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Counter!!  作者: 大和尚
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2-10


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「さて……頼んでいた物も来た事ですし、お話ししましょうか」



 男性店員さんが運んできた注文の品が置かれ、店員さんが戻った所で大友さんが口を開いた。

いや、それまでも口は開いていたんだが、詩織への相槌だけだった。

詩織、やっぱり強い。

強心臓の持ち主。

それどころか、隣の席の男性陣で詩織のペースに巻き込まれた人までいた!

ガチムチ系、女子になれていないのかも……詩織は更に可愛いからな。




「うん。食べながらでいいんだよね?おいしそー!」

「え、えぇ」

「いただきまーす!」


「じゃ、俺も」



 詩織はそう言いながらフォークを手に取った。

苺のショートケーキが楽しみってのは本気だったらしい。

まぁ、ここにきてずっと演技していた訳じゃない。

俺には解る。

そして大友さんの動揺も解る。

大友さんのお仲間らしき人達が来ても、詩織には何てことないのだ。

怒鳴られた訳でも、殴られた訳でもないからな。

大友さんの友達なんだー、へー、で終わりである。

害がなければ問題ないのだ詩織的には。


 さっそくケーキに取り掛かった詩織に何とか返事をする大友さん。

あれ?おかしい?こんな展開にはならないはず!?

そんな大友さんの心の声が聞こえてくるようだ。

でもあるんだよなぁ……。

俺もブレンドに砂糖少々、ミルク少々を入れて一口。

インスタントと違って美味いな!

でもコンビニコーヒーとの差と言われると断言出来ない。

俺の舌がイマイチなのかコンビニを褒めるべきなのか悩む。

まぁ、美味いでいいか。

バイトのおかげで懐も寒くない。

またここを利用してもいい。そのくらいの美味しさは感じた。




「俺は詩織から話を聞いたから、代わりに話そうか?」



 大友さんが可哀想になったからではない。

俺には時間が大事なのだ。

話を進めたい、そう思ったのだ。

だって英二の腹をすかせたままにはしておけないだろ?

俺は英二のお兄ちゃんだからなっ!!

母親の職場、早く人を増やしてくれないかなぁ……せめて夜勤は終わらせてほしい!

俺も母親の得意な煮物やら焼き魚やらが恋しいのです!

俺よりずっと上手く作ってくれる。

隣のおばさんといい勝負だ。

俺も詩織も幸せ者なり。




「斉藤君!あなたいい人ね!」


「お、おう」



 俺の言葉を聞いてグリンッと顔を俺に向けて言い放つ大友さん。

詩織の無自覚攻撃に、ずいぶんやり込められていたらしい。

思った以上の反応。

可哀想……俺は返事が少し遅れた。




「紹介がまだだったわね」


高橋高蔵(たかはしこうぞう)だ!得意なのは身体強化!!」

「あ、バカ!」

「コウゾー君!」



 大友さんが紅茶を一口飲み、心を落ち着かせたようだ。

気を取り直してすまし顔。

声の調子も戻っている。

落ち着いた声。

そして隣の席を見て紹介がまだだったと言う。

そんな大友さんに促がされるでもなく、口を開いたのはガチムチ系。

スキンヘッドで眉毛が太い、子供が泣いて逃げ出しそうな感じの顔。

年は解り難いが若い気がする。

袖をぶった切ったようなTシャツ、迷彩パンツ、ブーツ、どこかの軍隊にでも所属しているのだろうか?

そんな彼は、得意な事を大きな声で宣言した。

その向いに座っている眼帯君が慌てる。

こっちの席にいる大友さんも慌てた様子。


 あー、魔法使いのお仲間なんだから魔法の話だよね、きっと。

大声で話すような事ではなさそうだ。

その証拠に大友さんや眼帯君はキョロキョロと辺りを見回し様子を見ている。

俺達以外のお客さんはカウンターのお爺さん一人だけ。

ホッとした顔になった大友さん。

詩織だけでなくお仲間にも振り回されるのか……俺は涙を抑えるのに頑張った。

不憫、不憫な美少女がおる。

眼帯君も似たような立ち位置なのかも知れない。

そしてそんな状況なのに黙って笑みを浮かべつつ俺を凝視している男が一人。

目が笑っていない人だった。

怖いです。

ガチムチ君の暴露にも動揺していない。

なりふり構わなそうで怖い。




(公の場で魔法の事を大きな声で話さないでください)

(そうだぜ、コウゾー)


「そうか、すまん」



 大友さんと眼帯君に小声で怒られるガチムチ君。

彼は背筋を伸ばし胸を張っている。

そんな返事も少しだけ声が大きかった。

大きかったと言えば座っていても、彼は俺より頭一つ分は大きい。

歩いて来ていた時も思ったが身長百九十くらいありそう。

さすがに殴り合いが出来そうな相手ではない。

いや今の俺なら何とかなるか?

あ、身体強化が得意って言ってたな!無理かも!!

ってこんなガチムチ系魔法使いがいていいのだろうか?

間違っていると思います!

