第10章1話
ルーズルート侍従長が伍長のもとへフェルトさんの事故と失踪事件を伝える数時間前。
フォールドグラード刑務所のあるフェルトグラード州マチェルシェカという小さな田舎町に2両の次世代型主力戦車と5両の行軍用装甲車MF11がこの小さな田舎町の町議会堂に集結していた。
フォールドグラード刑務所があるフェルトグラード州は、首都の丁度真反対に位置する人口1200万人を有し、首都とは時差や昼夜の逆転がある州である。
大きさはおよそインドぐらいの大きさで、州面積では第4位に入る。
そしてこの州一番の特徴が、凶悪犯罪者が主に収監される最高レベルの刑務所、フォールドグラード刑務所があるということだろう。
このフォールドグラード刑務所には、国家転覆罪・国家反逆罪・国家元首暗殺罪・銃殺人罪(大量殺人罪)・強盗強姦罪・連続殺人罪・連続強盗殺人罪・強盗放火罪・放火罪などといった10つの犯罪を犯した受刑者や死刑囚が収監されており、その周囲は軍隊が攻めてきても防衛できるように、トーチカや戦車止め、砲台、重機関銃銃眼など要塞刑務所となっている。
しかし、この要塞刑務所と呼ばれているここで、数日前前代未聞の殺人事件が発生した。
被害者の名前は囚人番号0009……9人目の死刑囚を示すこの番号を与えられた男が独房内で無残な姿で点呼中の看守によって発見された。
心臓は何者かに抜き取られており、目は真っ赤に染まっている姿で発見されたのだ。
明らかな異常な遺体に重犯罪者が殺害されたとなれば刑務所の上層部は彼を逮捕した機関である公安警察庁警備部第2課に通報した。
だが、この時警備部第2課は諜報員関係の仕事が山済みで、到底捜査に回せられる捜査員がおらず、そのまま丸投げされる形で連邦捜査庁特殊諜報捜査局に捜査権が回ってきた。
そして局長であるルーズルートの命令で飛行機で40分、そこから護衛を付けてこの町の町議会堂にやってきたのだ。
その停車していった装甲車から数十人の男女が下りてくる。先頭車両から最後に降りてきたのはA班班長代行のシェリアさんが、2両目の車両から最後に降りてきたのはB班班長のヨシフおじいちゃん、3両目の車両から最後に降りてきたのはC班班長の首相、4両目から最後に降りてきたのはD班(その他雑用、外事・防諜・潜入活動)の30代の男性、そして5両目からは特殊諜報捜査局の局長である、ルーズルート侍従長が降りてきた。
各班できれいに整列しなおすと、班長は担当の班の先頭に立ち、捜査指揮官であるルーズルートに一礼をしてから全員直立不動になる。
一見すれば特殊部隊のような異様な光景にもとられるのだが、班ごとに整列は小学校でも習うことだし、目上の人や年上の人に敬意を表して一礼することは何もおかしくはない。
さらに一礼は班全員がそろっているという合図でもあったりする。
「えー、これよりフォールドグラード刑務所怪死事件の捜査活動に入ります。
長期戦になる恐れがありますが、地元の方々が町議会堂を快く貸し出してくださりました。特別捜査本部は第1会議室に設置します。
宿泊は班ごとの男女別、A班男性は第1控室、女性は第2控室、B班男性は第3控室、女性は第4控室、C班男性は第1仮眠室、女性は第2仮眠室、D班男性は第3仮眠室、女性は第4仮眠室です。
捜査担当班ですが、A班は私と一緒に現場検証、刑務所内の検証。B班は刑務所周辺の不審者聞き込み捜査、防犯カメラの解析。C班は寄せられる証言などを集め整理し、第1会議室で司令塔の役割。D班は証拠品、押収品、現場にあった品の解析作業をあたってもらいます。
えーでは、各自荷物整理後各自や班長の指示で動いてください。
A班は|一二〇〇《ヒト フタ マル マル》にここに集合してください。
以上です」
「では、各自解散!」
局長補佐の男性が解散命令を出すと、各班班長の指示を従いながら町議会堂へと入っていった。
なお、快く貸し出してくれたのは本当のことで、別に国家からの圧力がかかったとか、脅迫して貸してもらったとかそれはない……はず……。
と、護衛として空港から同じ速度でついてきていた戦車分隊の分隊長の男が、ルーズルートにおずおずと尋ねる。
「あのぉ、我々はどうすればいいでしょうか? 駐屯地からは護衛をして腰としか言われていないもので……」
「あー……そうですね……。一つ用意してほしい車があるのですが……」
「車ですか? どんなものがよろしいのでしょうか?」
「MF三輪駆動サイドカー……ほら、1980年製の軍事用サイドカーですよ」
車の車名を聞いた途端、分隊長の表情は苦笑いを浮かべた。
「あー、あれですか……。うちの駐屯地で珍兵器認定された……」
「ん? 珍兵器認定? 珍しいですね、あれ1980年製の兵器ならばまともなものだと思ったのですが……」
ルーズルートの言葉が確かなら、1980年、丁度地球ではスペースシャトルの打ち上げだったり、チェルノブイリ原発事故だったり、昭和から平成になったり、東欧革命がおこったり、冷戦の終結だったり時代の変化が多かった時代だが、ス連邦の軍事業界では、珍兵器の大量開発、製造がおこなわれていた。
本編には影響がないので、何兵器か紹介させてもらうが、
陸軍で1980年代に試作された珍兵器で有名なのは、皇宮財閥傘下の企業が開発した”ロケット戦車砲”……。これは対戦車砲の移動がめんどくさいということから、野砲の移動にロケットブーストを使ったものである。もちろん採用されていない。何せ、バランスを崩してひっくり返ったら誤射してしまい、フレンドリーファイアする恐れがあるからとか……。
空軍で1980年代に試作された珍兵器は、”空飛ぶ要塞”……。ある島にあった要塞を島ごと空中に浮かせようとしたものだ。
こちらは予算オーバーで計画は破綻。
今回は2つだけだが。この国、結構たくさんの珍兵器を作っている。
……でも、それを言うなら、新世代型主力戦車も永久機関動力も珍兵器じゃね!?
「いやですね、あのサイドカー確かに1970年代型ならオフロードでも対応できるからありがたかったんですけどね、反重力でしょ? 使いにくくってありゃしないんですよ」
「ああ、なるほど……」
つまり反重力エンジンのせいでオフロードでは動きずらいし、岩や急な坂に対応できないし、タイヤではなく空中に浮くパターンだから重いものは乗せられないし……。
つまり軍用車両にもかかわらず、オフロードではまともに扱えないクソ兵器だということだ。
誰だ、オフロードは使えないバイクを開発した野郎は!
「というわけで、1970年代型しかありませんが、よろしいですか?」
「ええ、もうそれでいいです」
オフロードで使えないなら仕方がない。
ルーズルートは渋々あきらめた。
今朝お茶を飲もうと思ったら、7時58分ごろでしたかね? 家が縦に激しく揺れたんですよ。
もう、びっくりして……。
作者さんの家は、近畿地方にあるのですが、すごい揺れましたよ……。怖かった……。
読者の皆様は、大丈夫でしょうか?
というわけで、生存確認でした。




