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Manipulated Intelligence Agent ~皇帝によって操られた諜報員たち……~  作者: 11月 ミツシ
第8章、【惑統連総会にて】
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第8章2話

「列強各国国王首脳級! ご入場!」


 東京ドーム数個分の広さを誇るこの大会議場で、司会進行の別の男がマイクに向かってそう叫んだ。

 あちらこちらのスピーカーからその声が伝わり、各国国王首脳級の人間たちは次々に自分の席へと着席していった。

 ここ惑統連総会は、普段合わないような国家の国家元首や首相などの重鎮とも会うことが出来るので、外交の場としても成り立っている。

 実際、スピーカーから聞こえてきた司会進行の声を聞くまで、様々な国家の国王同士や首脳同士が様々な場所、例えば階段や相手の席など実に様々な場所で階段が行われていた。

 しかし、国王同士の話し合いならまだしも、首相などの行政関係者同士の話になると、中を深めるというよりは外交となってきている。

 実際、貿易問題の話し合いもここで行われたりしているものだ……。なので相手が笑っていても内心は笑っていないことは明白。


 外交というものは戦争と全く同じだ。

 その一言やその内容によって国家の運命が左右されるといてもいいだろう。

 そしてその外交の主権を自国に引き込まないと、外交で負けてしまう。相手から一方的に要求を突き付けられ、それを飲むしかなくなってしまう。

 それが外交というものである。


 そんなあわや戦争になりそうなところも少しあったが、スピーカーから発せられた言葉に言い争っていたものは自重し席へと戻っていった。

 各国が席に着いたのを見計らい、数十人の人間が中央に備えられた巨大な円卓へと向かう。

 その円卓には各国の小さな国旗が掲げらており、地球の国連のようにその人間がどこの代表か書かれている。だが残念なことにス連邦はそのまま日本語でス連邦と書かれたままだった。

 そして円卓の周りに全員がそろうと、着席する。

 大体は二人で一つの国家の代表というのが多く、その中でも総会出席の場合は、国家元首とその時その時の議題に応じる人間(例えば紛争・戦争ならば国防大臣などの軍幹部)が座ることになっている。

 別に連盟憲章で言われている訳ではないが、暗黙の了解として成り立っている。

 しかし、今回の出席者は異常とも取れた。

 国家元首に首相または宰相など行政の長が座っているのである。だが、これには会場もどよめくところだが、今回はやたら静かであった。


 すると円卓に座っていた惑統連首相の四条が勢いよく手を上げ、司会進行に発言の許可を求める。

 はい、首相。と指名した司会進行はそのまま一歩下がり会場を高みの見物に移った。


「惑星統合連盟加盟国家国家元首級並びに首脳級の方々! 遠路はるばる惑星統合連盟へようこそおいでくださいました! 只今より、第1791回臨時総会の開催を宣言します!

 今回の議題は全国家共通の”ス連邦反乱軍によるペルシアント惑星王国への軍事侵攻の公開尋問”です!」


 そう力ずよくマイクを通して開催を宣言した。

 彼は右手の指先を首に押し当て手のひらを表にし目立つようにする。それに続けと総会出席者すべてが同じような事をし始めた。

 一体何なのか?

 初めて見たものは異様とみるが、これこそ惑統連式国王級同士の挨拶である。

 つまり国王同士の会談などではこの挨拶が用いられているのだ。

 まぁ、別にこの挨拶でなくとも、小さく挙手するのでも構わない。


「さて、では今回のことを説明させていただきます。なおこれから話す内容は監視委員会からの情報ですのでご了承ください。

 えー、事の発端は15日、ペルシアント惑星王国国王陛下がご崩御されたことから始まります……」


 すると、ペルシアント惑星王国国王が崩御されたという聞いた国王諸氏は動揺し、ざわめき始めた。

 彼らは諜報員からそのような情報を、手に入れてはいたが、何かの誤報だという結論に至ったのだろう。しかし、円卓のペルシアント惑星王国席の片方が枢密院議長になっていることには訝しんでいた。