でも身体強化の魔法かぁ……面白そう。




「失礼、話を先に進めよう。我輩は戸次雪次(べっきゆきつぐ)なり!よろしく頼むのである」


「さっきと口調が違いますが……」

「き、気のせいなり」

「そうですか」



 髑髏付き眼帯を左目に付けた青年が失礼だの我輩だの言って来た。

良い歳だろうに拗らせてそう。

ガチムチ君も職質されそうな恰好だったし眼帯君もそうだ。

眼帯だけでなく、全身に黒衣を纏い、銀のアクセをジャラつかせている。

指ぬきグローブまでっ!

ここには一緒に来てたし注目を浴びてただろうなぁ……魔法使いはそうじゃなきゃいけないのだろうか?

そんな事を思ったり。

素直な疑問、口調の違いを言ってみた。

気のせいらしい。

ま、どうでもいいんだけどね。


 眼帯君は青味がかった黒髪を綺麗に撫でつけた髪型。

割とイケメンだし黒衣と銀のアクセを止めればモテそう。

いや、今でもモテているかも知れんが……世界は広いし。

ぶっちゃけコスプレだな、これ。

コスプレをやめれば好青年で通る人だと思います。


 俺、思った、魔法使い、癖強い。




「自分は吉岡(よしおか)です」


「ラッキーだろ?」

「あ、コウゾー!?」

「ん?」


「コウゾー、俺の名前に触れるなって言ったよな?もう忘れたのか?今度は体に教えてやろう」

「す、すまん」


「吉岡さん、ここは抑えてくださいな……」


「……ああ」



 ガチムチ君、眼帯君と一緒にいると存在が隠れそうな男も名乗ってくれた。

とても普通っぽい男、吉岡さん。

彼もたぶん若い。

ブランドのポロシャツにチノパン、ローファーが似合っている。

中肉中背で顔も普通。

だが目だけが変だ。

変と言っても魔眼だとか言うつもりはない。

薄っすら笑顔の中に射竦めるような目。

笑顔は表面だけだと解る。

彼も相手がそうだと解っていてもやっていそう。

やっぱり怖い。


 そんな彼の自己紹介にツッコんだのはガチムチ君。

ラッキー?何がラッキーなのか?

でもガチムチ君は俺に向かってはいない。

俺に言った訳ではなさそう。

じゃあ何がラッキー?

また眼帯君が慌てた。

なんか色々解らない。

そう思っていたら吉岡さんがとても低い声でガチムチ君へ告げた。

ラッキーは名前のようであった……林さんと同類だったらしい。

吉岡さんの怖い目が更に怖くなっている。

俺は触れないでおこうと心に決めた。


 あ、詩織が苺を食べて幸せそう。

俺もそっちに行きたいです。

吉岡さんの言葉を聞いて身長も横幅も圧倒的に上なガチムチ君が謝った。

明らかにびびっている。

体格だけでは何ともならない力の差があるのかも知れない。

吉岡さんが次の言葉を出す前に大友さんが止めた。

あっさり引く吉岡さん。

そう言えば吉岡さんだけ、さん付けで覚えちゃったな。

危機管理能力か?これ。




「私のクラスメイトの織田詩織さんと斉藤一樹さんです」

「ども」

「大友さんのお友達さん、よろしくねー」


「ああ」

「うむ」

「よろしく」



 最後に大友さんが俺と詩織を紹介してくれた。

吉岡さんの豹変っぷりを引きずっている俺は一言返すだけで精一杯だった。

詩織はフォークを持ったまま軽い挨拶。

大物だ。




「それでは本題にはいりましょうか」



 大友さんは何やら疲れているご様子。

心労だろうか?

自分を労わっていただきたいものである。




「私は織田さんをうち(・・)に勧誘しました。報告したように彼女は私達(・・)と同類です」



 大友さんが議長を務めるようだ。

大友さんはみんなの反応を見ながらゆっくりと話し出した。

まず説明か。

やはり彼らも大友さんの所属している先の人達らしい。

そして同類、魔法使いだろうと解る。

固有名詞を出さない辺りに組織がどういうモノなのか推測できた。

秘密結社とかそんなんだろう。




「直接魔法を見た訳ではありませんが兆候は感じましたし、その結果らしきものも目撃しました」

「魔力か」

「倒れてたそうだな」

「ええ。犯罪者だという人と斉藤君が倒れている中、織田さんだけが立ってました」


「俺も最後に大友さんを見た気がしてたよ」

「はい。私も目があった気がしましたよ」

「運命かな?」

「違うんじゃないですかね?」



 大友さんが詩織を同類だと判断した理由を説明する。

ガチムチ君、眼帯君がそれに反応した。

吉岡さんは黙って聞いている。

表には出ないでジッと観察、そんな感じの吉岡さん。

大友さんを見たと俺が言うと大友さんも気づいていたと答えてくれる。

しかし運命ではなかった模様。

うっ、詩織、なんで肘打ち?ケーキのお代わりか?食いしん坊め。




「織田さんが斉藤君に話をしていたとは思ってませんでした。織田さんの勧誘だけでなく斉藤君をこのまま返す訳にはいかなくなりました」

「えっと脅迫?」

「人聞きの悪い事を言わないでください。力を見せつけるだけです」

「やっぱり脅迫だ」

「ね」



 ケーキで忙しい詩織に変わって俺が話をするといった時には喜んでくれたのに……。

冷静になっちゃったんだな。

俺をこのまま家には返せないらしい。

ガチムチ君と眼帯君の目も鋭くなった。

もう一人は言わずもがな。

俺が素直な感想を漏らすと大友さんが言い返してきた。

やっぱり脅迫でした。

詩織も頷いている。

あ、詩織、話を聞いてたんだね!


