第6章6話
ま、間に合った……。
徐々にあたりが暗くなっていく。
ここは、ペルシアント惑星王国ダ・ローゼンクロイツ領アンデス森林と呼ばれる大森林である。
ダ・ローゼンクロイツとは、ちょうどぺ惑王の首都より一つ西側に位置するローゼンクロイツ公爵領である。主要産業は表向きは農業や漁業そして豊かな木々を生かし林業や都市開拓業が盛んにおこなわれているが、実はこの領土の地下にはプルトニウムやウランといった鉱物資源多大量に埋まっているらしく、裏で絶賛採掘中である。
なぜ裏でやる必要があるのか?
それは、惑統連の経済制裁である。
かつての核戦争勃発危機から当事国であるス連邦とペルシアント惑星王国両国は一時的に他国からの貿易が禁止されていた時期があった。ス連邦は別に制裁を受けようが資源や食料には困らないので、制裁無意味と判断され制裁が解除されたが、ペルシアント惑星王国は年々重ねるごとに経済制裁を強めた。
主にス連からの常任理事国各国への圧力があったといわれているが、その経済制裁のせいで、この国は自国で資源を調達し、自国で使わねばならない。
今回伍長さんたちの任務も、制裁をかいくぐり、他国や非加盟国との貿易で得た外貨(どちらにしろ世界共通の円だが)を中央銀行で保管されているという情報を受け陛下は伍長さんたちに今回の任務を依頼したというわけだ。
さて、そんなペルシアント惑星王国のダ・ローゼンクロイツ領で一番の面積を誇るアンデス森林の開けた平原に第3パラシュートを開きゆっくり着地しようとしているルーズルートとそれに続く伍長さんの姿がある。
こういう平原のほうが、安全かつ周りの木々によって遠くから見られてもわかりにくいそうで、伍長さんたちもその教えに従い、平原に降り立とうとする。それなら森林でもいいのだが、パラシュートが枝に引っ掛かり怪我する恐れがあるということから、今回は平原に降り立つことにしたのだ。
「あっ、伍長さん。先に荷物おろしてくださいね」
パラシュートに繋がれていたワイヤーを思いっきり引っ張りルーズルートは緑色のバックらしきものを地面へ落とす。
伍長も真似し、ワイヤーをこれでもかというぐらい引っ張った。
シュルルルルとワイヤーに取り付けられていた荷物が重力に引っ張られるように落ちていく。
荷物の中身は、食料やら水やら武器やらライターやら軽ガラスボックスなどが入っている。
軽ガラスボックスについては、刑事訴追の恐れがありますので答弁は控えさせてもらいます……。
そんな伍長の荷物が地面にたどり着いたと同時に、ルーズルートは草が膝ほどまである平原に降り立った。
パラシュートとつなぎを止めているベルトを取り外し、つなぎのポケットから取り出した双眼鏡であたりを見渡し状況が安全かを確認する。
なにせ、森林に囲まれているとはいえ平原は平原、見晴らしがよく敵が狙撃してくるということもあり得る。
特にペルシアント惑星王国の陸軍特殊旅団はス連軍ですら手を焼くほどゲリラ戦が得意で、前哨基地でもしょっちゅう狙撃されたほど……。
ルーズルートがあたりを警戒している間に、伍長が地面に降り立ち、同じようにベルトを外し、双眼鏡でルーズルートの真反対側を警戒する。
「こちらは大丈夫です。伍長さんそちらは大丈夫ですか?」
「ああ、見えるのは小動物ぐらいなものだ」
彼らは100%不法入国者+敵対国家の諜報員であるため捕まったら罰金では済まされないだろう。
なのでたとえ敵対意思がない民間人だろうが、連絡手段を持たない先住民だろうが誰にも見つかってはいけない。
「わかりました、ええ大丈夫そうですね。では伍長さん、例の物を……」
「例の物……? ああ、あれか。でもなんで?」
首をかしげながらも、伍長は言われた通り落としておいた荷物の中から細長い筒と何かの突起物を取り出した。
「マグネッション対戦車砲……だったか? 戦車なんぞいないのに使う必要があるのか?」
ーマグネッション対戦車砲
ス連皇宮財閥が開発した旧世代型の対戦車兵器である。実用条件は、非戦闘員や国防軍治安維持庁職員でも扱える反動がない対戦車兵器として開発製造された。
現在は使われていないが、数多くのゲームや他国軍で使われていたりする。
砲弾はT弾と呼ばれるロケット推進を搭載した弾で次世代戦車には余裕で貫通するが、新世代型には当たることすら不可能と言われている。
ただ、便利なことには違いなく、現在では国境警備隊に引き継がれている。
そんな兵器がなぜ伍長さんの手元に……しかも遠足で持っていく水筒みたいな感じで扱っているのか?
