↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Counter!!  作者: 大和尚
28/63

2-14

2-14



「織田さん、これから暇?お茶いかない?」

「もー、マナちゃんったら詩織でいいって言ってるのにー。お茶、了解!」

「う、うん。えっと斉藤君も……ね」

「もー、マナちゃんったら一樹で……お供します」

「はい」



 ようやく今日の授業が終わった。

さて帰るべ、と思った所に大友さんからのお誘い。

もちろん詩織をだ。

だが俺も誘ってくれた。

つい調子に乗って大友さんをマナちゃん呼びし、詩織のマネをしようとした。

大友さんの冷たい視線で断念。

俺と詩織、対応に差があり過ぎませんかねぇ……。


 まぁいい。

大友さんからのお誘い。

昨日の会談についてと襲撃の話だろうな。

ちょうどいい。









「ケーキだけじゃなく、プリンも美味しい……前回も思ったけどレベル高い!隠れ名店!?」

「そ、そうなのね」

「マナちゃん、一口食べる?」

「いただこうかしら」

「はい、あーん」

「あ、あーん、あらおいしっ!」



 以前来た喫茶店にお邪魔した。

相変わらず、お客さんはカウンターにお爺さんが一人。

時間帯が同じせいかな?

そんな事を思いつつ席について注文。

バイト代で懐が温かいので、以前よりこういう店を利用できるのは嬉しい。

詩織は紅茶だけでなく焼きプリンとやらも頼んでいた。

大友さんからのお誘い。

どう考えても昨日の話だと思うんだが、詩織はそこには触れずお茶と焼きプリンへと向かった。

そんな詩織の行動に押され気味な大友さん。

詩織のペースだなぁ……。

でも楽しそう!

混ぜてくれないかな……くれませんよね。




「お、いたいた」

「我輩を待たずに食べてしまうとは……」

「ども」


「昨日ぶりー」

「どもー」



 前回と同じ面子が集まった。

コウゾー、ユッキー、吉岡さんも来た。

吉岡さん……ラッキーって心の中で呼んでいたらジッと見られたんだよね……この人もエスパー疑惑あり。

だから吉岡さん。

彼らは隣の席に陣取った。

早速注文。

コウゾー、ケーキ食うんか!甘党?

後の二人はコーヒーだった。





「今日のお昼をもってお互いの組織が提携しました」



 コホンっと咳払いを一つした大友さん。

空気を変えるためだったのだろう。

詩織ワールドだったからな。

そして真面目な顔で真面目な言葉。

大友さんは真面目だねぇ。


 そう、昨日の今日ではあるが、うちと《東洋会》が提携したのだ。

主に情報交換だ。

信頼関係と有用性次第ではそれ以上の提携もあると信兄は言っていた。

だが今はそこまでらしい。

詩織がパチパチと拍手を送っている。

俺もマネしておく。

パチパチ。

あちらでやってくれたのはコウゾーだけ。

あ、つられてかユッキーもやってる。

吉岡さんは薄ら笑顔。




「私達には明確な敵がいますので無理かなと思っていましたが、大丈夫でした。ありがたい事だと私は思っています」



 ロトさんが言っていた大陸の魔法使い、それから関係のあるマフィアかな?明確な敵って。




「世界の事や組織の事、政治的な事は上の方達に任せましょう。私達は現場レベルでの情報交換といきませんか?」


「難しい事は解らないよねー」

「いいんじゃないか?」


「おう」

「よかろう」

「わかった」



 この場の議長である大友さんの意見に詩織、俺も賛成する。

《東洋会》側も賛成のようだ。

つーか、身内で話し合った事ではないんだな。

昨日の今日だから仕方ないか。

俺は自分で疑問に思って自分で納得していたり。




「お互い話せる事、話せない事があると思いますが、気になる事を言い合いましょう」


「さんせー」

「だな。俺も魔法には興味ある」

「ねっ!魔法少女マナちゃんに出来る事を聞きたい!!」


「ぶふぉっ!がはっげへっ」

「クックック……我らの深遠なる記憶に興味があると……」

「コウゾー、汚い」

「だ、だってよぉ、魔法少女ぷぷっ、マナ、ちゃん、ぷぷっ」


「あとで店の裏ね」



 大友さんも聞きたい事があり言いたくない事があるようだ。

詩織がスプーンを持ったまま賛成と言っている。

食べるのは止めないのな。

話を聞いて答えているだけいいか……。

自由人って言葉が思い浮かんだ。

だが俺も賛成だ。

俺が魔法と言うと詩織も乗って来た。

魔法少女マナちゃん!?

