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Manipulated Intelligence Agent ~皇帝によって操られた諜報員たち……~  作者: 11月 ミツシ
第9章、【アドルフ・アルベルトは諜報員だった?】
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第9章9話

 伍長さんがモルズヴドグの諜報員の家を家宅捜索していた丁度その頃。

 皇居特別区、皇居宮殿大天皇帝執務室にて、諜報員摘発会議(仮)から帰宅そうそう執務中のフェルトさんのもとに一通の報告書が国務省出向員(皇宮省から)の手によって届けられてきた。

 枚数からして10枚ほど、その一つ一つ目を通していくフェルトさん。

 よっぽど機密性が高いのか、国家最重要機密文章と赤いハンコが押されているほどだ。

 フェルトさんはその機密文章を最後まで目を通したが、段々と表情が険しくなってきた。


「……。……やはり行政も立法も司法すべて稼働していない……無政府状態ということなのです?」

「はい。国務省で特別特務特使を務めている朝比奈氏からの情報ですので、間違いはないと思われます。ヴォルデシア共和国内では無政府状態が今も続いている状況ですが、国内の治安、経済、産業共に安定している状況です。

 ただ……」

「ただ?」

「軍事が異常ともいえます。急激な軍備増強が確認されたそうです。」

「では、核兵器は?」

「核兵器は現在フェルトワン巡航監視衛星が光速で監視中ですが、実験やプルトニウムや摘出した後はありません。ですが、ウランのほうは地表深くに隠されている場合は発見不可能です」

「そう、ですか……。」

「……まるで、レッドヴェーレルリクトル連合共和国を思い出しますね」

「……いやなこと思い出させないでよ……」


 フェルトさんの表情がしかめっ面になった。

 いや、無理もないだろう。レッドヴェーレルリクトル連合共和国事件、通称赤い連合国家事件はス連国民にとってはどうでもよかった、なんともなかった事件なのだが、ス連や惑統連にとっては面子の丸つぶれ、最初で最後の失敗外交といわれているからだ。

 どんな事件か?

 それは、少しばかり昔話に付き合ったもらいたい。


・・・・・・・・・・・


 昔々……といっても丁度先代大天皇帝陛下が病気で療養のため退位した数日後のことであった。

 先代とフェルトさんの即位までは、政治的な理由から1か月ほど空白があることを大前提として話をさせていただこう。

 

 フェルトワンという銀河系は、超科学技術によって進歩した宇宙船や各種兵器、そして巡航監視衛星といったものの発展とと開発の歴史である。

 そして云千万年前……詳しくは書かれていないのだが、現在のス連邦本星とシベリア連邦本星が連合国家を形成した。

 それが、ク連。

 ク連は経済力と資源を盾にし、フェルトワンのほぼ全土を征服した。

 

 だが、革命によって植民地や領土は大小惑星構わず独立していき、今の世界体制が作られた。

 しかし、フェルトワンは巨大だ。

 それだけに、ス連邦も未だに国交どころか存在が分かっていない惑星国家、星間国家が存在する。

 

 レッドヴェーレルリクトル連合共和国もその一つだった。

 連合共和国はス連邦からみて極北に位置する主権国家群が集まり一つの国家を作った連合国家である。

 だが、列強各国どころか一番近い惑星国家ですらその存在を気が付くことが出来なかった。

 

 そんな彼らとの初接触は、今から10年ほど前。先代大天皇帝が病気を発症の疑いが出てきた時期であった。

 近くを航行中のス連邦の監視衛星が、何者かによって破壊されたのだ。

 ス連邦宇宙航空軍は直ちに調査委員会を立ち上げ、現地に武装艦隊と共に調査へ向かった時に、連合共和国の存在が確認された。

 調査委員会は政府の命令で、臨時の全権委任大使となり、連合共和国へ接近し、難航になりかけていた交渉を終え、レス基本相互友好条約を結んだ。

 

 しかし、数年前、政変が起こった。

 この国は、ス連邦などの列強国からの技術提供や経済協力を受けていたが、ある国家で発生した株価の大暴落を筆頭に世界的な大恐慌を引き起こしてしまった。 

 ス連など諸外国は連合共和国の大恐慌が飛び火してくるのを恐れて、多大な経済援助を行っていたが、事態は一向に良くはならなかった。

 そんなとき、連合政府の体制が民主主義体制からある男のカリスマ的指導力と演説力で国家社会主義体制へと移行した。

 その男は演説で、大恐慌の原因と、打開策をこう述べた。


「この連合共和国で起こり惑星内を不幸のどん底に陥れた世界大恐慌、諸外国は援助しているが、一向に良くはならなくなった。

 なぜか!?

