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Manipulated Intelligence Agent ~皇帝によって操られた諜報員たち……~  作者: 11月 ミツシ
第5章、【刑事さん、あの人です! あの人が容疑者です】
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第5章7話 最終話

 数分待ち……


 寂しく長官室で待たされている伍長閣下。

 フェルトさんと偶然出会い、長官室に連れてこられ新たな任務内容を聞いていたら、フェルトさんが急に怯えだし、かと思ったらメイド長と名乗る少女が伍長さんの頬に引っ付くようにおり、その彼女は伍長さんに何かを見せるために一時退出していった。

 ちなみに、”あれ”という言葉が出来たが、あれは多分一部の業界では熱狂的なファンがいる代物である。

 可愛さは正義であり、世界一! って偉い人が言ってた。その偉い人とはフェルトさんの姉である。

 ともあれ、伍長さんは現在無人状態の長官室になぜか置いてある接客用のソファーに、寂しく待たされている伍長さんだった。

 ……。……。訂正しよう、この部屋には、先ほどから伍長さんが意図的に無視をしている男がいる。その男というのが……


「……。……。なぁ、さっきからあえて聞かなかったんだが……、何でお前がここにいるの!? ルーズルート!」


 そう、みんな大好きかは定かではないが、フェルトさんの最側近にして侍従長の、ル~~ズル~~トォ!

 ……何故伸ばす必要があったかは誰にもわからない謎にしておこうと思う。

 

「ようやっと気が付きましたか……。いえですね、私も今回の任務を担当しろと上層部……ああいえ、陛下から指令を受けましてね。先ほどようやく書類仕事が片付いたので長官室に向かいましたら、陛下が……メイド長に連行されていくのが見えましてね、それと入れ違うように部屋に入ってきたんですが、伍長さんときたら何度アクションや話しかけようとしても無視するんですよ……」


 後半になっていくとルーズルートの顔が、苦笑いから落ち込んでいくような表情に変化していった。

 その変化の具合ったら、どこかのテレビ局で放送されていた、家のリフォーム番組のぼろかった平屋建てのビフォーから高級マンションへのアフターへの違いなみに変化がすごい。……それはもはや別の物件ではないか?


「ああ、悪かった悪かった」

「適当?!」


 かわいそうと思ったわけではないが、何か言っておいた方がいいだろうと判断しだした言葉がこれだよ…。


「まぁ、いいですけど…。それより伍長さん、今回の任務内容は何ですか?」

「えっ? 聞いてないのか?」

「ええ、長官室に来いとだけしか……」

「な、なるへそ……。いや実はな……」


 伍長さんは懇切丁寧に今回の任務内容と場所、メンバーを説明した。

 なお、銀行強盗と説明された時、ルーズルートは口から何かを吹き出した。何を吹き出したかといえばいつの間にか……たぶんメイド長が気を利かせて置いてくれていた緑茶だろう。

 

「げっほげっほ……ぎ、銀行強盗ですか…」

「ああ、私も最初聞いた時は耳と頭を疑ったよ」

「どちらの?」

「どっちも」


 つまり伍長さんは、自分の頭とフェルトさんの頭を正常かどうか疑ったのだ。なおおつむの良さでいうならばフェルトさんの方が断然上の模様。

 …………子供に負けているじゃねぇか!


「というか、何で私ここで待っているんだったっけ?」

「えっ! 覚えていないんですか!?」


 お茶を盛大に吹き出したルーズルートは、お茶だったものを自分のハンカチで拭きながら伍長の仰天発言に後れを取らぬツッコミを入れた。

 

「いや、何でルーズルートがいるのかすら忘れた。あれ? ここはどこだ? えっ? 私は誰?」

「ちょっ……しっかりしてください! 貴方がおかしくなったら誰が!……誰が……誰が……」


 言葉が詰まってきている。

 と、ルーズルートは手のひらをポンと叩き、


「誰がシェリアさんの操縦を制御できるというんですか!」


 まさかのシェリアさんに飛び火した。


「…うん、ルーズルート。その理由はいろいろおかしい」


 伍長はその先のツッコミを脳内で考えた。

 まず、貴方はシェリアさんの操縦するハウニブに乗る機会ないでしょ……。と、

 そして貴方、シェリアさんの操縦をその言い方だと酷いという事になるぞ……。と、


「あ、あれ? 伍長…さん? 大丈夫ですか?」

「ああ……いや、大丈夫だ。」


 伍長は、これ以上ツッコむのをやめた。

 なお、ルーズルートはガチで伍長のことを心配していた模様……。中の人はルーズルートを優しい人だなと思いました。……小学生の感想文か!