それを聞いたコウゾーがコーヒーを吹き出した。

対面にいる吉岡さんに向かったがセーフ。

文句を言う吉岡さん。

かかっていたらそれではすまなかったろう。

命拾いしたなコウゾー。

で、ユッキーは自分の世界に入り込んでいる。

右手で顔を覆いながらブツブツ言っている。

まだ卒業していないのかな?中二病。

コウゾーが言い訳しつつ魔法少女マナちゃんと言う単語でまたも笑う。

冷たい視線を送る大友さん。

店の裏で何をするんでしょうねぇ?

見に行こうかな。

見物料はいくらだろう?




「お、俺は魔力があるが体から出せない。だから身体能力を強化する魔法しか使えない」



 動揺しつつコウゾーが今回の議題に沿った事を言う。

おそらく大友さんを魔法少女マナちゃんの話から逸らせたかったと思われる。

まぁ、すでに呼出しをされているので無駄だとも思われる。

南無。


 魔法。

コウゾーについては、前回口を滑らせていたので出来る事の一つは解っている。

身体強化。

どうやらコウゾーに使える魔法はそれ一つらしい。

なるほど、口火を切るのにちょうどいい人物であるのは間違いない。

言い出した側から情報を出す。

これは正しかろう。

例えこちらも既に知っている情報だといってもだ。




「どの程度の強化になるんだ?」


「そうだなー……オリンピックで入賞を争えるくらいまでいってるだろう」

「おぉっ!」

「凄いねー」


「そうか?ぐふふっ」



 俺はもうちょっと詳しい事が知りたい。

だから程度を聞いた。

コウゾーは少し考え込んで答えてくれた。

ふむ……身体強化の魔法を使うとそこまでいくのか。

今の俺と詩織は素の力でそこまでいっていると思う。

同程度って事か。

ムキムキでガタイの良いコウゾーを強化しているのだから他の人の身体強化なら俺達より下かも知れないな。

身体強化の魔法が使えるのがコウゾーだけとは思えないから、この考察も無駄ではあるまい。

俺と詩織からの驚きに満足げな顔をするコウゾー。

単純か!

解りやすくて嫌いじゃない。




「私は例の魔法(・・・・)が得意です。特に火ですね」


「おぉぉぉっ!ファイアーボールとかかな!?すげぇ!」

「わぁっ!見たい!マナちゃん見たいよー!」


「機会があったらお見せしますわ」



 コウゾーに続いて大友さんも教えてくれた。

例の魔法・・・・ってのは大陸の魔法使い達が狙っているという攻撃魔法の事だろう。

そして火魔法が得意だという大友さん。

見たい見たい!!

俺も詩織も興奮してしまう。

火か!そう言えばアゲハに見てもらった属性……俺はは土だったな。

俺も魔法を使えたら土魔法が得意になるのかな!?

気になる!

土の壁とか!石礫とか!

夢がひろがりんぐ。

俺と詩織からの賞賛と期待に満足げな顔をしている大友さん。

こういう年相応な顔はいいよね。

安心出来る。

知らない世界の人って感じが薄まるからかな。




「それで……織田さんの事を聞きたいのだけど……」



 大友さんが満足げな顔から一転、恐る恐ると言った感じで詩織に聞いてきた。


 あぁ、自分達から情報を出していたけど、本題はこれだな。

学校の屋上事件、会談での襲撃事件、どちらも詩織の力で結末を迎えている。

それだけの力だという事を解っているんだろう。

だが詳細が判らない。

そんな所だろう。

恐怖、それは未知から来るものだと思う。

さっきの安心できる顔って話じゃないが、信頼関係を築く上で放っては置けない部分だと思われる。

大友さん側が歩み寄るためには必須なのだろう。

そう考えると無下にも出来ない。

しかし詩織の力は俺達にとって切り札とも言える。


 俺は事件のたびにそれで助けられている。

俺の力との差に愕然としてしまうが、それが事実だ。

嫉妬?

ああ、俺は嫉妬したよ……力を得る前の話だ。

文武両道な兄妹。

俺も努力をしてなかった訳じゃない。

何もしないでなんでもこなせるなんて思い上がりはしていなかった。

でも差はあったんだよなぁ……生まれ、育ち、そんな言葉が頭に浮かんだ時に愕然としたさ。

俺は何を考えているんだってね。

そんな事を言ったら、あの可愛い英二はいない環境に生まれていたろう。

第一、不自由をしたことなんてない。

上を見ればきりがないし、下を見てもきりがない。

人と比べる事自体に大した意味はないと思った。

それからは結構自然体でいれてると思う。

だからこの力を得た後でも俺は事前に情報を集め、危ない場では詩織を守る。

そう考えられたんだ。


 出来る人が出来る事をやる、それでいいんじゃないか?