 それは、我が連合を構成する国家政府の上層部が横領しているからである!

 国民は大恐慌の影響下に当たり上流階級は得しか生まれない。

 それが今、我が連合国の実態なのだ!


 連合共和国の民主主義政治の腐敗が徐になった時だ!

 各国政府は、やるやるとしか言わず、何も、一切何もしようとはしない。それどころか、彼らの金回りは日々日々よくなっているだけではないか!」

 

 そう力ずよく演説したという。

 この演説により、各国には連合政府の秘密警察が捜査に入り、権力が事実上の連合政府に集まったのだ。そして、彼は各国政府が崩壊したらこうも述べた。


「我が国家は、かつて大帝国を築いていた。だがク連という悪魔がやってきて帝国は崩壊、更に植民地もク連崩壊とともに独立していった。

 我が国家さらに周辺諸国からの圧力があり我が惑星内の国家は列強各国の影響下にあった。


 だが、そんな列強各国の力は今衰退の危機にある。

 ス連邦の皇帝が病気の疑いによって退位することが決まった。そして、今こそ、我が帝国を復活するときである!」


 確かにク連ができる前まで極北には大帝国というまでではないが、帝国があったのは間違いない。

 そして、帝国復活のために軍備再強化計画が発動した。

 だが、列強諸国はこの件を一切知ることが出来なかった。

 ス連邦は国内のごたごたによって他国へ諜報員を送る余裕もなく、惑統連監視委員会は巡航監視衛星がことごとく落とされて状況把握が困難になり、周辺諸国は諜報員を送る過程で追放されるか、乗っている船が撃沈させるなど、内部の状況を伝える人間がいなくなった。

 

 そして、この異常事態を察知したのは、連合共和国が隣の惑星国家に宣戦布告した時であった。

 さらに不運は続く。

 この国家はヴェルト州惑星連合王国に独立保障+安全保障条約を相互で結んでいたのだ。

 そのため、同盟国でもあるこの惑星国家の安全を守るために、連合共和国に宣戦布告、連鎖的にヴェルト州惑星連合王国の同盟国であったス連邦が宣戦布告した。

 惑統連では、連合共和国に近い惑星国家群に独立保障と安全保障を約束し、各国から軍が派遣された。

 だが、連合共和国は強かった。

 急激な軍備増強にもかかわらず、新戦術によってス連邦他多国籍軍を次々と打ち破り、瞬く間に周辺諸国を占領した。

 多国籍軍はダウンケンベルク、略してダンケルクに追い詰められ、決死の作戦によって脱出し、本国へと帰還していった。


 だが、事態は深刻さを深めていく。

 連合共和国は未だに進撃を続けており、このままではフェルトワン極北が落ちてしまう。

 そして惑統連安保理評常任国会議にて、緊急採決が行われ……


 新型爆弾の投下が可決された。

 この新型爆弾、一言でいうと核爆発の間接効果の一つである電磁パルスをあたりにまき散らし、電子機器やインフラを破壊する目的で作られた爆弾である。

 一見何ともなさげな兵器に見えて、実は意外と質の悪い兵器である。

 なにせ、爆発地点に電線やケーブルがあればそれを伝って防御されていない電子機器を破壊するわ、爆心地からは鳴れば場所でも被害は浮けるわ、発展した文明が下手すれば崩壊するなど、ろくにいいことがなかった。というか戦略兵器自体ろくなものがないと思う。

 

 その新型爆弾を搭載した人工衛星が連合共和国の上空を通り過ぎ、そして、一発の新型爆弾を投下した。


 それは、一直線に首都中心部の流れる運河の巨大な橋の上空で爆発し、

 

 連合共和国は電磁パルスによって使用不能となったコンピューター機器や有線信号から前線に指令を送ることが出来ず、無条件全面降伏をした。

 

