第7章7話 最終話 新
「あ、危な! 後数十メートル進んでいたら、私ら死んでいたぞ!」
爆発地点を目の当たりにしたため、伍長は判断が少しでも遅れていたらと思うと、肝を冷やした。
ちなみに爆弾が降って着弾して大爆発起こしても、あまり驚かないのは、爺ちゃんから第2次世界大戦時の恐怖を毎日のように聞かされていたことと、と自身も爆弾が空から降ってくるところを見たことがあるからである。
「伍長さん、バックします。路地裏から西門に行けるルートを探してくれませんか!?」
「直進するのか危険か?」
「はい、不発弾がある恐れがあります」
ルーズルートは、ギアをチェンジしながらそう答える。
確かに戦後、地雷や爆弾と言った不発弾などが町中から見つかり、処理のために近隣一体を避難させなければならなくなったという話は結構ある。
日本でも、戦後云十年以上たった後でも、不発弾が発見されたり、爆発して大事故を襲ったりと様々な問題がある。
なので、出来立てほやほやの不発弾があるかもしれない場所を、車で突っ切るというのは、アクションライダーでもできそうにはない。
ちなみに伍長達は知らないのだが、ス連やフェルトワンの国軍で使われている爆弾・砲弾などの弾薬はすべて空中爆発型という、地上1mまで落ちてきたら自然に爆発するように設計されている。
なので、地面に着弾して爆発という表現は正しくはなく、正確には空中で爆発すると言った方が正しい。
これは、人体や陸上兵器に効率的な破壊をもたらすためという……。
なので、不発弾というものはないはずなのだが、伍長達は知らないので、バックすることにした。
「えっと……。ルーズルート、今見えた角を曲がれ!」
バック中に見えた角を曲がるように指示する。
「わかりました。伍長さんには周辺警戒もお願いしていいですか?」
「おう、任せろ! ドイツ軍人を舐めるな」
別にドス連軍人でもぺ王国軍人でも、軍を物理的に舐めたって鉄の味しかしないだろう。
いや、戦車とかは舐めたら舐めたでゴムや鉄、火薬と言った様々な味がするだろうが……。美味しくはない。
まるでどうでもいい話はさておき、ルーズルートは持ち前の運転技術を使い、車一台入れるか入れないかという道路を、100㎞代で爆走していった。
歩道では、近場の防空壕や地下へと逃げていく人々の目に留まり、空襲警報が発令する中、異常な速度で爆走する車を訝しむような目で見ていた。
「次を右だ!」
カーナビを常時確認しながら、あたりを警戒するという。
さすがに後部座席からのカーナビ確認は大変なので、爆走している間に身を捻り、助手席へと滑り込んできた。
ルーズルートは巧みな手さばきで直角に近い曲がり角を、道路標識すれすれに曲がり、そのまま直進していく。
ただ、左のタイヤ……つまり助手席側のタイヤがパンクしているため、いささかバランスが悪かった。
「そのまま直進……城壁手前で右に曲がれ、あとは西門へ行けるはずだ」
カーナビに目を凝らし続けながらそう言う。
別に東門からでも脱出してもよさそうなものだが、東門へ行くためには先ほどルーズルートと伍長が憲兵たちと銃撃戦を起こした場所あたりを通過しなければならず、治安維持活動に従事している憲兵たちが狙ってくる恐れもあったため、西門から脱出することにした。
そういえば、伍長達を高速戦車が追いかけてきていたが、あの後戦闘機から発射されたミサイルが直撃し、正面装甲を貫通、内部で爆発を起こし、砲塔が吹っ飛んでいた。
というより空襲警報が発令されたと同時に、憲兵部隊にも撤退令または治安維持令が下されたため、戦車で不審車を追いかけるどころではなくなったのである。
「伍長さん、あの角ですか?」
ルーズルートは左手を離し、信号機付きの曲がり角を指さした。
指さした先が、自分の言った曲がり角であることをカーナビと照合して確認し、頷いた伍長閣下だったが、その刹那。
キュゥゥゥゴゴォォォ!!
雄たけびのような音がわずか数十メートル上空から聞こえてきた。
伍長とルーズルートは慌ててフロントガラスから見える範囲で上空を確認する。ルーズルートの場合は運転もあるので、あまり上空を見ていられる状況ではないのだが、それでも出来る限りで確認する。
そして二人はこの雄たけびがいったい何だったのか、理解した。
「CC131だと……!」
そう、CC131……、先ほど伍長達を包囲していたヘリコプターを全滅させ、首都上空の制空権を確保した恐るべき? 戦闘機であった。
一瞬二人は、自分たちが無事に脱出するまでの護衛ということで納得してしまいそうになった。
だが……
戦闘機は二人の予想を裏切り、上空で急上昇し見事なまでに一回転すると、今度は正面上空から戦闘機か急接近してきたのだ!
予想外の行動に騒然とする伍長。
「ちょ、何故こちらに向かってくる?! まるで……」
まるでこちらを攻撃しようとしているではないか! そう付け加えようとしたが、事態は待ってくれなかった。
凄い勢いで接近してくるCC131から伍長達の乗る車に対し容赦情けなく31㎜機関砲が降り注いだ。
もしかしたら言っていなかったかもしれないが、この車というかほとんどの車は防弾使用である。タイヤもそうだし、エンジンを覆うボンネット周りも、天板もそうだ。機関銃程度ならば防ぐことが出来るだろう。
しかし、31㎜機関砲を防ぐことは出来ない。
混合弾なのだろうか? 弾く弾丸もあれば31㎜だいの穴をあける弾もある。
明らかなる攻撃に、動揺してしまったルーズルートであったが、それが運の尽きだった。
攻撃から身を守ることに必死で姿勢を低くしてしまった彼は、次に曲がるはずだった角に直線ルートがないことを知った。
そして……
車は正面から家の壁に衝突し、ボンネット部分がぐしゃぐしゃになってしまった。
「うっ……」
正面から壁に衝突してしまったため、ハンドルに頭を思いっきり打ち付けたため、意識がもうろうとするルーズルート。
外からか相変わらずの空襲警報が鳴り響いている。かすかに車からも警報音が聞こえてきた。
口の中は鉄っぽい味がすることから、口を切ったことは明白だった。
「伍長……さん……」
ルーズルートは自身の相棒を見た。
伍長はぐったりとし、息をしているかもわからなかった。
「あぁ、もう……」
ルーズルートの意識はここで途絶えたという。




