第7章5話
Claude Craft131制空戦闘機……。別名CC131制格戦は、クロードクラフト社製の第19世代型主力戦闘機と呼ばれるものである。
この機体を語るうえでまずクロードクラフト社を説明しなければならない。
Claude Craft社、CC社はかの大財閥である皇宮財閥傘下の軍需企業である。レシプロ戦闘機から宇宙格闘戦闘機、光速機などとにかく速く、頑丈で、安全と安心な飛行機を作る企業である。
現在ス連軍で運用されている最新鋭機の大多数をこの会社が製造しており、現在は新世代型主力戦闘機Claude Craft-412光速多任務戦闘機を開発している。
ちなみにだが、戦車や戦闘機でも次世代型と新世代型という違いがるが、その違いははっきりいて無人機か否か、エンジンは燃料なしで永久的に動かすことが出来るか、そして光の速さで飛ぶことが出来るかのおおよそ3つに分けられている。
物凄く大雑把に言えば、次世代型・旧世代型は地球のような惑星での運用を前提とされた形。新世代型はどんな場所にも無人で送れる形である。
実際、ス連陸軍の現在の主力戦車は、キャタピラから永久波動機関動力エンジン搭載の反重力エンジンになったため空中浮遊戦車というロマンあふれる形になってしまった。
しかも無人機。
それはもはや戦車とは言わないのだろうか?
さて、ではこのClaude Craft131制空戦闘機を説明しようと思う。
この機体は、Claude Craft社が次世代型・旧世代型と呼ばれているClaude Craft130戦闘機を高高度戦闘用に改修したものだ。
Claude Craft130は従来道理ジェットエンジンとロケットエンジンの混合型だったのだが、いかんせん燃料消費と永久機関エンジンの開発によりスクラップ確定の戦闘機だった。
そんな消えかけていた130型に永久波動機関動力エンジンを搭載し、敵の前線基地や首都の制空権を取るために再開発されたのがこの機体である。
機体は可変翼と呼ばれる何かの珍兵器にでもありそうな形状の翼を採用している。……だって、ねぇ……。主翼が動くって、もの凄い珍兵器臭があふれているんだよねぇ……。
で、肝心の武装はというと、ヴァイツァー22/31㎜機関砲が2門、77㎜CCカノン砲1門……これだけでもオーバーキル出来そうだが、そこにミサイルまたは爆弾をミサイル12門または爆弾5tを搭載できる。今回はミサイルと爆弾の混合型だが、それでも何十機も集まれば恐ろしい威力を発揮できる。
そんなClaude Craft131がペルシアント惑星王国の暗い夜空を何十機もの大編隊を形成しながら飛行していた。
飛行編隊はそれぞれ敵の対空砲や地対空ミサイルなどを発見次第機銃掃射やミサイルで次々に撃破していく。
『こちら宇宙航空軍戦略宇宙艦ノルディーメント、空軍第19機動戦闘軍所属の第1戦闘機編隊、応答願う、どうぞ』
「こちら空軍第19機動戦闘軍所属第1戦闘機編隊隊長のニャリュヤコフ大尉だ、現在首都対空兵器の破壊活動任務中、どうぞ」
第1戦闘機編隊の中で一番先頭部分にいる機体には、ニャリュヤコフ大尉が相棒である操縦手に的確に指示を出しながら無線に応答する。
『第1戦闘機編隊はそのまま制空権を維持してください。第19機動戦闘軍戦略爆撃軍団の到着後は護衛機が制空権を獲得しますので、その後は空挺降下地点のアンデス森林付近の制空権を獲得願います、どうぞ』
「了解、現状維持後B地点への移動だな? って、ん?」
『第1戦闘機編隊隊長機? どうかしましたか? どうぞ』
「いや……、首都北門方面の大通りから信号弾……いや照明弾の打ち上げを確認した。……なるほど、照明弾の打ち上げ地点に敵のヘリコプター数機を確認、撃破へ向かう。どうぞ」
『了解。無線オーバー』