 だが、悲劇は終わらない。

 何故、国家体制の変化や急激な軍備増強を把握できなかったのか、電磁パルス爆弾でその惑星国家の文明が滅びるのか、などといった声が世界各国から聞こえだし、

 最終的に、


 連合共和国は文明と共に崩壊、首相以下内閣閣僚は全員逮捕、極刑が言い渡され。

 当事国であり新型爆弾開発国であるス連邦は、当時の内閣の総辞職。

 惑統連は、内閣の総辞職、監視委員会の委員長の更迭。

 ヴェルト州惑星連合王国は、国王が罷免され、新国王(現在の女王陛下)が即位。

 列強各国では国防大臣や防衛大臣と言った軍のトップが、兵士を無謀な計画によって死なせたとして、更迭、降格。

 

 死者、両軍の正規兵……120万人

 負傷者、両軍合わせて不明

 

 という大損害を被った。

 事件というより戦争。

 それが数年前にフェルトワンで起こっていたのだ。


 その後、今回の戦争を理由に連合共和国は解体され、列強各国の影響下の都市国家が誕生した。

 その数は190以上にもおよび、今現在も都市国家同士で戦争が起こっている。


・・・・・・・・・・


「ははは、すみません。……確かにあれは嫌な事でしたね」


 話は戻り執務室。

 国務省の出向員は嫌な質問をしたことに対し謝罪をする。


「いえ、大丈夫ですよ……。……ですが、もし仮にあの時の事件がヴォルデシア共和国との間で起こったりしたら……」

「……確かに、無いとは言い切れません」


 フェルトさんたちが、先の事件のことを思い出したのには訳がある。

 それが、今回のヴォルデシア共和国が連合共和国の二の舞になることを恐れているからだ。

 先の事件・戦争では新型爆弾である電磁パルス爆弾の投下によって、戦況が一変したのだが、電磁パルス爆弾の対処方法が各国でとられ始めてきた。

 ス連邦は国家の重要コンピューターを複雑化かつ暗号化と遮断プログラムを施し、ハッキングも電磁パルスの影響も事実上なくなった。

 なので、政府コンピューターが生きている限り、政府能力がかろうじて残った状況では戦況は動かない。

 さらに、核爆弾同様、惑統連連盟憲章と軍縮条約によって電磁パルス爆弾の開発製造が禁止され、秘密裏に製造すれば無条件で多国籍軍が進行してくるというおまけ付きでもある。

 

 と、出向員の男はチラッと天井にかかってある時計を見て叫んだ。


「……って、あ! 陛下、お時間大丈夫なのですか? 先ほど3時から総理官邸で内閣閣議に向かわれるとおっしゃってましたが……今2時45分ですよ?」

「えっ! ああ!」


 慌てて、執務机の上に置かれているス連邦のマスコットキャラクターの”すっぽう巻きくん”のデジタル時計を見るフェルトさん。

 そして、その顔は徐々に真っ青になっていく。

 ちなみにすっぽう巻きくんが、巻き寿司のような外見をしている政府公認のマスコットキャラクターである。

 巻き寿司に顔が付いたような見た目であり、若年層……特に小さい子供からは、何か恐ろしいものを見たような顔をされたり、泣きだされたり散々ではあるが、高齢層からは意外と好評だったりする。

 なお、すっぽう巻きくんの中身については政府は非公式の立場を取っており、国民の間では中身が刺身なのか玉子と言ったサラダなのか様々な意見が交わされていたりする。


「やばいです! 早く支度しないと、メイド長に叱られる!」


 慌ただしく書類と言った荷物お気に入りの鞄にしまい込み、軍服を軽く整えて軍帽とマントを着用して慌てて部屋を出ようとする。


「あ、報告ありがとうございました。私は先に行きますので、お帰りの際は侍従にお伝えくださいね」


 そう、出向員の男にお辞儀をしてから全速力で執務室を去っていった。

 


 


 

 


 ちなみに、思い出話で話した事件のことですが、大体は第2次世界大戦までのヨーロッパ情勢を参考にして書かせていただきました。

 連合共和国がドイツ国という位置になっておりますが、連合共和国はホロコーストと言った人種差別はしておらず、逆に国民や占領国民も同じ民族なので手厚く保護をしているという設定です。


 もし、誤解された方がいましたら、申し訳ありません。



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