2-19
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「マジで行くの?やばくね?」
「行くぞ。お前の力を見極めるんだ!」
「だけどさー」
「うぅ……進んだら幽霊がいるんでしょ?うぅ……」
「うちには除霊師がいない。祓う事は出来なくても発見ならカズが出来ると確定させておきたいんだ」
俺達は霊山と呼ばれる山の麓に来ていた。
その筋では有名な場所だ。
そして自殺者が多い樹海が麓に広がっている事でも有名である。
何故こんな所に来ているかと言うと、信兄の提案だ。
『特対』には異能者が多い。
だが除霊師はいない。
陰陽師であるアゲハ、呪術師であるタイヘー、霊力の高い詩織、俺、信兄は霊の存在を何となく見れる。
だがハッキリ見れるのは気合を入れた詩織だけだった。
幽霊を怖がる詩織は断固拒否。
見れる人が一番の怖がり……皮肉なものだと思ったね。
俺が警察病院の霊安室前での事を信兄に報告した結果が、この場である。
『カウンター』で霊の頭上に数字が出るなんてなぁ……。
そうさせたタイヘーはもしかしたらと思っていたらしい。
因みに除霊の仕事が回ってくるかは判らないが、俺が霊を発見出来さえすればアゲハでもタイヘーでも打つ手はあるらしい。
詩織の『スリープ』は効かなかった。
寝ないモノには効果がないのだろう。
まぁ、ごもっとも。
「樹海は電波が入らない場所も多い。それに方位磁石も効かない場所もあるらしい。カズ、念のため力で確認しておいてくれ」
「あいよ」
俺は引き返す気のなさそうな信兄を見て進む事を決めた。
そして『カウンター』を使う。
遠くに黄色く光る柱が三本見えた。
うちの母親、英二、そして佐久間さんの三本である。
こう言うと某家族アニメの次回解説っぽい。
見方によっては黄金の柱だ。
大丈夫、力に問題はない。
樹海で迷っても戻る方向は見失わない。
そうならないのが一番ではあるけども。
俺は信兄に向かって頷く。
「まずはこの場から試して行こう」
「ラジャー。『カウンター』『自殺した回数』」
信兄の指示に従い、力を使う。
俺の目の前には樹海。
その奥には高くそびえる山。
美しい形をした山なのに、麓が自殺の名所とか……世の無常を感じる。
今回は自殺者探索。
だから初めから目印になるように光の柱にする。
森から天へ向けて伸びる柱の数々……力に反応する数字の数だけ人、もしくは霊がいるという事だ。
だが縦に伸びた数字は解り難い。
それでも零と一は見分けがつく。
一は解りやすいからな。
次の作業だ。
数字が一のモノを赤い数字にする。
そして数字の固定か。
これで新たな『カウンター』には反応しない。
これで自殺者とそれ以外に別れた。
それ以外の中に生きている者がいたら何をしているのか気になる……。
森だぞ?樹海だぞ?
自殺志願者くらいしか思いあたらない。
あ、所持品をいただく泥棒って線もあるか。
不届き者という意味なら死体を埋めに来たって事もありえそう。
樹海……良い所ではないな。
俺はそう思わざるを得なかった。
「はぁ……」
俺はため息を吐いてしまう。
俺の目に映る数字の多さと、楽しくない想像の結果だ。
仕方ないと思います。
「なんだ、そんなに一杯なのか?」
「うん……三十は下らない」
「あぅ……」
「詩織ちゃん!俺が付いてるよ!」
「詩織、あたしの横にいな!」
「そうそう。タイヘーの側にいたら妊娠しちゃうわよ」
「タイヘー……」
「えぇっ!?みんなひどくね?課長代理、違うから!違うからーっ!!」
俺の様子を見た信兄が溜息の原因について尋ねて来た。
俺は三十以上あると思われる赤い柱について答えた。
信兄は特に驚かなかった。
予想の範囲内なのだろう。
驚いたのは詩織。
数字を聞いてみんなの顔を見まわしている。
帰ろう。
そんな気持ちが込められている。
不安そうな顔の詩織だ。
そこへタイヘーからのフォロー。
詩織とタイヘーの間に入ってタイヘーを睨みつけるシンラ。
詩織とシンラも英二、猫又のマタさん、子猫達のおかげで仲良くなっている。
だからこそのシンラの態度。