はるか上空でペルシアント惑星王国の軌道衛星上を浮遊している宇宙航空軍所属の戦略多目的艦、ノルディーメントとの通信を終え、周囲に続く部下たちに新たな指示を飛ばす大尉。
「2、3、4番機は首都西門付近の警戒を、5、6、7、8番機は南部、中央部の警戒を、9、10、11番機は高高度の警戒を、12番機は俺と共に北門の警戒だ、いいな?」
『はい!』
威勢のいい返事が無線から複数聞こえてくる。
「その前に俺はあのヘリコプターどもを蹴散らしてくる。中尉! 北門から直線で侵入できるようにしろ!」
「了解」
操縦手はそう返事をすると操縦桿を握り込み勢いよく手前に引く。
急上昇を始める戦闘機は失速することもなく綺麗な一回転を遂げ、北門へ向かう大通りに平行になるように操縦する。
「ステルス混合弾装填! 目標前方のヘリコプター群、フルオート射撃」
独り言を何かの装置を見ながら叫ぶ。
「中尉! 少し速度を落とせるか?」
「了解です、五九〇㎞でいいですか?」
「ああ、頼む。」
そしてそのまま……大尉は機関砲の引き金を引いた。
ダン ダン ダン ダン
ステルス弾という名の通り発射された77㎜CCカノン砲と31㎜機関砲のステルス弾が一直線に目標のヘリコプターのメインロータ付近に着弾し、亀裂を入れ大爆発を引き起こした。
一機ずつ撃破・撃墜を確認していくと次の目標に標準を合わせ引き金を引きながら次ぐ次と撃墜していった。
伊達に戦車砲口径を積んでいるだけはある。一撃一撃が重かった。
全機撃破を確認したところで、大通りを通過し隊長機は機首を真上にあげ青い信号弾を発射した。
これは『制空権獲得』という意味があった。
・・・・・・・・・・
時は遡り空襲警報が発令される少し前。
ペルシアント惑星王国王宮枢密院では非常に重々しい空気が漂っていた。総勢7名の代表貴族・国会議長・侍従長・首相府官房長官・王族(王位継承権外)・国軍総司令官・枢密院議長それぞれはただただ黙りながら一点を見つめる。
枢密院議長席の丁度右隣、金ぴかに彩られた豪華な空き椅子がある。
ここは国王、ハーゼンクロイツ・アベレント2世が座っていた席だ。だが国王はもういない。
重々しい空気の中、代表貴族である30代の男が口を開いた。
「……。国軍総司令官殿」
「な、何でしょうか?」
「憲兵部隊は未だに我が国の偉大なる国王陛下を暗殺した犯人を捕らえることが出来ていないのか?」
「も、申し訳ない、現在捜索中だが不審者が見つかったという情報は……」
「なら、何故不審者が一人も見つからないのだ!」
大声を上げ国軍総司令官を怒鳴りつける貴族の男。
「落ち着かないか! 憲兵部隊は警察機構ではない、治安維持部隊だ! わかっているな?」
「くっ……。はい……」
国会議長に叱られ一瞬怯みつつも言い返そうとしたが、正論を言われたので素直に従っておく。
「……。……。……ス連邦ですわ……」
「えっ?……」
突然口を開いた王族の女性の一言に何人かが反応してしまう。
「国王をあんな風に殺害してしまう国家なんてス連邦しかいませんもの!!」
とんだとばっちりを受けたス連邦だったが、実は大昔に同じように背後から銃で一発……敵対国家の国家元首や首相を暗殺したことがある。
さすがに、外交上好ましくない殺害方法とされ禁止されたので今では一切行っていない。
そんなとばっちり発言をした女性を落ち着かせるように水を進める枢密院議長だったが、彼女の怒りはまだおさまっていない。
「第一、ク連革命の時だってそうでしたわ! あんな反乱分子一族なんか処刑すればよかったのですのよ! でも最大派閥のメルディエッタロード家の計らいによってあの家は追放だけで済みましたのよ!? それだけでもおかしいはずですのに、あの家は偉大なるク連に革命を起こさせ帝国の分裂、崩壊を招きましたのよ! 貴族の大多数は追放、処刑されましたわ!」
