2-20
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「すげー人だな!」
「いっぱい!」
「ああ、まるでゴミのフゴッ!!」
「ったく人をゴミ呼ばわりしてんじゃねーよ!タイヘーはホント、アホだな」
「同意。タイヘーは救いようがないね」
「タイヘーは黙って仕事だけしてなさいよ」
俺は眼下に集まる人の群れを見て子供みたいな感想を言ってしまった。
俺の隣にいる詩織も似たようなものか。
国の人口は知っている。
だが人がこれほど集まっているのを自分の目で見るのは初めてだ。
俺と詩織だけでなくタイヘーも人の多さに驚いている。
そしてシンラがタイヘーの腹を殴った。
人の多さを語るのに不適切な言葉を口にだしたからだろう。
林さん、アゲハもタイヘーを叩いている。
まぁ、タイヘーが悪いかな。
信兄、浅井さん、佐久間さんもいるがタイヘーの事は放置でヘッドセットでどこかと連絡している。
特殊無線だな。
人の群れ、俺達が借りだされた理由。
それは人の群れの中を進むオープンカーに乗っている人達にある。
総理大臣と大統領。
同盟国同士ではあるが近年ではなかった光景である。
地域紛争、テロ、物騒な世の中になり、大勢の前にお偉いさんが二人も姿を晒すなんて早々ある事ではない。
だが今回締結された軍事協定の意味は大きかった。
大陸に対して広く腹を見せている我がフソウ。
フソウの海軍は弱くないが面では守り切れるか怪しい。
その間にある島を基地に改造して貸し出したのだ。
もちろん払うべき対価もあった。
島の改造費、補給の一切をフソウが担うのだ。
大統領側にも利点があるようで、その条件だけで受け入れられた。
今後、フソウの防衛負担は減るだろう。
だが裏切られて腹を食い破られたのでは笑い話にもならない。
もっとも国の全力をあげて責められない限りフソウは落ちないと言われている。
島国だから外への侵攻はないが、強い我が国の軍。
同盟国として強固な繋がりを持っている事を内外に示さなくてはならなくなったのだ。
それを知らしめるために行われているのが、このパレードだ。
同じオープンカーに乗り周囲へ手を振っている総理大臣と大統領。
お偉いさんも大変だ。
警備担当の人員が足らず、俺達も借りだされた。
それどころか各都道府県からも警察官が借りだされているし軍の協力も得ている。
もちろん大統領側からの警備も入っている。
最新の装備、機械を用いての警備だが不特定多数の人が集まる場では、完全な警備とはいかない。
不安要素はいくらでもあるのだ。
「あ、あれって……」
「パワードスーツか!うひょーっ!近くで見れないかなぁ」
「マジか!ついに実働かよ!!」
「うぉーっ!かっけーっ!」
「シンラ、興奮しすぎよ」
「でもよーっ!あれだぜ!?うぉーっ!」
「もう、シンラったら」
ビルの上からパレードを眺める俺達の目に移った異形のモノ。
詩織に続き、俺も声をあげた。
異形のモノはパワードスーツ。
鈍く黒い全身。
カッコイイ!
身長三メートル越えのロボットに見える。
大型の盾と警棒のようなモノを手に持ち、足を動かさずにスーッと車の後ろを着いて行っている。
背中には筒が付いている……遠距離砲だろうか?ロマンだ……。
試験機は何度かお目見えしていた。
それが初めて実働しているのだ。
電子戦もこなせるというこれからの兵器。
人は乗っても乗らなくてもいいらしい。
未だ人を超えそうにないAI。
人が乗っている方が力を発揮するとも聞いている。
そんな代物が十体も出張ってきていた。
タイヘーもシンラも興奮の声をあげている。
男みたいな興奮の仕方をしているシンラをアゲハが窘めた。
まったく興奮の治まっていないシンラ。
むしろ興奮の度合いは上がっていた。
「お前ら、落ち着け。仕事を忘れるなよ?」
「はい!」
「はい」
「ラジャ」
「はーい」
「わーったよ」
「ういー」
信兄が騒いでいる俺達をジロリと睨んで来た。
即、返答をしたのは林さん。
信兄を尊敬しているだけあって従順なお答え。
アゲハもほぼ同時に答えている。
俺、詩織、シンラ、タイヘーは適当な返事。
林さんが俺達を睨んで来たが、俺達は視線を逸らしてパレードに目を向けた。
真面目な人を相手にするのは疲れるのだ。
浅井さんと佐久間さんが苦笑していたり。
「カズ、伊部総理大臣の暗殺を考えた回数、トランク大統領の暗殺を考えた回数、人を殺した回数で頼む」
「あいよ!」
俺達がビルの上にいる理由。
俺の力、『カウンター』に関係がある。
樹海で試した結果から前提条件の推察が出来た。
俺を起点とした一定距離までが対象ではないかというのが結論だ。
森の木々で見えていない霊を対象に出来た事。
霊山の先には対象がいなかった事。
見ている方向は関係なく、町の方にいるであろう市民にも数字が出ていた事。