詩織に変な虫は近づけない!そんな感じだ。
タイヘーは仲間だと思うんですが……ちょっと酷いと思いつつ黙っている俺。
シンラの言葉に乗っかるアゲハ。
あぁ……信兄の前でそんな事を言ったら……遅かった。
信兄がタイヘーを睨みつけ低い声を出していた。
両手を前に出して振り、否定のゼスチャーをするタイヘー。
顔が引き攣っている。
言葉でも必死に否定している。
みんなの様子を少し笑って見ているのは浅井さん。
ここに来ているメンバーは俺、詩織、信兄、浅井さん、アゲハ、林さん、シンラにタイヘーの八人だ。
今日、佐久間さんは休みだそうだ。
何でも奥さんと娘さんとお出かけらしい。
意外と子煩悩な佐久間さん。
きっと良いお父さんなんだろうね。
頼りがいもあるしさ。
娘さんは英二より一学年上だとか。
まだまだ可愛い盛りであろう。
家庭サービスにも頑張って欲しいね。
まぁ、俺に言われたくないだろうけども……。
「行くなら行こうぜー。一番近そうなのは……っと」
「カズ!お前、お前良い奴だな!」
俺はタイヘーに迫っていた信兄を横目に先へ進もうと言った。
埒が明かないと思ったのが半分、タイヘーを助けるのが半分。
事実、信兄は引いてくれてタイヘーが嬉しそうに俺に駆け寄って来た。
現金な奴である。
呪術を見せてくれたのと、俺の力の新たな使い方を教えてくれたタイヘーにこれくらはしてやってもいいだろう。
俺は一番近そうな赤い柱に向かって歩き出すのであった。
みんなもハイキング気分で俺の後に付いてくる。
詩織は俺の事をチラチラと見つつもシンラ、浅井さんの側だった。
俺が先頭を行く、つまり第一発見者は俺になる。
それが嫌なのだと思われる。
いつもだったら俺の背後で服を掴んで歩く所だからな。
これから向かう先にあるモノを考えなければサイコーなのにな……。
まだ新緑の季節は終わっていない。
天気も良いし緑も目に優しい。
鼻を突き抜けて来る独特な匂いも好きだ。
木々の間を抜けて来る爽やかな風も大好きだ。
このままハイキング気分でいさせてくれないかなぁ……くれないよねぇ……。
俺はそんな気持ちで歩くのであった。
▼
「信兄、あの木の後ろだ」
「そうか。お前らはここで待機な」
「私も行こう」
「頼む」
「私も行きますよ課長代理」
「そうか。ならアゲハも来てくれ」
「はい」
俺は足を止めて一本の木を指差した。
木に重なるように赤い光の柱は天に伸びている。
信兄は俺達に待機を指示。
浅井さんも木の後ろを確認に行く信兄に同行するようだ。
そしてアゲハも。
アゲハは霊的結界というモノが使えるという。
幽霊がどういう存在か俺には良く解らないが、アゲハがいれば信兄達も安全だろう。
ちょっと安心出来た。
残る俺達は詩織を真ん中に置いて待機。
信兄達の後姿を目で追った。
誰かの喉が鳴った音が聞こえた。
俺も緊張している。
いくら『特対』に入ったとはいえ死体なんぞ見た事がない。
そうしない様に信兄が配慮してくれているというのもある。
これから機会があってもそうそうお目にはかからないだろう。
話を聞いた限りだと俺、詩織、シンラ以外は見た事がありそうだった。
みんな心がタフだと思います。
「あ、霊もいるようです。その場から見てください」
「すっかり骨だな……」
「ええ」
木の後ろに近づいた所でアゲハが声をあげた。
霊もいる……霊以外もいるって事だ。
つまり死体だろう。
俺の喉もゴクリと鳴った。
俺の服を誰かが掴んだ。
詩織だろう。
確認する必要もない……でも幽霊だったらどうしよう。
振り向かない俺であった。
アゲハに言われて足を止めて木の根元を見ている信兄と浅井さん。
どうやら白骨死体があるらしい。
信兄と浅井さんは特に動揺しているようには見えない。
タフだなぁ……。
俺は尊敬してしまう。
「実験で来たとは言え、このままって訳にもいかんな」
「そうね」
「地元に要請すっか……」
「それしかないわね。これから沢山見つかるのでしょうけど……」
信兄と浅井さんが話している。
そしてスマホを取り出す信兄。
俺もスマホを見てみた。
何とか一本立っている。
セーフ!