「落ち着いてください、殿下」
枢密院議長がどんどん熱くなってきている王族の女性に落ち着くように指示するが、彼女の怒りはまだまだおさまらない。
「あの家は上級貴族ならば老若男女問わず逮捕していきましたわ! 私の先祖もまだ10歳で両親が逮捕され追放されたのですのよ!」
「落ち着いてください、殿下!」
徐々に枢密院議長の声も張り上げてくるが、そんなのお構いなしに彼女は語る。
「そんな残酷なことをする国家が何故崩壊しないのですか? 何故国王ではなくあのチビ皇帝が暗殺されないのですか!?」
「いい加減にしてください! 殿下! 今の言葉は敵国であれ惑統連連盟憲章の第23条に激しく違反しておりますぞ! 公的機関として今の発言は認められませんな!」
普段なら穏やかであったはずの枢密院議長の怒鳴りようで、ようやく熱が冷めたのか椅子にもたれ込み、小さく、
「すみません……。撤回します」
そう言った。
ちなみに連盟憲章の第23条にはこう書かれている。
~惑統連加盟国の国家元首を公の場での侮辱・屈辱的発言は加盟国国民であるならば一切禁止する~
と言った条文が書かれてある。
ただこれはあくまで公の場や公共の場、公共放送での発言が禁止されているだけであって、公の場でなかったり公共放送では~あくまで個人の意見です。なおこのテロップを張り出さずに放送することは惑統連の連盟憲章で禁止されています~というテロップを張り出さなければいけない。
公の場での発言やテロップを出さなければ、それぞれの国家で違いは出るが、ス連邦では悪くてシベリア永久凍土生命活動停止刑、軽くて強制徴兵が言い渡される。なお無罪放免はない。
よく、これで独裁国家という悪評を言われることがあるそうだが、あくまで公の場での発言が禁止されているからであって、家やプライベート空間内での発言は許可されている。
だから独裁国家ではない。
「だが、彼女の発言には一理ある。やはりあの時本国も攻めればよかったのだ!」
貴族代表が発言する。
「何を言う! 貴様らは死にたいのか!? ス連に喧嘩を売って勝った国は歴史上一つもない!」
国会議長がそう反発した。
「だが、奇襲攻撃なら行けたはずだ! 実際に彼の国の衛星も奇襲攻撃で占領できたではないか!」
今度は侍従長までもが声を荒げて叫ぶ。
「馬鹿言うな! あそこを警備していた国境警備隊との交戦だけで我が方には1200人もの死者が出たのだぞ! さらに国軍が援軍としてやってきた時はどうだ!? 我が方は昼夜行われる爆撃に地下で耐え忍ぶことしかできなかっただろう?」
首相府官房長官の男が反論した。この男は核戦争勃発危機の時、空軍大臣を務めていた男だ。
「なんだ?! 貴様らは王国の不利な立場に追い込んで……。売国奴か!?」
「そんなわけないだろう? 私が言いたいのはス連という最強国家と戦っても何の意味もないという事だ! 大体……」
国会議長と貴族代表が激しく口論を始めそうになったその時、
「し、失礼します!」
男が入ってくる。
枢密院会議場の観音扉を蹴破るように開きころがり込んできたのは、憲兵部隊の部隊長であった。
「何事だ?」
唯一落ち着いた声で、憲兵部隊長に問う枢密院議長。
「はっ、緊急の要件につき参りました次第でありますが……お取込み中でしょうか?」
「構いません、話してください」
彼の直属の上司でもある国軍総司令官は出来るだけ穏やかに発言を促した。
「はっ、緊急の要件ですが……朗報と悲報がございます。まずは朗報から……」
部隊長はスゥーっと息を整え、堂々とした面持ちで発言した。
「憲兵がビルの屋上で不審人物2名を発見しました。男二人は合間を縫って逃走を図りましたが現在包囲中で逮捕も時間の問題です」
「おお!」
何人かのメンバーが驚きの声を上げる。
