第6章5話
ペルシアント惑星王国本土上空云キロメートル。減速用パラシュートを開き酸素ボンベを取り外した伍長たち。例の特殊なつなぎ、通称『TTS-2・民間用』と呼ばれるこのつなぎ……。これのおかげで超高高度からの落下や生身でも音速飛行そして過度なGにもある程度耐えられる仕組みになっている。
なんでもポルトブルクトフ銀河皇国の繊維カーボンをス連の技術で編み込んで作られたらしく、つまりス連とポ銀皇の共同開発製品なのだが、国際的な特許を扱っている惑統連中央特許申請局にどちらの国で登録するかちょっとしたもめごとがあるらしい。
正直どうでもいいと……
まぁ、特許申請で国家間でもめているTTSだが、それをス連のいつも道理の皇宮財閥が魔改造によって宇宙開発企業や民間軍事企業向けに開発されたのがTTS-2である。
TTS-2は初期型より耐久性が上がり銃弾耐性も備わったので空軍パイロットに重宝されているのだが……
「ルーズルート! このつなぎ! 動きにくいぞ!」
そう、耐久性が上がった代わりに動きにくくなった。
その違いでいえば、機動性抜群だけど装甲と火力がない軽戦車から装甲と火力が上がったものの機動力はカタツムリレベルに落ちた重戦車並みに違う。
海軍でいえば、機動性がよく遊撃向けな駆逐艦から鈍足で起動艦隊に入れなかった戦艦並みに違う。
空軍でいえば、ロケット戦闘機から飛行船並みに違う。
……。……陸海空いう必要があったか!? というか飛行船もまぁそこそこ速いからな!
「我慢してください。いいですか、次、高度4000mで第3パラシュートを開いてください! そのあとは自動的に開くシステムです。パラシュートの操縦方法はわかりますね?」
「ああ、そりゃあこう見えても元軍人だからな……。下士官だがパラシュートの操縦方法ぐらいは教わったぞ」
伍長さんは、ちょっぴり誇らしげに話す。
というかいつの間に普通に会話できるようになったかというと、酸素ボンベをとったあたりからであってしっかり聞き取れるのは、無線機がつながっているからである。
「はいはい、誇らしげに話さなくていいですから、では降下地点は私についてきてください。まぁ一応座標は伝えておきますね。
DW D,129 H,341 E,542です!」
訳すとデルタ129 ホテル341 エコー542だ。
デルタやホテル、エコーと聞いてもパットは思いつかないだろう。これはNATOフォネティックコードと呼ばれるもので、欧文通話表の中でも北大西洋条約機構が定めた通話表である。
本来ならば無線通話などにおいて使用されるのだが、ス連の統合軍や一部国家で座標を暗号で伝えるために使用される。
なおそれぞれの惑星で最初の2つの文字が変わり、ス連邦ならば『AA』ペルシアント惑星王国では『DW』であったりする。
その言われた暗号座標を、つなぎに元々装着されていた腕時計上の端末装置に入力すると……
ピピ
電子音とともに端末装置に『暗号を受信し座標位置を特定しました』と表記される。
「あっ、セットしましたね? では行きますよ!」
ルーズルートは第2パラシュートと呼ばれる減速用と降下安定を兼ねたパラシュートを開く。
伍長も後を追うようにパラシュートを開いたが、
「うぐ!」
お腹にGがかかり背負っていたパラシュートと体を固定する紐がお腹に食い込み吐きそうになった。
「では、伍長さん。グットラックを」
二人は会話を終えた。
・・・・・・・
一方変わってここは『フォールドグラード刑務所』と呼ばれる刑務所。
この刑務所では、テロリストや国家犯罪者などといった極悪人たちが収容されている刑務所である。
『フォールドグラード刑務所』……。その歴史は古く、ク連革命ののち貴族追放令が適用された貴族たちが収監、処刑された刑務所として有名である。
もともとの名前は『クルーヴェールフェ国家秘密刑務所』と呼ばれていたが、元男爵家であったフォールドグラードと呼ばれる男が処刑される前、他の囚人や貴族と団結して看守に反乱し大脱獄を起こしス連社会に恐怖を与えたことから、皮肉を込めてフォールドグラード刑務所と呼ばれている。
ちなみに大脱走した囚人たちは、ほとんどは警察に逮捕され別の刑務所に送られたが、フォールドグラードや一部貴族は国外に逃亡し現在も指名手配中の模様。
で、なぜこんな刑務所にいるかというと、ここにはある男が捕らえられていた。
「囚人番号0009、囚人番号0009! 起きろ! 点呼の時間だ!」
武装した看守が、0009と書かれた独房の前で怒号を出し、力強く硬い鉄のドアを叩いていた。
ちなみに零が3つ並ぶときは、死刑囚または重犯罪人を意味する。
「おい! バルスティアフロード! 点呼の時間だぞ! おい!」
そう、その男とはバルスティアフロード家の子孫であり国家元首暗殺罪(未遂だが、この法が適用された)で収監中だった金髪男である。
いつもならば、点呼の時間できちんと起きているはずだが、今日は異常ともとれるほど金髪男の返事がない。
「まさか……脱獄か!?」
看守は不安を感じ、鍵を使い2畳しかない小さな独房へと続く鉄のドアを開けた。
「おい! いい加減に……っ!」
看守は室内を確認した瞬間、絶句し余りの悲惨さに口を必死に抑えた。
そして手元にある無線に手を伸ばし、叫ぶ。
「し、至急至急! 特別棟Aの0009号室にて囚人番号0009の遺体を発見! 死亡している! 直ちに応援をよこせ!」
看守は必死になって叫んだ。
だが、よく見れば彼の手元は異常なまでに震え、唇も真っ青である。
『了解! そちらに今から向かう。』
数十秒後……
いわれた通り、奥のほうから走ってくる看守らしき男数名と白衣を着た医者がやってきた。
だが、彼らは0009と書かれた部屋の前に来た時、同様に言葉を失い、背を向けるものまで現れた。
「そんな……」と看守A
「じょ、冗談じゃないぞ!」と看守B
「うっ……」と看守C
「これは……酷い……」と医者
彼らが見たもの……それは……
眠るように横たわっている男の姿だった。だが、違うのは……”心臓”が何者かに抜き取られているのと、目が異常なまでに真っ赤だった……。
本来ならば、もうちょっと残酷でしたが、作者も引いてしまうほど残酷になったため、急遽内容を変更してお伝えしております。




