第9章4話
タイトルを変えました。
それは、実に巨大で、実に広い面積を持った超高層ビルであった。
連邦政府庁舎ビルは5つのタワーが支えあうようにして建てられている。北側に第1ビル、南側に第2ビル、東側に第3ビル、西側に第4ビル、そしてそれらのタワーの中心部に東西南北ビルより数倍大きな第5ビルが建てられている構造だ。
その外見からでいえば、多段式ロケットを彷彿させるような……。
もちろん空なんかは今は飛びはしないが、各ビルには連絡通路が張り巡らされており、中の人は何かのアニメの悪の秘密結社の本部か、巨大会社の本社を思い浮かべてしまった。
そんなわかりそうでわからないたとえは置いといて、伍長さんたちはその中央部の第5タワーの地下駐車場にいた。
「……なぜ地下駐車場? 別に地上でもいいんじゃないか?」
「くくく、何をおっしゃるいますか、こんな装甲車をどこに留めておく?」
「うむ……そうだな……」
確かにこんな物騒なもの、ロータリーや地上駐車場に置かれたりしたら、悪目立ちはするだろう……。
あなたの車の隣に装甲車。
「ま、理由はほかにもあるんですよね……。貴方ですよ」
「は、私?」
風見川の意味深な発言に首をかしげる伍長閣下。
ここ最近、首を傾げなければいけない言葉が連発しているので、首を痛めそうだ。
「あなた結構有名人なんですよ。情報機関を持っている組織なら大体あなたのことを知ってますね。ペルシアント惑星王国で中央銀行を爆破してそのまま逃走しようとしたときに、先の件があり、更に事故を起こし入院……。くくく、災難でしたねぇ、ねぇ? アドルフさん」
「なっ! ちょ! 本名……」
慌てふためく伍長に、周囲に群がっている風見川以下3名と内藤家の兄弟は生暖かい目で見ていた。
「大丈夫ですよ、もうみんな知っています。私かって情報部にいるんですから貴方のこともしっかり把握しています」
「え? ってことは……」
「……全部演技」
内藤家の弟の発言によって確証を得た伍長は、やっぱりかー、と天を仰ぐ。
まぁ確かに情報部に所属しているなら、色々各国の情報が入ってくるだろう。つまり必然的に伍長たちの行った行為がバレるわけで……。
……いや、行為という表現はおかしいな。それは色々な意味で誤解を招きそうだ……。
そうだな……。……破壊活動でいいか
「改めましてアドルフさん。国防軍治安維持庁情報部所属の内藤 正義です。」
内藤家の兄と再び握手を交わす。
そう言えば、国防軍治安維持庁と公安警察って何となく管轄が同じだよな。
警察庁はス連邦の治安活動と事件事故調査を専門にする。公安警察は国家の不純物……反逆者を監視取り締まる組織、国防軍治安維持庁は国家の治安維持、占領地などの治安維持や反逆者の取り締まり、連邦捜査庁は皇帝からの指令によって事件事故調査、諜報、防諜、破壊工作などを行う。
……あれ、そう考えれば連邦捜査庁があれば、警察庁がいらなくね!?
「……同じく国防軍治安維持庁特務軍事務課所属の内藤 吉秀です」
「はぁ、どうもどうも……。ん? 特務軍?」
伍長はピンとこないが、特務軍は伍長とフェルトさんをホテル火災から救出した部隊である。
その特務軍の事務処理をする事務課に弟のほうは所属しているらしい。
「まぁ、いいか……」
いいんだ……。
「改めて、連邦捜査庁特し……特別捜査局A班班長のアドルフ・アルベルトだ、よろしく」
再び挨拶を交わし、彼らは先ほどより強く手を握った。
危うく所属先を言いそうになってしまったのだが、ギリギリで言葉を飲み込み、従来通りの所属先を説明する。
危なかった、さすがに彼らは特殊諜報捜査局の存在はわかっていないと思うが、わかったら分かったでいろいろ面倒だ。いや……情報部だから様々な情報が入ってくるだろう。なので、もしかしたら知っているかもしれないが……。
何せ依頼主が皇帝というからな……。立憲君主制が壊れていく……
「ん? 何しているんだ?」
風見川とその部下たちがサングラス取り出してそれをかける。
すると、風見川は徐に左手に巻き付けていた高級感漂う腕時計を凝視し始め小言でカウントダウンを始めた。
「そろそろですかね? ……3、2、1……」
1と風見川が呟いた瞬間、本人たちはしゃがみ込み、両耳を両手でしっかりと塞ぎ、口を大きく開けた。まるで戦艦などの巨砲を発射する際、甲板などにいる乗組員が衝撃波対策に行う仕草のようだ。
いや、実際そのしぐさと全く同じなのだが……
訝しむ伍長と内藤家の兄弟、だが、そんな訝しさも一瞬で消え失せてしまった。
ポン
まるで何かが発射されたような音がどこからか鳴り響いた。
しかし、ありえない。なぜならここは連邦政府庁舎ビル地下駐車場なのだ、なので、政府関係者以外いないはず、そう、政府関係者以外は……
そしてそんな音が鳴った瞬間、
ドゴォォォンッ!!
地下駐車場内で爆音が鳴った、と同時に、
プシュゥゥゥゥゥ
白くてモクモクする……以前ペルシアント惑星王国で憲兵たちの目を欺くために使用したモクモクグレネードと同じような煙が爆音地点を中心に覆ってきた。
伍長さんたちはというと、突然の爆音のせいで耳鳴りを起こし、煙のせいで足元もろくに確認することが出来なくなった。
ふと伍長は思う。
もしかして、風見川たちはこのことを知っていてしゃがみ込んで、耳をふさいだのだろうと……。
だが、そんな思考もすぐに遮断されてしまった。
「むご!?」
白い世界からいきなり暗闇の世界へと変貌したのだ。
いや、違う。
伍長の頭に何やら袋状の物をかぶさせられたのだ。それは、まるで紛争地帯で活動していた多国籍の民間人が武装勢力に誘拐されるかのようだ。
「むむ!」
何をしている! そう叫んでいるのだろう。
だが伍長の抵抗もむなしく、そのままどこかに連れ去られて行ってしまった。