一定距離は、およそ十キロ前後らしいとも解った。
俺に向かって、信兄が依頼して来た。
昨日までと同じ条件である。
既にこの条件で怪しい者のチェックは進んでいた。
中には指名手配されていた者もおり、掴まっていたりもした。
俺が言うだけではグレーなまま。
全員捕まえるのが難しいのがもどかしい。
信兄からの依頼通りに順番に力を使う。
まずは……。
「うはっ!」
「カズ、どうした!?」
「いやぁ、人が多すぎてさ……数字が凄い事になってるんだよ……」
「俺には解らんが、そうなんだろうな。大丈夫か?」
「うん。大丈夫、問題ないよ」
「そうか」
俺は白く浮かび上がった数字の数々に圧倒されてしまった。
これだけの人を前に力を使った事はないからなぁ……。
信兄が俺の様子を見て直ぐに聞いて来た。
心配してくれている。
何だかんだ言って俺にも優しいよな、信兄。
ちょっと嬉しくなる。
おっと、嬉しがっている場合でも圧倒されている場合でもなかった。
お仕事お仕事っと。
俺はゼロ以外の数字を赤くし天に伸ばし固定化。
人物の特定作業に入る。
望遠カメラで赤い数字を持つ人を撮影。
デジタル加工で人物を線で囲う。
次、次っと。
詩織と林さんがタブレットに映る人物を同じ様に囲い、それを見て信兄、浅井さん、佐久間さんが下にいる対策本部の人や警察官に連絡を入れている。
タブレットの情報は下にある対策本部でも共有している。
中々に便利だ。
忙しい……忙しすぎるぞ!!
大統領の周囲をバイクで動いていた人が俺達の方を振り返った。
しかも俺と目があったような気がする……。
なんだかゾクリと来た。
だが忙しい!それを考えている暇はないのだ!それに警護の人なら敵ではあるまい!
写す。
囲む。
マタさんの手も借りたーい!!ユキと子猫達にも会いたーい!!
▼
途中でパレードの進行方向にあるビルへの移動もあったが、仕事を進めた。
悪い奴、多過ぎだろ!!
俺は順番に条件を変え力を使うが、あまりにも赤い数字を持つ者が多くて嫌になった。
人の悪意、それを目の当たりにしているのだから無理もないと思う。
アゲハは式神を飛ばしたりしていたようだが、タイヘーは出来る事がなかったようで、俺に水やおしぼりを差し出してくれたりしていた。
チャラ男な外見と、この行動……何だかホストっぽいと思ったり。
そんな事を考えて吹き出した。
周りからは怪訝な表情で見られたが、嫌な感情が薄れた事実。
タイへーに感謝だな。
後で肩を揉んでやろう。
コーヒーも奢ってやろう。
シンラはボケーッとパレードを眺めていた。
でも俺達はシンラの特別な力を知っているから何も言わない。
ユキを助け、英二の涙を止めてくれてありだとうだ。
どうやら他のメンバーもシンラの力について知っていた模様。
俺達に言うタイミングはシンラに任せてあったという。
信用されたという事かな?これも嬉しい。
俺達の仕事は続いた。
下では私服警官を含めた警察官が大活躍。
だが悪あがきで暴発した悪漢もいたようで、多少の混乱もあった。
それでもパレードはつつがなく終わった。
無事に迎賓館へ到着。
会見が行われたのであった。
俺達は会見を最後まで見届けましたよ。
さすがに会見の場には不届き者はいなかった。
信兄は警視総監直々にお褒めの言葉と金一封をもらったそうだ。
信兄の上司もドヤ顔だったという。
俺達は俺達でボーナスと焼肉パーティの予定で大喜び。
俺達が見つけた悪い奴らの取り調べは進行中らしいが、既に証拠が見つかった奴らもいた。
いい仕事をしなさる。
次々に関わった組織の名も出ているらしい。
俺達に関わりのある《降臨の家》の名前もあがったので、俺達はこれから忙しくなる事が確定していたり。
大統領側も自国の組織摘発に乗り出したとか。
俺達でも知っている大企業の名前が出て来てビックリしたよ!
家電製品で有名なのに、どうなってしまうのだろうか?
気になる。
怪しいが証拠のなかった奴らもいたらしく、大喜びな大統領と補佐官だったそうだ。
フソウともども大掃除が始まる模様。
俺の力が役に立てた。
こんな大舞台でだ。
詩織のような凄い力ではない俺の力。
だが今回の件でコンプレックスは薄れたと思う。
実際、色々な人から褒められた。
信兄はもちろん、浅井さん、佐久間さんからもだ。
大人に褒められるってのは嬉しいものだ。
社会の一員として認められた気がする。
そんな俺の喜びも信兄の言葉で霧散した。
「あちらさんが大掃除の立役者であるカズを調べ始めたようだ……」
あちらさん……大統領の国だろう。
大活躍をし過ぎたらしい……。
俺の背中を冷や汗が流れた。
そして頭には嫌な想像の数々が浮かんでは消えてもいった。
拉致されたりしないよね?
信兄、期待してますぜ!?
浅井さん、ピッタリくっついて守ってください!!
お願いします!!