 なので、改めて情報が開示されると、動揺はする。

 ちなみにペルシアント惑星王国国王の評判ははっきり言って2つに分かれていた。

 一つは、超国家であるス連邦にフェルトワンで唯一歯向かい、核戦争まで仕掛けたという称賛。これらは反ス連邦国家で構成されている。

 もう一つは、経済的にも安全保障的にもいろいろ援助してくれるス連邦に歯向かったという批判。これらは親ス連邦国家で構成されている。

 と、一人の男が手を上げる。

 首相は国王諸氏席に座るその男を指名した。もちろん敬称付きで、


「どうぞ、ヴァークス惑星連盟連盟長閣下」


 連盟長と呼ばれた男は、すぐさまに自分の席に取り付けていたマイクに向かって喋りだす。

 なお、どこの国家の代表かいち早く識別できたのは、実は画面に映る連盟長と呼ばれた男の国家名を確認したからだが……。


「はい、では質問です。国王陛下のご崩御というのは、老衰などの自然死からですか? それとも病気か何かなのでしょうか?」

「……。……。枢密院議長閣下、ここは私が発言してもよろしいでしょうか?  いえ、閣下が望むのであれば、閣下が発言して下されても構いませんが……」

「……構わん、首相殿が発言してくれないか?」

「……。わかりました」


 何やら密約が果たされると、首相はマイクに向かいこう告げた。


「ペルシアント惑星王国国王陛下は、15日の午後、背後から何者かに銃で発砲され、死亡しました。

 弾丸は全部で4発。

 心臓に2発、頭に1発、首元に1発です。これらのことから犯人は明らかに殺意を持っていたことが分かります。

 なお、犯人は未だ逃走中です」

「なっ!?」


 またしても各国国王首脳級諸氏は唸り声をあげ、狼狽し始めた。

 そして、様々な言葉が流れてきた。


「そんな……国王陛下が……」

「あ、あり得ない。ここの誰よりもス連からの暗殺を恐れていたため警戒心が強かった陛下が……」

「そうか……。これで世も平和になるのか?」

「無理ですね閣下。下手をすればペルシアント惑星王国の覇権をめぐり争いが起こるでしょう」


 現実問題、厳しいようである。

 と、惑統連首相が小槌を鳴らした。


 カーン カーン


 と心地よく響く音が、騒然としていた大会議場内を静粛へと導く。


「首相閣下、それは国王陛下は何者かによって暗殺されたという事なのだな?!」


 連盟長と呼ばれた男は四条に問う。

 その四条は落ち着いた口調で、はい。ただ一言そう述べた。


「では、国王暗殺の件は第3国からの関与という事はあり得ませんかな?」


 挙手をしていていない金髪の30代ほどの男が、首相の許可もなく発言したため、司会進行が慌てて咎めようとしたが、首相がそれを手で遮り……。


「妙広星間連邦共和国大統領閣下、勝手な発言は認められませんよ?」

「これはこれは、大変失礼した。では、首相、改めて質問に応じてくれないか?」


 蔑むような態度で、接してきた大統領に、首相はムカッっと来たが、公の場でそのようなことを言うわけにはいかないと理性的に答えた。


「いえいえ……。ではお答えしますと、現時点ではそのような動きはありません。無いとは言えませんが、現時点では無いといえます」

「ほぉ~、なるほど……。ありがとう。」


 それだけだ、どうぞ話を続けてくれ。そう付け加えた大統領はそのまま隣に座っていた女性に声を潜め何やら話し込んでいる。

 だがそんなことはお構いなしに、首相は話を進めた。


「えー、大分脱線しましたが、話を戻させていただきます。ペルシアント惑星王国国王陛下が何者かにより暗殺されたその数時間後、同国家首都のブルーストン国立総合中央銀行にて大爆発が発生しました。

 中央銀行は、内部からの爆発によるもので、目撃者の証言や監視衛星アドルフからの人工衛星写真から付近から大量の貴金属類や価値がある宝石、書類、現金などが発見されました。

 ス連軍の撤退後は、惑統連に全権が委任されましたので、監視委員会特別捜査部が捜査を行っていると、3つのことが発見されましたので報告します。

 まず、現金は爆発によって燃えたのではなく、何者かが意図的に現金を燃やしたこと。 

 これにより爆発は、ガス爆発などによる事故ではなく、明らかに人為的な犯行であること。

 そして、この事件の捜査中、第3国家による妨害工作および圧力が来たという事です……」


 話を続けようとしたその時である。


「そんなの、ス連邦からの圧力に決まっているではありませんか! 国王陛下の暗殺もきっとス連邦が裏から糸を引いてのですよ!」


 金切り声にも近いそんな声を、スピーカから発せられ、出席者諸氏は何事か、どこの国家の人間だ? とざわめきだした。

 だが、意外にもその犯人はあっさりと見つかる。

 何せ列強国の席に座っている女性が、いきなり立ち上がったからだ。

 その席……そう、今回の件で一番被害を被った国家であるペルシアント惑星王国の首相代理として訪れていた枢密院のメンバーでもある王族の女性……、言いにくいので王女といわせてもらうが、その彼女がうつむいたまま立ち上がり、そう叫んだ。


「お、落ち着きなさい、殿下。貴方はここがどこかご存じだろう!」


 慌てて止めに入ろうとする枢密院議長であったが、彼女の怒りはおさまらない。


「大体、惑統連に圧力をかけられる国家なんてス連邦しか出来ないではありませんか! 逆に聞きますけどほかの国家に出来ますか!?」


 いや……ね? 確かに惑統連に強力な圧力や妨害工作をすることが出来る国家なんて列強国の中でもス連邦と呼ばれる国家しかできないですよ?

