いたくないって気持ちのせいかしら、それが答えであって欲しいわ」
「浅井さん!私も同じー!」
「そうよね。さすがに異常な数字過ぎるわ」
「魂、霊、人、全て同じですか……」
「俺は始めからそう思ってたぜ!」
「うそつけ!タイヘーのうそつきー」
「ホントだって!」
俺は自分の考えを話してみた。
すかさず詩織が同意してくれた。
同じ事を考えていたようだ。
信兄もだ。
林さんは理屈としては理解できていそうだが、霊を見れないのを残念がっている。
浅井さんは俺の言葉を聞いて頷いている。
いやそうであってほしいと願っているようだ。
詩織はそんな浅井さんと同じ気持ちらしい。
それだけ《降臨の家》本拠地奥に出た数字は異常であり、否定したい気持ちも解る。
佐久間さんは、まだ考え中のようだ。
人の話を聞いて自分の答えを出そうとしているっぽい。
タイヘーとシンラは楽しそうだ。
大量殺人について考えたくないのかも知れない。
無理もない。
「私もそうなのではないかと考えます。そして大量殺人の話に戻りますが、霊も人だと考えるならば除霊という線はないでしょうか?」
「あぁ!」
「なるほど……」
「そっかぁ!」
「あり得ますね……」
「一万を超える数だものね……普通では考えられない数字よ」
アゲハは穏やかな表情でゆっくりと話す。
俺より先に、その答えに辿り着いていたようだ。
まだ正しいと決まった訳ではないけどさ。
そしてアゲハは話を戻した。
定義の話から異常な数字の話にである。
《降臨の家》本拠地の奥に出た異常な数字、一万三千七百十一。
アゲハは除霊した回数が含まれているのではないかと言っている。
霊の存在、そして除霊師もいるという。
ない話ではない。
俺だけではなく、他のメンバー達もそれなら納得だといった顔に見える。
それだけ一万三千七百十一という数字は異常だったのだ。
しかしそうなると……人は二度死ぬのかな。
肉体の死、そして霊としての死、除霊。
実体は解らないが、俺の頭にはそんな事が思い浮かんだ。
「実際に過程を見た訳ではないから断言はできない。だがいい線だと思う!俺達一般人では思い付かない話だった、アゲハありがとう!」
「え、ええ。お役に立てたようで嬉しいです」
信兄がアゲハを褒めた。
幼い頃から特別な知識を覚えさせられ修行させられたというアゲハ。
陰陽師という異能者。
その視点、状況に合わせた考え方、それを褒められて、アゲハが照れていた。
頬が赤くなっている。
嬉しそうにはにかむアゲハは少女みたいだ。
実年齢は社会人なのでお察しだ。
口にだしては言わないけどさ。
他のメンバーも自分の考えを言って盛り上がる。
異常な数字はそれだけのインパクトがあった。
恐ろしくもある大きい数字。
それが血を伴わない可能性が出た事で安心出来た部分があるのだと思う。
少なくとも俺はそうだ。
霊の死、除霊ならそんなに怖くない。
まぁ、除霊の現場を見た事がないから言えるのかも知れないけどさ。
車内で議論が活発になった頃にスマホが震えた。
「あ、マナちゃんからだ……ドライブ楽しいよっと」
「今日出かけるって伝えてたもんな」
「うん。お土産も買わないとね!さっきのタペストリーがいいかな!かな!!」
「それはどうだろう……」
詩織だけでなく俺にも来ていた。
同じグループだからな。
うん。
友達だよね!
そうだよね!!
詩織は直ぐに返信していた。
ドライブかよ!と思ったけど黙っておいた。
お土産……タペストリーはないと思いますです。はい。
直ぐに大友さんからも返事が来た。
早い。
暇なのかな?
お、コウゾーからも来た。
いいなぁって小学生かよ!
休みなのに、やる事ないのかな?
ユッキーもか!
眼帯、中二病君の顔が思い浮かぶ。
あ、ちょうどいいし聞いてみるか?こういうの得意だろ。
『一万人以上殺せる奴ってどんな奴だと思う?』
俺は軽い気持ちで聞いてみた。
『決まっておる!魔王だ!!不老不死の大魔王!!』
ユッキーからの答えは早かった。
字面から嬉しそうな気持ちが読み取れる。
こういう話、好きそうだもんな。
魔王か。
中二病的にはこう来るか。
ラノベ的展開だな。
魔王、不老不死の大魔王。
角やら羽やら生えた大男を連想した。
ふふっ……!?
不老不死?
まて……何かが引っかかったぞ?
「不老不死……大魔王……」
「ユッキー面白いよね」
「ちょっと待て、不老不死?まさか……戦争、戦国、古代……」
「お兄ちゃん?」
「異常な数字の奴が不老不死だったらどうだ!?昔から殺し続けた数字だったら!?」
俺はユッキーの返事に引っかかるモノを感じた。
思わず呟く。
詩織は俺の隣で漏れ出た言葉に反応した。
楽しそう。
反応したのは詩織だけではなかった。
信兄も聞いていたらしい。
信兄が顔を覆うように手を当てて考え込んだ。
そして考え込んだ時間は短かった。
信兄の言葉から興奮しているのが解った。
大発見、そんな感じだ。
顔も少し紅潮している。
あぁ……それだ!
俺にすんなりと言葉が入って来た。
普通なら無理な数字も、回数も積み重ねられる条件があったらどうだ?
不老不死でコツコツと人を殺し続けられたら?
信兄の言葉を聞いてモヤモヤが晴れた。
不老不死、以前なら笑い飛ばせた話だ。
だが今は違う。
俺は身を持って体験している。
異能。
俺や詩織だけが持っているとは限らない。
もって生まれる人だっているかも知れないし、異世界に行って帰って来た奴だっているかも知れない!
「俺や詩織という例があるんだし、あり得ると思う」
「うん……」
「戦争、除霊、不老不死、俺達は異常な数字の答えに近づきつつある」
俺と詩織は信兄の言葉に同意した。
信兄が淡々と宣言した。
自信ありげ。
信兄が上げた三つの中に答えがあると言うのだろう。
チームを引っ張る者としては、こうあって欲しいと思った。
頼もしい。
「不老不死は特殊能力、超能力、異能という大きな括りでいいんじゃないかな?俺が調べ切るまではさ」
「ふむ……それもそうか。思い込みはいかんな」
「でも大きく分けての分類は出来たね」
「ああ。たのむぞカズ!」
「任せて!」
「戦争に関しては僕が細かく調べましょう!」
「除霊師を同じ条件で調べれば除霊に関しては直ぐに答えが出せると思います!」
「そうだな!カズだけに負担はかけられない。俺達で出来る事はやろう!」
「「はい!」」
まぁ、不老不死は特殊能力、超能力、異能って大きな括りでいいと思う。
物理的に大量殺人。
霊という人を殺す。
異能での殺人。
大きく分けたが、この三つの分類で調べる方針が決まった。
林さんは戦争に付いて細かく調べると言ってくれた。
その戦争に件の人が関われるかどうかもだろう。
いきなりミサイルの発射ボタンを押させてくれーって行って押させてくれる訳がないからな。
アゲハは除霊師に心当たりがありそう。
アゲハの伝手に期待だね。
気合を入れて調べていこう!
気になるのは異能。
不老不死とかロマンある。
時の旅人、そんな感じだ。
ただ、血なまぐさそうだけども、この場合。
「世界は広いなぁ」
思わずでた言葉。
車内のみんなも頷いている。
今日の常識は明日の常識ではない。
そう思わせてくれる。
俺達の世界も知らない事で一杯だ。




