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Counter!!  作者: 大和尚
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「よぉ!」


「よぉ!じゃねーよ……校門前でなにしてんの……」



 今日の授業が終わり、さて帰ろうと歩きだして直ぐに赤い髪の女がヤンキー座りをしていたのを発見した。

俺は思わず目頭を押さえてしまった。

なにしてんだ、この人。

知り合いも知り合い。

ええ、シンラでした。

俺と詩織に軽く手を振って立ち上がるシンラ。

周りの視線が痛い。

部活もなく下校する者達の目がたくさん……。

明日の噂話が怖いっす……。

俺はヤンキーでも裏番でもない!

そこの女生徒!違うからね!?

写真をとらないでー!?




「話、聞いたぞ?お前らだけ魔法を見たらしいじゃねーか!ずるいぞ!!」



 これを言うためにわざわざ、うちの学校まで来たってのか……。

確かに昨日、大友さん達と喫茶店で情報交換をした後で人気のない所で魔法を見せてもらったけどさぁ。

信兄にも報告した。

それがシンラにも伝わったのだろう。

でも信兄に言わない訳にはいかないからなぁ……。


 魔法、魔法は凄かったですよ?

大友さんが得意だという火の魔法には興奮してしまった。

右手の手の平を上に向けて構えると、手の平の上に火の玉が浮かんだんだ!

野球のボールと同じかちょっと大きいくらいの火の玉だった!

森の中だったので火災を起こす訳にはいかないという事で、少し離れた地面に向けて火の玉が放たれたんだ!

ゴゥンッ!!そんな音を立てて着弾し爆散!!

あれが人に向けられたら一たまりもありませんぜ!

少しの間、火が燻っていた。

治まった頃に地面を見に行ったら、地面が抉れていたんだ!

ほんの少しだけガラスっぽいモノが残っていたからかなりの高熱だったと思われる。

やっぱり人では耐えられない威力だと解った。

俺と詩織が大友さんを褒め千切ったせいか、ユッキーも張り合うように魔法を見せてくれた。

「吾輩も地獄の業火が得意なのだが……同じ火の魔法ではつまらん」

そう言って風の魔法を見せてくれた。

森の木に向かって放たれたのは不可視の刃だった。

ブツブツ言っていたと思ったら右手を振ったユッキー。

離れた所の木、その枝が切り飛ばされて落ちたんだ!

ただの中二病ではなかったんだよ!!

その後のドヤ顔は少し殴りたかったけど、我慢した。

もう一人単純そうな男もいた。

コウゾー。

彼も見せたくてうずうずしていたのか、こちらが何も言わなくても披露してくれた。

森を駆け、木を蹴り三角飛び、その勢いのまま木の上に登った。

かなりの速度で一連の流れをこなしていた。

猿かよ!?と思ったね。

飛び降りたと思ったら一抱えもある岩を軽く持ち上げていた。

こちらもドヤ顔だったね。

でも良いものが見れたので褒めておいた。

まぁ、詩織が同じ岩を持ち上げたら目を見開いて驚いていたけどな!!

大友さんは口が開きっぱなしだったね!

コウゾーほどの体格をしていないと身体強化の魔法を使っても同じ事は出来ないんだとか。

それで驚いたらしい。

「やっぱり魔法使いだったのね?どういう系譜かしら……」

大友さんもブツブツ言っていた。

詩織は魔法は使っていない。

変な身体能力になっただけだ。


 俺は魔法の使い方を聞いたけど教えてもらえなかった。

まぁ、大陸系の魔法使いとそれでもめているんだから教えられないわな。

しかも提携して間もないしさ。

信頼関係もまだまだだ。

いずれ教えてもらえる日が来ると嬉しいなぁと思いました。





「って、それを言いにわざわざこんな所まで来たのかよ?」

「おう!」

「マジか……」

「マジだ!だって魔法だぜ!?」

「解る。解るけどさぁ」


「陰陽師や呪術師の力は直ぐに使えなかったもんね」

「そう!そうなんだよ!だから魔法に期待するのも無理ねーってもんだ!」

「わかるー」

「なっ!」



 俺がシンラに問いかけると元気に返事をしてきた。

これを言うためだけに来たのか……俺は呆れた。

結構距離あるし時間もかかるのに……暇人か?こいつ。

だが魔法という言葉に興奮しているシンラの気持ちは解らないでもない。

俺もそうだったしな。

だが素直に認められない俺がいた。

なんだろう?


 詩織も話に参加してきた。

なにやら意気投合している二人。

やはり魔法少女系アニメの影響は強いのかも知れない。

年は一つしか離れていないし見ていたモノが同じなのかも。




「言いたい事は言ったし終わりか?」

「おう!」

「……ってマジかよ……電話でもメッセでもいいじゃねーか!?」

「お前らが通ってるって学校をちょっと見たかったってのもあったんだよ!」

「わぁ」



 俺が他に用はないのかと暗に聞くと、ないとのお答え。

いや別件もあったようだ。

俺達の学校を見たかった?