 脅迫まがいの言葉を聞いても俺は動じていない。

信兄の所に所属しているというのもあるが、最悪の事態でも詩織の力で何とかなるだろうとの判断だ。

それくらい詩織の力は強い。

俺のとは違って……。




「魔力、魔法、魔法使い。この辺りの事を知ったからか?」

「そう……やはりそこまで聞いていたのね」

「ああ。でも異能の力に付いては今回が初めての話じゃないぞ?」


「えっ?あぁ、織田さんがいるものね」

「違う。この世界には呪術師とかがいるって話さ」

「うっ」



 俺は家に帰せないという理由について言及する。

それを聞いた大友さんは、本当に俺が詩織から話を聞いていると確信したようだった。

もっとも、俺は校舎の陰から大友さんの言葉を聞いたんだけどな。

詩織は黒猫に夢中だったし。

そこで俺は返せないという理由にはならない事を証明してみる。

異能の力に付いて話す。

既に知っていたと。

大友さんは俺から詩織へ視線を移した。

違う、そうじゃない。

俺は最近知った呪術師の顔を思い出す。

チャラ男。

俺が呪術師と言ったら大友さんは反応した。

どうやら大友さんも呪術師の存在を知っているようだと解った。

意外と繋がりがあるのやも?




「その反応だと呪術師の存在も知っているみたいだね。だから魔法使いって言われても、あーいるんだ魔法見たいなーくらいにしか思ってないぞ?」



 と俺は言ったけど、実際は興味深々である。

魔法で何が出来るのか?

対価は要るのか?

もしかしたら異世界に行く扉を開いたりっ!?

なんて信兄と盛り上がったのだから。

でも、わざと淡々とした口調で話した。

そんなん当然だろーみたいな雰囲気を醸し出してみた。




「ええ……私達も呪術師の事は知っています。意外でした。ただの高校生だと思っていたのに……」

「ホント、ただの高校生だよな」

「まったくだ。もうちょっと個性を出せないものかね?」

「お前らの恰好がおかしいんだよ……」


「俺もそう思います」

「私もー!」



 大友さんは俺が呪術師の事を知っていたのに驚いている。

ちょっと前までは、ただの高校生だったんだけどなー!

ガチムチ君、眼帯君が俺を見て貶してくる。

絶対に褒めてはいない。

しかし思わぬ援軍が!

吉岡さんがガチムチ君と眼帯君にツッコんでくれた。

吉岡さん、ツッコミも出来るんだね!

俺も吉岡さんに同意しておく。

詩織もそう思っていたようだ。

賛成多数。

可決されました。




「家に帰れないのは困るので、ぶっちゃけようか」

「はい?」


「俺と詩織は既に公的で霊的な機関に所属している。名前は出させないでくれ」

「えっ!?」

「公的!?」

「霊的!?」

「ほぅ……」



 俺は野郎どもに群がられても困るので、ここで話を終わらせるつもりで言った。

俺と詩織は既にその手の機関に所属していると。

驚く大友さん。

ガチムチ君、眼帯君も驚いている。

吉岡さんだけは興味ありげな目で俺達を見て来た。

ちょっとだけ怖くない目だった。

いつもそういう目でいてください。

お願いしまっす!





 それからはお互いの事を深く聞かずに探りを入れるように話した。

協定を結ばないか?とも提案されたが、上に相談してみると言って保留にした。

公的機関っていうのが効いたのかも知れない。

少なくとも脅迫って態度ではなくなっていた。

お互いの連絡先を登録。

繋がりは残す。


 そして……大友さんの連絡先ゲットだぜ!!

色々と残念な所を見てしまったが美少女ってのは否定できない。

俺のスマホ、連絡がほとんど埋まってないせいではない。

ええ、絶対ですとも!


 俺が神経を尖らせて対応している間に詩織は二つ目のケーキに向かっていた。

モンブラン。

ニコニコしながら嬉しそうにフォークを口に運ぶ詩織。

詩織には勝てない。

俺は心からそう思った。

危機感がない訳じゃない。

カンも鋭い詩織。

だが俺が何とかすると信じてくれている。

いつも元気で俺より社交的な詩織が出張ってこない時はそういう時なのだ。

お互い力を得た今となっては尚更なのだろう。


 この信頼を守りたい。

俺は強く誓うのであった。


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