第9章6話
「きおーつけぇ!」
会議室内に国防大臣の怒号が響き渡り、座っていた各省庁の代表や諜報員・捜査官……延べ100人が一斉に起立し直立不動になる。
「大天皇帝陛下および連邦政府首相に最大級の経緯を示し敬礼!」
全員が入室してきたフェルトさんとヴェーレ首相に一斉に各式の敬礼をする。
部署や省庁によって敬礼は様々だ。
各省庁と警察庁と公安警察庁の関係者は一礼、国防総省・国防軍治安維持庁関係者は陸軍式敬礼、特務軍と機動治安部は45度の敬礼、連邦捜査庁は挙手敬礼である。
なぜこんなに様々な敬礼があるか。まぁ、諸説あるのだが、単に他の組織がやっていない敬礼をしたかったらしい。まあ、公安と警察は総督省管轄だし、そういうのは同じなのだろう。
皆に敬礼された2人は、ともに敬礼で返した。
フェルトさんは小さく挙手をする形の敬礼を、首相は一礼をする。
「では、只今より内閣府特殊事案3項目、敵対国家諜報員工作員一斉摘発事案通称E欄の発令により情報機関、捜査機関、諜報機関合同で摘発捜査捜査会議を始めます。
えー、まず現状わかっている国内潜入諜報員・工作員の数ですが……約1万300人ほどです。」
司会進行である内閣府の担当者がそう発言する。
改めて思うが、小さな都市の人工ほどの諜報員・工作員って怖くね!? 下手すればお隣さんもそのお隣さんも全員諜報員だったりしたら……
「現状わかっている諜報員の所属機関ですが、大体はペルシアント惑星王国情報機関モルズヴドグ、ヴィルヘルム惑星大公国大公情報捜査機関、惑統連監視委員会3つの機関が主になっております。今回我々はそのうちのペルシアント惑星王国情報機関モルズヴドグの一斉摘発に踏み切ります。……はい、貴方、所属名と名前と階級を言ってからどうぞ」
警察庁席から一人の男が手を上げて質問許可を求める。
「警察庁捜査4課2係主任の加藤 信明巡査部長です。何故、残りの2つの機関も摘発しないんでしょうか?」
「大公情報捜査機関は我が国の連邦・連合構成国の一つであるヴィルヘルム惑星大公国の情報機関です。2か国間の諜報・捜査活動は憲法上認められています。
また、監視委員会の場合は、国家機密どうこうというより、ス連邦自体の監視にありますので、危険性は低いとの判断です。」
「わかりました。ありがとうございます」
加藤という巡査部長が座ったまま軽く一礼する。
「えー、話を戻しますが、今から配布します資料にス連本土にいる外国人の名簿と宇宙港にて付けられたGPS番号が書かれています。そこからス連圏内に住んでいる人間は赤、身分がはっきりしており不審ではないと断定出来た人物は青のマーカーで消されています。
つまり、今現在この資料には諜報員・工作員の恐れがある外国人の名前とGPS番号が書かれております。
先ほどお貸ししました端末にそれぞれ担当の人間の情報を送信します。
あなた方には、GPSを頼りに彼らの動向を調査、場合によっては宿泊先への強制捜査や拘束権を行使しても構いません。
もし抵抗した場合……。どうしましょうか首相……」
「ははは……なぜ私に回ってきたんだい。こういうのは詳しい刑事部長に回したほうがいいでしょう……」
「……国防大臣、任せました。パァス!!」とリフェリアさん。
だんだん責任の擦り付け合いみたいになってきた。
いったい、誰が抵抗した場合の処置を言うのか……
「……私は知らんぞ、筆頭事務次官、貴女に任せよう」国防大臣は何も言うまいとこれ以上の発言をやめた
「…総督大臣にでもお任せしたほうがよろしいんでわないかしら?」アリスティンは無関係を装う。
「総督省はあくまで許可を出すだけ。そういうのは遠慮しておく」
総督省はそういう面倒なことには直接手を下さない、内閣府官房長官殿が下したほうがいいと思う。
そう、付け加えて改めて総督大臣は拒否した。
「私にはそういう権限はございません。お忘れですか? 総督大臣?」
ニヤリと悪戯っ子のように笑う官房長官と、なぜか残念そうな顔をする総督大臣。
何故総督大臣が残念そうな顔をするかというと、現在の総督大臣と官房長官は同じ与党内の対立派閥の所属している。
官房長官としては、目障りな派閥の人間で嫌っているし、総督大臣としては官房長官というポストが欲しい。
派閥って恐ろしいと思う中の人であった。というか本会議の幹部連中(大臣・長官当)多いな!?
「なら一周回って首相、お願いします」
「何故一周回った? 刑事部長、頼みます」
「陸軍大臣、お任せします。パス」
さらにもう一周するのかと誰もが思ったが、そんな期待は折り曲げられ、国防大臣ではなく陸軍大臣へと抵抗した際の処置方法の決定権が移行した。
「む! 無関係を決めていたのだが……ならば海軍大臣任せよう。私は無関係で結構だ」
海軍大臣に丸投げした。
というか、意外と海軍大臣と陸軍大臣、仲が良かったりする。
……まぁそうか、制服組の全権限はフェルトさんにあるからね。
「……なぜ君たちは話を長引かそうとするのかね? 空軍大臣頼んだ」
あんたもおんなじだよ! と幹部連中をジト目で見る職員・諜報員・捜査官たち
「統合軍参謀補佐委員会副委員長、貴方が最終的に決めるのです!」
「えぇ……」
力ずよく発言する空軍大臣にたじろいてしまう副委員長。
ちなみに参謀補佐委員会とは、今回の摘発の原因でもある国軍の反乱、侵略行為を発案、実行した組織である作戦指揮参謀本部の下位組織に当たり、大多数が更迭された参謀本部に代わって格上げされた。
もちろん委員長はフェルトさんである。
「これは私も誰かに丸投げすればいい流れですか? それなら……」
もう、何かの流れになってしまっているよ
「陛下! 最終決定お願いします!」
「ふぇ!?」
まさか自分に回ってくると思わず、広辞苑並みの分厚さの外国人名簿に目を通していたフェルトさんが素っ頓狂な声を上げる。
「え? え? なに、何を決めるの!?」
「いえ、ですからね。もしも諜報員や工作員が抵抗した場合どうするかということを話していましてね。ただ、万が一の時、発言者の責任を追及されるのを恐れて皆さん他の人に丸投げしたんですよ……」
隣に座る首相ができるだけ声を抑えてフェルトさんに耳打ちしたが、前列に座っている人にはめっちゃ聞こえていた。
「え? そんなこと? それなら対戦車迫撃砲でも次世代型主力戦車の主砲でも対戦車ミサイルでも荷電粒子砲でもレールガンでも撃ち込んででおけばいいんじゃないですか?」
『…………………えっ?』
フェルトさんは可愛げのある笑顔で答えたのだが、言っている内容と表情がマッチしておらず、会議室にいた全員の心と表情が凍り付いたような気がした。
というか、実際凍り付いた。
それは例外なく、実の姉であるリフェリアさんまでもが……
後半、責任の擦り付け合いじゃねぇか!




