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「黒猫?可愛い?クラスメイト?美少女?魔法使い?魔女?《東洋会》?ちょっ、ちょっと待て!」
俺、詩織、英二でカレーを食べてお茶を飲んでいた所に信兄が帰宅したというので織田さんちに来た。
そして今日、学校であった事を話した。
そう、詩織を魔法使いの組織に勧誘して来た大友さんの話だ。
ビールを片手に和んでいた信兄が慌てだした。
こういう信兄は珍しい。
いつもクールに流すからな。
それだけ俺が話した事が衝撃だったのかも知れない。
魔法、魔法使い、魔女、どれをとっても興味がそそられるだろう。
俺だってそうだ。
でも、一気に情報を渡しすぎたかな?
まぁ、信兄だしいいか。
「あー、つまりこの世界には魔法使いがいてフソウにもいると言う事なんだな?」
「聞いた話だと、そうだね」
「へー」
「へーって……やっぱり話を聞いてなかったんだな、詩織」
「だって……黒猫可愛かったんだもの」
「それは認めるけども」
「ねーっ!また会えるかなぁ……」
「しおちゃん、ぼくも黒猫さんに会いたい!」
「今度お願いしてみるね!」
「うん!」
「あらあら、えーちゃん良かったわねぇ」
「うん!!」
やはり信兄に心配はいらなかった。
情報整理早すぎ。
単純に要らない情報を除外しただけか?
黒猫、可愛い、美少女、この辺りは、どうでもいいっちゃどうでもいいもんな。
俺達には大事な所なんだけれども。
俺、美少女、詩織、可愛い黒猫、やっぱり大事。
俺は大友さんの話を聞いただけ。
実際に魔法を使ったのを見た訳ではない。
だから正直に聞いた話だと信兄に伝えた。
それと同時に詩織が信兄のまとめた話に感心している。
って、お前は当事者だったろうが!?
そこにツッコむと詩織は言い訳をする。
黒猫も可愛かった。
俺も、つい認めちゃった。
詩織は黒猫と触れ合った時間を思い出したのか、視線を上に向けて目を細めている。
そしてまた会いたいと漏らしていたり。
詩織はしっかり者なんだけど、小動物関係でたまにポンコツになる。
でも隙のない完璧超人よりいいよな!
人間らしい温かみを感じられると言うかさ?大事だと思います。
ハブにしていなかった英二も話を聞いていた。
だが魔法使いの事ではなく、黒猫に喰い付いている。
詩織と英二が黒猫に会う話で盛り上がる。
おばさんも嬉しそうな英二を見て微笑んでいる。
あ、信兄が無表情になってる。
話が逸れたからだな。
そして嬉しそうな詩織の手前怒れない、そんな感じだ。
シスコン乙。
ビールを持っていたのを思い出したのか、口元へ持って行った信兄。
呑んで落ち着いてください。
お酒と言えば、織田さんちのおじさんは呑み会だとかで遅くなるらしく、ここにはいない。
社会人は大変だねぇ。
でも、おじさんはお酒が好きらしいから喜んでいるのかな。
家だと思いっきりは呑ませてもらってないようだし。
おばさんが若くないんだから節制しなさいと言ってるとか。
やっぱり大人は大変だ。
「カズ、その子は魔法使いの組織に所属しているんだな?」
信兄は詩織達を放置することにしたのか、俺を名指しで話しかけて来た。
詩織達はワー、キャー言ってるから仕方あるまい。
「フソウ最強の集団って言ってたかな?《東洋会》って組織らしい」
「ふむ……陰陽師や呪術師の組織はいくつか聞いているが、魔法使いってのは初耳だな」
「そうなの?」
「ああ。それでカズは魔法がどんなものか見たか?」
「うんにゃ、見たかったけどそう言う話にはならなかった。でも学校の屋上で詩織が使った『スリープ』、その発動前に魔力?魔法?の兆候を掴んで来たって言ってた」
「ああ、あの子か……あの子が魔法使いと名乗ったのか」
「そっか、信兄も屋上で会ったのか」
「おう。チラッと見ただけだけどな。浅井さんは話を聞いていたがね」
「おー」