その表情は、安堵や安心、そして犯人が見つかったことによる嬉しさなど様々な面持ちだった。
「では、悲報は何だ?」
「はっ、それが……。」
今までとは正反対に言葉を詰まらせる部隊長。さすがの表情の変わりように周りの人達も怪訝そうな顔をしていた。
「……。ブルーストン中央銀行が何者かにより内側から爆発が起こしました。そして……現場近くに、燃え残った札束らしき紙切れの他に……。貴金属類が破損・損壊した状態で大量に発見されました」
「な!?」
この言葉には一同絶句した。
「そ、そんな……。あそこには私の財産がございましてよ」
「わ、私の財産もだ……」
「い、妹の形見が……あそこに……」
国会議長の最後の発言が少し気になるところではあるが、皆一同がショックを受けていることははっきりと分かった。
おっと、ちなみにだが、ルーズルート侍従長は国会議長の妹さんの財産を取ることは無かった。
多分お金に換算する価値なしと判断されたのだと思うが……。……まぁ国会議長、よかったね。
「お、落ち着いてください皆様、現在貸金庫から何が取られたかは捜索中ですが、おそらく地下まで被害は出ていないだろうと……。」
「そ、そうですわね、何も諦めるのはまだ早いですわね……」
「た、確かにな……」
絶望にふちから希望の光が差し込んできた。
枢密院出席者は一斉のそれを掴もうとする。だが、その光の筋は一人の男の報告によってかき消された。その男は国軍総司令官の副官として待機していた男だった。
その男に一つの紙が渡される。
「ほ、報告ー! 我が国領空を不審機が領空侵犯! 首都方面軍の戦闘機を発進する直前、ミサイル・機銃攻撃により喪失! 未確認機そのまま首都方面に飛行中!」
「な、何ですって! 敵味方識別機の反応は!」
副官からの報告にすぐさま国軍総司令官の男が反応する。
「反応赤(赤は敵、青は友軍、緑は民間機)!……今入りました! 首都方面軍および首都付近の空軍または民間所有の滑走路すべてに配置された戦闘機破壊! 我が方の制空権……消失しました……」
最後の方は読み上げている本人ですら絶句しか言いようがなかった。
その間にも、部下たちが入れ替わり立ち代わり副官に新たな情報を入れていき、慌ててそれらすべてを読み上げる。
「ほ、報告! 敵機首都内にある対空兵器の無効化攻撃を開始! 高速により撃墜不可能! 我が方被害甚大! 現在の首都内損害は、対空41機、ヘリコプター39機、高射砲61門の破壊または使用不可! 首都方面軍は最大レベルの5を発令! 空襲警報が発令されました! 直ちに総司令官閣下は参謀本部室まで!」
「わ、わかりました。しかし目視での確認はどうしました!?」
「そ、それが……。何人もの兵器が目視で確認しましたが……、国籍マークどころか所属機すら判別不能です!」
「なっ!」
これは……、明らかに正規軍がやってはいけないことだ。国際条約や連盟憲章に違反している行為である。普通ならばこんなことを行えば、惑統連総会でのその国家の最高指導者または国軍総司令官の全200か国以上からのつるし上げは必然……。200人以上もいる場所で言い訳や理由などを語らなければならないのだから、普通なら国籍マークを付けておく。
それは正規軍の作戦ならばであるが……。
「そ、それは……。テロリストが乗っているという事か?!」
総司令官は叫んだ
「ち、違います。それはあり得ません、少なくとも国軍か軍需企業制作の物でなければ永久機関エンジンを積んだものは動かせません。」
「という事は……まさか……!」
「はい、おそらくあの機体は……」
副官が推測を述べようとしたその時である。
「し、失礼します! 首都付近に戦略爆撃機らしき複数の機体が高速で接近! 首都全域に空襲警報レベル6を発令します。直ちに皆様方も地下壕まで避難してください!」