「私を起点として周囲の人を眠らせるんだよー」


「あっ!?」



 大友さんの問いに、あっさりと答える詩織。

俺は言っていいのか悪いのか悩んでいたというのにだ!

しかも口調が軽い!軽すぎる!!

俺は詩織を見てしまう。

既に詩織はプリンの最後の一口を楽しんでいた。

ちょっと悲しげな表情になったのは最後になったからだ。

俺には解る。



 大友さん達も詩織を凝視して固まっている。

簡単に答えてもらえるとは思っていなかったのだろう。

今の質問はジャブでユッキーや吉岡さんの情報を求められてから交渉に入るつもりだったのかも知れない。

あぁ、吉岡さんも普通に驚いているな。

薄ら笑顔に笑っていない目、それが両方消えている。

貴重なモノを見た気がする。


 そんな彼らを見て俺は逆に落ち着いた。

俺が何かを言ってこの場が変わるのもつまらないのでコーヒーを飲むことにした。

ふぅ……美味い。

酸味っていうのかな?インスタントにはない味わいだ。

これを趣味にしたら奥が深そう。

確か淹れ方とかもあるんだよね。

俺はコーヒーを楽しみつつ大友さん達の顔を見るのであった。




 ようやく再起動したらしい彼ら。

お互いの顔を見合わせたりしている。

やはり意表をつかれたらしい。




「素直に教えてもらえるとは思ってなかった?」



 俺も思ってなかったが、何となく立場が上になっていそうだったので上から目線で尋ねてみた。

たぶんドヤ顔をしてると思う。

俺がもたらした結果ではないのだが。




「え、えぇ」


「お、おう」

「い、いいのかね?大事な情報だと思うのだが……」

「驚いた」


「あの時、うちのお父さんは反応してたけど気を失ってた。どんな力だったのかと思えば……むぅ」



 大友さんが何とか言葉を絞り出した。

そしてコウゾー、ユッキー、吉岡さんも続いた。

彼らの動揺が伝わってくる。


 大友さんが襲撃事件の最後についてを言葉に出してきた。

詩織の『スリープ』発動にロトさんは反応してたのか。

大友さんも屋上事件の時に兆候を感じたと言っていた。

あ、攻撃魔法とか撃たれていてもおかしくなかった?

うちが公的機関だから止めた?

それとも賊の正体からロトさん側の問題だって解ったから?

ロトさん達から詩織へ向けて攻撃魔法が放たれていた可能性もあったんじゃ……結構危なかったんじゃないだろうか?

状況を思い返して冷や汗をかく俺であった。




「お兄ちゃんと相談してあったんだぁ。聞かれるだろうし、答えてもいいって」


「そうなのか?」

「うん。私は新入りで下っ端(・・・・・・・)だから、それくらい教えてもいいだろうって言ってたよ」

「そ、そっか」


「「「「……」」」」



 詩織は残念そうにスプーンを置いた。

そして俺も知らない相談の話。

新入りで下っ端……新入りなのは間違いない。

だが下っ端と言うには強力すぎる力だと思う。

いや立場でいえばバイトだし間違いないんだけれども……。

俺が疑問符を頭に浮かべていると、黙り込んで何か考え込んでいる者達の顔が目に入った。



 さっきの冷や汗、不安。

俺が感じた不安は相手にとってもあったんじゃないか?

襲撃事件の結末、その時に使った力を伝え、《東洋会》側に危険なモノではなかったと教えたかったのかも知れない。

少なくともロトさん達は誰も抵抗出来ずに寝てしまったからな。

後遺症や、これからも影響する力はないと解ってもらうためだったのかも。

あの時に説明している時間も余裕もなかったし、人質がいたから最善の手だったと俺達には解る。

これで少しでも不安を払拭できるといいな。

未知が恐怖なら教えればいい。

どこまで教えるかってのはあるだろうけども。



 あっ!信兄の狙いが解ったかも!

不安の払拭それだけでなく、牽制と威嚇もかな?

下っ端でもあれだけの結果が出せるんだぞ?

提携しても俺達は下じゃないからな?

舐めた事をするなよ?侮るなよ?

そんな所じゃないかな?



 信兄は《東洋会》と提携し信頼関係を強化したいと思っていても上手く使われるつもりはないという事だろう。

詩織はうちの切り札なんだけど、釣り合っているのか俺には判らない。

まぁ、俺の考える事じゃないか……俺は早々に考えるのを止めた。

大友さん達の様子を見て楽しむだけでいいだろう。



 何だかコーヒーが更に美味しくなった気がした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。