俺は大友さんの話を思い出しながら信兄に答える。
信兄も魔法使いの存在を認識していなかった。
信兄は大事なことだといった感じで魔法を見たのかと聞いてくる。
信兄、そういうの大好きだもんな。
魔法を使いたいんだろう。
解る。
まぁ、俺も見ていないんだけどね。
やはり大友さんからの話をする。
詩織が使った『スリープ』を大友さんが魔法扱いしていた事。
魔力、魔法の兆候を掴んで大友さんが屋上へ来た事。
信兄も大友さんらしき女子を見たようだ。
大友さんは逃げたりしなかったんだな……疚しい事がないから当然っちゃ、当然か。
しかも魔力、魔法関連を目の前にしたら去る訳にもいかなかったんだろう。
「しかし……詩織の『スリープ』は魔法なのか?」
「大友さんはそうだと思っていたみたい。俺、思ったんだけどさ、霊力も、呪力も、魔力も全部同じ力なんじゃないかな?」
「……アゲハとタイヘーも霊力と呪力については自分達で使ってる力だとしか認識していなかったな」
「みんな自分以外の力について知らないんじゃないかな?呼び方が違うだけで同じ力だと思った」
「あり得るな。みな自分達の力を公にしていない。うちは色々な者達を集めているから同じモノか違うモノか判断出来るかも知れん」
「うん。俺は『カウンター』を使うのに特別な力を使っているつもりはないよ。霊力とかさ」
「ふーむ……力を使っても対価を払っている感じじゃないんだよな?」
「デメリットらしきものはないね。少なくとも自分で解る範囲ではない」
「そうか。この手の力は特殊だ。だがお前と詩織は特におかしい入手法だしな」
「まぁね」
俺と詩織の力は魔法なのだろうか?
魔法というからには魔力を使うんだろうけど、その手のモノが体から減った気がしないんだよなぁ……。
大友さんが勘違いをしている可能性も捨てきれない。
霊力、呪力、魔力……同じ力だと俺は感じている。
日常から離れた世界、俺は知らない事が多すぎる。
だが全てを知っている者もいなそうだ。
信兄の言葉からすると、力を持つ者達は同じ力で集団を築いているっぽい。
そもそも他の力を知らない可能性だってありそうだ。
面白そうだが怖くもある。
人間は未知のモノを恐れ、違う事をやりたがらない。
誰かが言っていた言葉が思い出される。
この場合は未知のモノを恐れるだな。
何ができるか解らない怖さ。
だが、それに立ち向かうために信兄の組織は作られた。
俺もその一員、知らない解らないだけでは済まない。
一歩ずつ解き明かして見せる!
俺にはそれが出来そうな力があるのだから。
「フソウ最強ね……世界各地にもありそうだな」
「あー、フソウって限定した良い方だもんね。確かにそうだ」
「おう。しかも世界には、その《東洋会》より強い者達がいるともとれる」
「うん」
「俺としては放っておけない話だな」
「特殊対応だもんね」
「そういう事だ。カズ、その大友さんの事を色々調べてくれ。やり方は任せる」
「俺の力が役に立つね!まかせんしゃい!!」
「俺の方も魔法の事や《東洋会》ってのを調べてみるつもりだ」
「了解!」
信兄がフソウ最強って言葉から推察する。
確かにそうだ。
最強ってなら世界最強を名乗るはず。
この国限定って事だ。
なるほどなぁ……言葉一つでも読み取れるものはあるんだね。
そして信兄は魔法、魔法使いの組織を放っておけないと言っている。
それはそうだ、信兄そして俺達が所属しているのは、そういう力に対応するための所だもの。
信兄は俺に大友さんを調べろと依頼して来た。
『カウンター』の出番って訳だ!
人に期待されるってのは悪い気分じゃない。
まったくもって悪くない。
信兄は信兄で魔法関連の事を調べると言っている。
そういう事を聞ける伝手もありそうだ。
頼もしいね!
俺と信兄は魔法に関して調査することを決めたのだった。
未だ黒猫の話題で盛り上がっている詩織、英二、おばさんを横目で見ながら……。