 大体の国家は、外交または平和裏にそして穏便に済ますというのが鉄則でもある。

 何しろ惑統連の資金というのは、ス連からの資金(列強国分担金)が31パーセントを占める。後は惑統連民間居住区に住む国民に、消費税などの税金や加工貿易などで賄っているが、31パーセントというものは実に大きいものである。(第2のツァールバリカー惑星合衆公国ですら23パーセントである)

 現実問題、加盟国内からはス連邦からの分担金が多すぎて、ス連邦の傀儡化するのでは? という危険に直視していた。

 実際、スぺ核戦争勃発危機の時、ス連の経済が解除されたのは圧力があったと言われている。

 以前話したと思うが、それほどス連邦の力は恐ろしい。

 ……なんか『ス連という国家』という書籍にて、ス連邦のことをこのように語られている。


『ス連邦という国は、ある種危険で恐ろしい。 彼の国は武力および軍事力もそうだが、経済力、産業力など多々において力が成り立っている。

 今現在は国軍と国防軍の分立により、どちらかが反乱を起こせば相手が鎮圧することによって双方ともに抑止力となっているが、両軍が合併されれば、フェルトワンどころか宇宙を征服できる力を持つ恐れがある。

 他星に高度な文明を誇る惑星があれば、止めることが出来るだろうが、間違いなくク連の血を一番引いているス連がフェルトワンを征服されるだろう……。』


 そう語られていた。 

 で、王女殿下が発言したこの言葉に、ス連邦はすぐさまに反撃する。


「首相、私からも発言したいですが、いいですか?」


 フェルトさんは列強国ス連席から手を上げ、発言許可を求める。

 どうぞ、と指示されたフェルトさんは視線を首相から、立ち上がってこちらを睨みつけている王女に正面から話しかけた。


「お言葉を返すようですが、王女殿下。ス連邦がわざわざ裏から圧力をかける必要性があります? 銀行爆破の件は反乱軍鎮圧時にでも、処理しておけばよろしいでしょう? ス連邦ならば2時間ほどで跡形もなくかたずくはずです。なのになぜ証拠を残し、さらに圧力をかけるという必要があるのでしょうか?」


 この言葉を聞いた時、王女はフェルトさんの印象を変える必要性に迫られた。

 彼女はこれまで、チビで摂政(首相)などの側近にいいように操られる、操り人形だと思っていた。実際には操られる側ではなく、操る側なのだが……

 だが、フェルトさんの述べたことは筋が通っている。

 

「そ、それは……。……いえ、愚問でしたわ、皆さま申し訳ありません。首相どうぞお話をおすすめください」


 思わぬ場所から正論を言われたため、狼狽えてしまい答えを思いつくことが出来なかったため、発言を撤回しおとなしく座り込んだ。

 そのおとなしさといえば、今まで横暴な態度で下級生をしかりつけていた上級生に、母親が激怒し説教した後の様だ。

 ……うん、実に分かりにくい説明だ!


「……えー、ゴホン。また話が脱線しかけましたが、続けます。ペルシアント惑星王国の中央銀行が何者かによって破壊されたほぼ同時刻、ス連邦統合軍作戦指揮参謀本部で陸軍元帥・海軍元帥・空軍元帥・宇宙航空軍統帥官・統合軍参謀総長・侍従武官の以下6名の会談が行われしました。

 この作戦指揮参謀本部にて、ペルシアント惑星王国の侵略作戦、通称IP作戦の発案されました。

 この後、出席者である海軍元帥閣下と空軍元帥閣下、宇宙航空軍統帥官、侍従武官の4名の航海尋問、証人尋問が行われます。

 なお、質問がありそうですので、先に申し上げますと、強硬派と呼ばれていた陸軍元帥、統合軍参謀総長以下2名は、鎮圧作戦始動と同時に、指揮室にて介錯切腹自決を計り、介錯していた陸軍大将も拳銃で自決しました。


 では、これより公開尋問および証人尋問を開催します」


 そう、首相は宣言した。



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