圏外ではないらしい。
まだ樹海の入口とも言える場所だからであろう。
警察の応援が呼べる。
しばらくスマホで話をした信兄。
信兄は林さんを連れて樹海の外、元の場所へ戻っていった。
何でも林さんは木に目印を付けて歩いていたそうだ。
完全記憶能力のある林さんの辞書に遭難という文字はないようだ。
力の片鱗を見た。
とは言え死体の側に残される俺達もどうだろう?
楽しい気分になれるものではない。
詩織は信兄に付いて外に戻れば良かったのに……そう言ったら断固拒否された。
怖いけどついていく!詩織もタフらしい。
顔色は悪いけども。
俺達は信兄が地元の警察官を連れてくるまで待機。
死体の側でだ。
飯やらおやつやら食べる雰囲気ではなかったので、仕事も兼ねて力の実験。
浅井さんはアゲハを伴い白骨死体を調べ出した。
俺も『カウンター』で身元の調査。
家の場所くらいは特定できる。
もちろん男女の判別は容易だ。
男子トイレか女子トイレの利用回数で解る。
特殊な性癖でもなければ問題ない。
しかし霊安室前にいたと思われる霊よりボンヤリが薄い。
霊にも色々ありそうだ。
力のあるなしは霊力で決まるのだろうか?
世界は不思議に溢れている。
そう思わざるを得ない。
▼
信兄が連れて来た地元警察の方々と共に仕事をした。
彼らも慣れているようで仕事は早かった。
嫌な慣れかも知れない。
淡々と無表情で仕事をするみなさん。
次々と見つかる白骨死体。
ハンパに肉が残っていないのは幸いだと言える。
少なくとも俺にはそうだった。
保健室の標本と大差ない。
次々と見つかるので、訝しげな視線を送られていた信兄。
俺にもその視線は来ていた。
俺が信兄に小声で伝えていたからだ。
それでも何も言われなかった。
薄々は異能の存在を感じ取ったかも知れないね。
そして俺が自殺で回数を調べたせいか、現場保存だのはしなかった。
それをしたらキリがないってもある。
見つかるたびに林さんが先導して樹海の外へ持って行った。
俺達は白骨死体を六つ見つけて処理した。
でも俺が向かったのはそのうちの五つ。
一つは偶然見つけたモノであった。
数字の出ていないモノ……霊らしきものはいなかった。
霊とは何なんだろう?
そう思ってしまった。
自殺者は霊になりやすい?
想いが残るから?
答えの出ない疑問で一杯になった俺。
樹海での仕事、後半ともなると詩織やシンラは森の木々や植物、山菜、小動物を見ていた。
もう考えない事にしたのだろう。
俺もそっちに加わりたかったね!
山菜の天ぷら!いいよね!旬にはちょっと遅いけどいいよね!
もっとも何かの近くにある山菜には手が出せないけども……そこまで剛毅ではない。
そう言えば見かけた鳥なんかには数字が出ていなかった。
樹海の木々にも反応してない。
植物も生き物には違いない。
数字は人間、もしくは元人間にだけ効く?
いや数字の力だし数字を数えられるモノに効くとかかも……人間の赤ちゃんとかはどうなんだ?
また疑問が湧き上がった。
今度マタさんにも試させてもらおう!それである程度解るだろう!
地元警察の皆様、お疲れ様でした!!
俺達も疲れたけどね!!
遠くない場所に自殺者ではない二人組の数字があったので、行ってみたら死体を運んでいた悪い奴らだったのには驚いた。
思わぬ仕事。
こちらは警察関係者だらけ……埋めるため用かスコップを持っていたので抵抗されたが、浅井さんが出て難なく捕まえる事に成功。
疲れていたみなさんには思わぬご褒美?何らかのポイントがもらえるようで喜んでいた地元警察の方々だった。
信兄は報告書やら今日の後始末やらで数日は忙しくなる模様。
貴重な体験をしたと思う。
そして力の新たな使い方も実験出来た。
特定のモノの捜索。
ただし亡くなっても霊が残るとは限らないとも解った。
ホント、世界は広い。