 と、丁度その時、


「すみませぇん。お待たせしました……ってあら? ルーズルート侍従長? ()()いたのですか」

「ははは、相変わらずですね……。私も陛下に呼ばれた身ですのでね。そういう君は一人ですかい?」

「いえ、陛下はすぐそこにいらっしゃってますよ。ただ侍従長、見たら多分鼻血出すと思うので、退出することを推奨します」

「ははははは……」


 ルーズルートの乾いた笑いに、伍長がちょっぴり怪訝な顔をした。

 そしてルーズルートに静かにゆっくりと忍び寄り、小声でルーズルートに問う。


「(おい、ルーズルート)」

「(なんですか?)」

「(あれか? ルーズルートとレミレアさんはなんか喧嘩でもしているのか?)」

「(いえ……。ははは、まぁそう見えますかね。結論から申しますと、確かに彼女が陛下専属のメイドだった時にちょっと事件を起こしましてね。その時喧嘩になりましたけど……。私の降伏によって、和解しましたですし、まぁ彼女はもともと毒舌を吐くことがありますからね。気を付けてくださいよ伍長さんも……)」

「お、おう…」


 伍長は今、ルーズルートの大人げなさを聞いた気がした。いや、実際大人げなかった。何がか? ルーズルートは成人をとっくの昔に終えた、いわゆるおじさんであり、メイド長のレミレアさんはフェルトさんとそう変わりのない歳である。

 さらにそこから数年単位で引くと、ルーズルートは10歳にもいかない少女と喧嘩を起こし、挙句の果てに負けてしまったという……。

 あまりにも大人げないかったルーズルートを知り、伍長は有人として恥ずかしい思いをした。ってか実際は恥ずかしかった。

 思わず右手を額に当て小さくため息を吐いてしまう。

 と……。長官室の外から…

 

「えええ! ルール先生もいるの! てっきりいないものだと思って……」

「何言っているんですか。呼び止めたのは貴方でしょう? それに時間を守らな子にちょうどいい罰です」

「そんなぁぁぁぁ、せ、せめて今度の機会に、できればルール先生がいないときに……」

「……。お前本当は嫌われているんじゃないか?」

「ははははは、それ言わないでくださいよ……」


 徐々にルーズルートの眼から光が失われていった。


「はいはい、ダダをこねずに、ほら!」


 レミレアさんと廊下で何やら言い合っていた少女が長官室へげしっと突き飛ばされる。

 よろよろ歩き、長官室へ入ってきた少女は、真っ白い肌に白銀色の長い髪を後ろで三つ編みにまとめた少女だった。その少女は誰であろうとフェルトさん。

 ただ…伍長さんたちはそのフェルトさんが来ている服に思わず目が行ってしまう。

 それは……


「何故……メイド服!?」


 そう、一部の人達から絶大な支持を誇る服装の一つ、”メイド服”出会った。

 それを着込んだフェルトさん(♂)。顔を真っ赤にし、恥ずかしがって俯くその姿から伍長さんはこう思った。

 『男子ってこんなにも非力になることがあるんだな……』と……。


「ふぇぇ! やっぱり恥ずかしい! ギブ!」

「陛下、それ、間違っていますよ……」


 現場は大変混乱を極めています。フェルトさんは半泣き状態でメイド長の裏に隠れ、メイド長はそれをどかすことに手一杯。伍長はポカーンとしてるし……

 と、


「うぅぅ……」


 伍長さんのちょうど隣ですすり泣く声が聞こえてくる。

 首を痛めそうな速度で左隣を見た伍長。そこで見た光景は……


「……。何で泣いてんの? ルーズルート」


 お茶を拭いたハンカチを口に加え目から大量の涙を流すルーズルートの姿だった。

 ルーズルートの異常事態に、レミレアさんもフェルトさんも慌てて駆け寄りなだめ始める。


「うう~、あの陛下が……。あの非力で女の子らしさが皇居一高かったあの陛下が……。このようなお姿に……」

「何故か嬉しくないよ?!」


 素っ頓狂な声を上げ、フェルトさんがルーズルートにツッコんだ。

 でも、長年育て親として見てきたルーズルートは思う。

 フェルトさんの幼少期は、会う人すべてに娘とみられ、遂には実の姉からも皇太女などといわれからかわれた。 

 年月が経ち、陛下もお年頃となり、運動したり筋肉が付くかと誰もが思ったが、それとは真逆の存在へとなっていった。まぁその実、姉からの重圧により運動するなやら髪を伸ばせやらなんやらを言われ、従ったまでだそうが……。

 当然、ルーズルートも心配したのだが、そんなものお構いなしにどんどん女子力が上がっていき、そしてここに来てのこれである。

 つまり、ルーズルートの涙は、うれし涙ではなく、こんな非力な少年に育ててしまった自分が申し訳ない気持ちでいっぱいだったから……。と本人は後々語っているが真相のほどは定かではない。



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