シンラは高校には通っていないと言う。

そんなシンラが校門の外から中を覗いている。

その表情から感情は読み取れない。

羨ましい?

ただの興味本位?

俺には解らないが詩織はシンラの言葉に喜んでいる。

興味を持たれているってだけで嬉しいのかも知れない。




「……学校の中に連れていく訳にはいかないけど……うちで飯でも食ってくか?」

「お!いいのか?」

「今日は炊き込みご飯とお味噌汁、それから肉じゃがだよー!おいでおいでー!」

「炊き込みご飯か!いいな!ってお前ら同棲してんのか?」

「違うよー、お隣さんだよー。カズちゃんの弟君であるえーちゃんも一緒に食べるんだ!」

「お、おう」

「まぁ、来いよ。まずは買い物からだけどな」

「おーう!」



 俺もシンラから興味を持たれて嬉しくない訳じゃない。

ガサツで大雑把な奴だが胸はでかいし見た目もいい。

ヤンキーっぽさ全開だけどさ。

だからせっかく来てくれたシンラをそのまま帰すのもなんだなと思った。

うちで一緒に飯を食おうと誘う。

乗り気なシンラ。

これからの予定は未定だったらしい。

詩織も乗って来た。

既に夕飯の献立は決めてあった。

キノコの炊き込みご飯。

これが今日のメインだ。

英二も好きなんだよね。

俺もだけど。

品数が少ない割に満足感が高いので俺的にも嬉しい。


 周りの生徒諸君からの視線を集めていた俺達は歩き出すのであった。









「あれ?えーちゃんだ。えーちゃん、お帰りー!」



 俺達が夕飯の買い物を済ませマンションの前まで来た時に見慣れた後姿を見つけた。

すかさず声をかける詩織。

兄の俺より先に言うとはけしからん。




「英二、お帰り!」



 俺も負けじとお帰りの挨拶。


 あれ?いつもなら満面の笑みで返してくれる挨拶がない?

なんかビクッとして英二が恐る恐るといった感じで振り返って来た。

上半身と顔だけ向けている恰好。

違和感。

何か抱えているっぽい。


 詩織もおかしいと思ったのか駆け出した。

更にビクっとなる英二。

何かあるな……。




「えーちゃん、どうしたの?って!!」


「英二?」


「おぉっ!猫じゃねーか?ははぁ、捨て猫を拾ってきちゃったんだな?あるある!!」



 前にいる詩織が英二に声をかけた。

詩織は何かを見たらしい。

俺は英二に問いかける。

どうしたのかと。

それが名前を呼ぶだけで伝わるのが兄弟の良い所!

うちの兄弟は仲が良いのです!


 英二からの返事が来る前にシンラが答えを言った。

何やら嬉しそうな声。

俺も英二の前に出て確認。

白い猫。

英二の腕の中にいたのは白い猫であった。




「英二……うちのマンションでは飼えないからな?」

「うぅ……」

「カズちゃん!えーちゃんを虐めないの!!」

「そうだぜ!」

「えーっ!?」



 俺は英二が何か言う前に宣言した。

腕の中の白い猫を見て頬を膨らませる英二。

可愛いけど、ダメなものはダメ。

英二の様子を見た詩織が俺に詰め寄ってくる。

虐めてない!

シンラも詩織に乗りやがって!




「この子、ちょうしが悪そうなの!」


「なにっ!?」

「そうなの!?」

「マジか!?」



 英二からの言葉は飼いたいという言葉ではなかった。

調子が悪い?

俺達は英二の腕の中にいる白い猫を一斉に見た。

ぐったりしている白い猫。

息も荒い。

舌を出して目を閉じている。




「ど、動物病院!近いのはどこだ!?」

「えっと、どこかで見たような……どこ!?」

「具合悪そうだぜ!やばくねーか!?」


「お兄ちゃん……」



 俺は急ぐ必要を感じた。

慌てる俺と詩織。

シンラが言う通り白い猫の具合はかなり悪そうだった。

手足をまったく動かさず、何とか呼吸だけしているといった風に見えた。

泣きそうな顔の英二。

ここで頑張らないでなにが兄か!!