その答えはルーズルートが語る。
「マグネッションはですね、あるものを隠滅するために使われているのですよ。主に特殊部隊員の空挺団ですが……」
その瞬間、伍長の脳内では慌ただしく思考が始まり、その結果……
「つ、つまりあれか? ロケット弾にパラシュートを付けて飛ばすと?!」
「はい、対戦車砲ですが、対地攻撃にも使えるんですよこのロケット弾。なので空挺で使用したパラシュートは敵の基地や戦争ならば市街地に向かって撃つという方法がとられるのですよ。証拠隠滅にもなりますし、敵からしたらどこからか飛んできたミサイルと空ばかりに警戒が行ってしまうという算段です」
ただ、それでバレるということもあるんですけどね。を、ルーズルートはあえて言わなかった。
「なるほど……。そうなってくるとどこに撃つ気なんだ? まさか市街地とか言わないでくれよ?」
「いえ……市街地ですが何か?」
「はぁ?!」
あれだけ民間人には被害を出すなと陛下から言われたのに、この男ときたらそれを破るのか!? 伍長はそうツッコみそうになったが、ルーズルートは首を横に振り、
「ああ、そういう意味ではありませんよ。これは私たちが今から行く銀行に撃ち込もうということですよ。」
「へ? なぜ?」
「私たちは、銀行の金庫から金目の物をすべて運び出し、焼却処分するという任務でしたね?」
「あ、ああ。確かにそういう任務内容だったが……」
「でも伍長さん、銀行には現金のほかに小銭や宝石、貴金属などたくさんあります。それらは燃えるとでも思いますか?」
「た、確かにそうだが……。それならもういっそのこと現地位に行かずに銀行へ撃ち込んで処分したほうがいいんじゃないか?」
「確かのその手段もないとは言えません。ですが考えてみてください、貸金庫室や金庫室は普通ならどこに置かれていますか?」
「それは壁を破られ盗まれないように地下深くに……。あっ! そういうことか!」
ロケット弾を撃ち込んでも地上波破壊できるかもしれないが、地下にあるものはどうやっても破壊できない。そうルーズルートは言いたかったのだ。
「そういうことです。さぁ、準備を急ぎますよ、もうすぐ完全にあたりが真っ暗闇に包まれます。その前にいろいろと作業をしないと……」
ルーズルートはそう言いながら脚立に対戦車砲を取り付け、座標指定機と呼ばれるお蝶が先ほど使った腕時計型の端末と似たような装置に銀行の座標を地図から割り出し、セットする。
そして、自ら持ってきた無線機との周波数を合わせ、いつどこからでも発射できるようにする。
伍長はというと、組み立てながらも色々指示をしているルーズルートの指示に従い、ロケット弾に2人分のパラシュートを取り付けしっかりとロケット弾と固定すると、ロケット弾のみを対戦車砲の方針にセットし、パラシュートはその辺の土の上に置いた。
「よし…っと、伍長さん、ロケット弾のほうは準備できましたか?」
「ああ、こっちも万端だ。」
「なら、行きますよ。今から歩けば丁度つくのは深夜です」
荷物を背負い、立ち上がったルーズルートを先頭に平原を抜け市街地へと向かうのであった。




