第9章7話
ピーンポーン ピーンポーン
家のインターホンが鳴る。
「はぁい」
ここはス連邦首都スウェットハーヴェン特別自治区内の一角、4年連続外国人の住みやすい地区ナンバーワンに輝いているこの地区の高層マンションの一室に一人の男がボサボサ頭を掻きむしりながらインターホンに対応する。
『すみません。…………様でしょうか?』
「はい、そうですが……」
『田沢運輸です、お荷物をお届けに参りました』
田沢運輸とは、日本国は大阪市内に本社を置く日本企業である。
日ス最国交正常化に際して日本の優れた工芸品などをス連で待ちわびいている顧客に届けるために、両国間で話し合いス連邦の民需品は皇宮財閥傘下のキューブ・フェルクロード運輸が日本の支社に物品を送り、日本人で構成された支社が日本の顧客にス連の製品を届ける。
逆に日本製品は大手と化した田沢運輸がス連にあるス連人で構成された支社に送り、死者がそれを届けるという仕組みを締結した。
今、インターホンのカメラ画面に映る宅配員の男は、深く帽子を被ってはいたが、きちんと田沢運輸の制服であり、その手元には大きな段ボールを持っていた。
「はぁ、田沢運輸さんね……。中身はなんですか?」
『えっと、日本の工芸品です。』
「そうですか。……ちょっと待ってくださいね、今出ますから」
男はインターホンの画面のスイッチを切ると、洗面所へ向かい軽く髪を整えてから、玄関へと向かった。
「……ハンコっているのかな? ……いや、確かASMがあれば大丈夫なのか?」
ASMとは自動決済機のことである。
だが、あまり関係はない。主に本編では……。ってメタ発言はやめなさい!
中の人の一人漫才を知る由もなく、男は玄関の壁にかかってあるタブレット端末のような装置、ASMを取り、鉄製の玄関のカギを外しドアを開けた。
「すいません、お待たせし……!!」
男は謝罪を最後まできちんということが出来なかった。
なぜか?
それは宅配員の男が荷物を持っていたはずの手に自動拳銃を握りしめてこちらに銃口を向けていたからだ。
「ペルシアント惑星王国情報機関モルズヴドグの諜報員、…………だな?」
「……。……誰だそれは?」
「ふむ、まぁいいだろう。」
男がそう呟いた瞬間、
バン!!
手に持っていた銃弾が発射され、それは一直線に男の腰に当たった。
「ああ、安心しろ、それは電磁麻酔弾だ。外部からのショックがなければ、下手すれば永久に眠り続けることになるかもしれないが、その時は起こしてやる。」
「だい、じょ、うぶじゃ、ねえ……」
男はそう言いながら、玄関先で深い深い眠りについた。
というか、撃たれて、意識が飛びそうになってもツッコむ勇気がすごい……。
「さて……と。」
宅配員の男は玄関先で突っ伏して眠りに落ちている男を家の中へと引きずり込み、両手両足を対戦車砲弾を受けても耐えられることが出来る簡易ネットに使われる紐を使い、男を縛り上げた。
そして、男のシャツの袖やズボンの裾、ポケットを確認しナイフなどがないか確認する。
運悪く目覚めた男が、対戦車用ネット破壊ナイフなど切れ味抜群のナイフを使って拘束を解き、証拠品の隠滅や下手すれば後ろから襲われる恐れもある。なので、こういう確認は大事なのだ。
「はぁ、この格好落ち着かんわ……」
そう言い、制服には妙に合わないネクタイシュルシュルと外し、表裏を逆にして再び着用する。
すると……。
田沢運輸の制服が一瞬にして光に包まれ、すぐさまスーツ姿の……まるで、どこかの総統閣下のような男が表れた。その男はもちろん伍長閣下である。
……いや、表れたんじゃない。変装ネクタイを裏側を緩めているか使用するともう一人別の人物になることが出来るのだ。
つまり、裏の伍長から表の総統閣下にチェンジしたわけだ。
「えっと、大体は机の中か金庫にあるのか?」
伍長は革靴にゴム袋をかぶせ、両手に白い軍手を着けスーツ帽を被る。
まるで、警察の鑑識が現場検証の際に着用する姿のようであった。
まず手始めに、奥の書斎の机の中や引き出しをあさり始め、奴が諜報員・工作員だという証拠を探す。
机の中には、本、手記、文房具、PCが入っている。
パラパラパラと本の中身や手記の中身を確認して、もしかすれば重要なことが書かれているかもしれないということで自身の鞄の中にしまい込んだ。
引き出しには主に本が並べられており、本の間をかき分け奥に空間がないか確認していく。
そして手を突っ込みUSBまたは小型端末がないか確認していく伍長。だが、驚くほど何もなかった。それは誇りといったゴミまでもが……掃除が行き届いているのだな、と伍長は思う。
他にも本棚や電球の裏までくまなく書斎内を捜索したが何も成果を得ることが出来ず、捜査の舞台をリビングダイニングへと移行する。
42インチの従来型テレビがリビングダイニングに置かれており、伍長はテレビの配線一つ一つしっかりと確認していく。
それが終われば、ソファーのクッションの中からソファーや椅子の裏まで手探りで探していく。
と、
「む? なんだこれ?」
ソファーの裏に何か雑誌のようなものが張り付けられていた。
それを剥がし取り、それを確認する。
表紙も裏表紙も銀色の張り紙が張り付けられており、怪しさ丸出しの雑誌のようなもの。
そして、中身を確認した伍長は……
「うっ!」
慌てて中身を閉じた。
15歳以上だが、基本的に全年齢が見ても大丈夫なように心がけている本作品なので、詳しい中身の内容は言い難いのだが……その……
薄い本だった。
伍長は何も見ていないと心の中でつぶやきながらそれをもとあった位置へと戻す。
若干顔が赤いような気もするが、それは恐らく太陽の光のせいだろう。……今お昼時だけど……
「……うむ、私は何も見なかった。OK?」
OKと誰かが心の中で返答する。
「さて、リビングダイニングにも無いとすると……寝室かキッチン、バスルーム、トイレ、倉庫のいずれかになるか……」
まずバスルームへと移動する。
さすがに無いとは思うが、換気扇の中から、浴槽の排水管まで懐中電灯で照らし何かないか探すが、あるのは男の髪の毛、埃ぐらいであった。
で、結局バスルームでの収穫は何もなく、同時にトイレにも向かったが、あるはずのないだろうトイレで、無駄に探すのも面倒くさくなったので、収穫なしということで早々にトイレからは退出した。
「あとは寝室、キッチン、倉庫だけだが……寝室はまだしも、キッチンと倉庫に証拠があるとは思えんな……」
火と水を扱うキッチンに端末またはUSBがあるとは思えないし、倉庫に至っては絶対に自分も失くしそう
「となると、やはり寝室か……」
伍長は証拠は寝室のどこかにあると考え、ダブルベッドの寝室へと向かった。