俺はスマホを取り出した。

詩織もだ。

動物病院の検索。

焦る気持ち、震える指、ずれるスクリーン。




「うぅ……」


「っち、あたしによこしなっ!」

「お姉ちゃん、だれ?この子、たすけてくれるの?」


「おう!任せろ!だから泣くな!」

「う、うん」



 英二が嗚咽を漏らして目に涙を溜めている。

それに我慢ならなかったのかシンラが英二に声をかけた。

英二にもなにを渡すのか理解出来ているようだ。

シンラに向かって渡したら助かるのか聞いている。

英二を安心させるかのように肩を抱き、きっぱりと任せろと言い切るシンラ。

英二が腕の中にいた白い猫をシンラに差し出した。

シンラは、その子を優しく受け取った。


 辺りを見回すシンラ。




「あっちに行くぞ!」


「お、おう」

「うん」

「行く!」



 シンラが小走りで動き出す。

駆けださないのは白い猫になるべく影響を与えないようにだろう。

ヤンキーのくせに優しい所があるな。

雨の日だったら傘を差しだしてやるタイプなのかも知れない。

俺、詩織、英二もシンラの後へ続く。

英二の声が元気になっていた。

シンラが断言したせいだろう。

俺も英二を元気にしてくれたシンラに心の中で感謝する。

だが、これからだ、結果はまだ出ていない。

自信がありそうなシンラだが……。


 俺は揺れる赤い髪を追った。




 シンラは俺達の住むマンションの陰に入った。

生垣もあるし周りに高い建物もない。

人目につかない場所を選んだのだと解る。


 シンラは白い猫を地面に横たえた。

そしてナイフを取り出した……折り畳みのヤツだ。

いつも持ち歩いてるのかよとはツッコめなかった。

今はそれどころではない。


 シンラは目を閉じて何か集中した後で、ナイフを自分の左手の親指に刺した。

ぷっくりと溜まる血。

その血を横たわった猫の口元へ持って行った。

様子を見守る俺達。

何をするのかは解る。

だがそれが何を意味するのかは解らない。




「飲んでくれ!」



 シンラは白い猫に向かって祈るように言った。

もちろん言葉が猫に伝わるとは思っていないだろう。

祈りの言葉だ。

自分達の気持ちの問題。

シンラの指からポツリポツリと血が滴り落ちた。

舌を出して荒い息を繰り返す白い猫。

その舌に落ちた血のいくらかは体内へ入っただろう。

俺達が固唾を飲んでその様子に見入った。




 別に白い猫の体は光ったりしなかった。

だが白い猫の粗い息が落ち着いていったのは解った。

衰弱しきった訳ではない。

鼓動を確認したが問題なさそうだった。

訳が解らないながらも安堵の表情になったシンラを見て、あぁ、助かったんだなと思った。

詩織、英二もそうだと思う。

安堵の表情が伝播していった。





「シンラ……ありがとう。俺の弟である英二のお願いを聞いてくれて、猫を助けてくれて本当にありがとう」


「おね、お姉ちゃん!ありがとう!」

「本当にありがとう!私も嬉しい!」


「たぶん、もう大丈夫だと思うんだ。役に立てて良かったよ」



 俺は頭を下げずにはいられなかった。

シンラにとって英二は初めて会う相手だ。

それなのに何かを頑張ってくれたんだろう。

いくら礼を言っても言い足りない。

英二も泣きながらシンラにお礼を言っている。

詩織もだ。

照れくさそうに頭を掻きながら、そっぽ向いて俺達に答えてくれるシンラ。

不器用そうだが、良いヤツだ!

間違いない。

断言できる。




「借りが出来たな。借りは返すよ」


「バカ、仲間だろう?気にすんな」


「そうはいかん!英二の笑顔は安くないんだ!」

「そうだよ!私も借りは返すよ!」


「お、おう」




俺は今回助けてもらった借りを返さねばなるまい。

シンラは俺達を仲間だと言ってくれた。

素直に嬉しい。

だが英二の泣いていた顔を笑顔にしてくれた代償は払わねばいけない。

俺は恩には恩、仇には仇を返す男なんだよ!

詩織も俺と同じ気持ちらしい。

英二は俺達にとって大事な存在だから当然だ!

俺達の勢いに引き気味なシンラだが、決定なのだ!




「お姉ちゃん、ぼくは英二っていうんだ。お名前おしえて?」

「森、森森羅だ。よろしくな英二」

「うん!シンラお姉ちゃん!」


「お、おぉ……」



 英二が地面に膝をついているシンラに近づいて聞いた。

シンラは笑顔で答えた。

それ以上の笑顔になった英二。

シンラがなにやら眩しいものを見た感じになっている。

これはあれだな……英二の可愛らしさにやられたな。

そういやシンラは一人っ子だとも言っていたな。

うん、弟に憧れがあったのやも知れぬ。

破壊力あるからなぁ、英二。

詩織もうんうんと頷いている。

解りあえるものがあるのだろう。




「このままって訳にもいかないな。今日は家で休ませよう。見つからないようにコッソリ行くぞ!」


「やった!」

「いこー!」

「ああ」



 俺は白い猫を家に連れていく事を決めた。

飼う訳じゃないんだ!少しだけ、少しだけだから……。

誰にでもなくそんな言い訳をしていたり。

喜ぶ英二。

元気な詩織。

笑顔なシンラ。


 詩織が優しく白い猫を抱き上げた。

英二にも譲らないとはな……。

俺の両手には俺と詩織の鞄と買い物の袋。

英二はシンラの手を握って一緒に歩きだした。

英二だけでなくシンラも満更ではなさそうな笑顔。



 焦ったけど、素晴らしい結末。

頑張って炊き込みご飯を作りますとも!!



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