第5章2/2話
全話の延長線上の話です。
ハウニブⅡのコクピットルーム。
そのコクピット内には、首相率いるC班の班員がそれぞれ、機長、操縦手、整備員、通信手、機関手、銃手の役職についていた。ちなみに機長は首相だが、操縦手のみ今回はA班のシェリアさんが担当している。
なにせまだまだ人材が足りない連邦捜査庁では、捜査官兼事務員とか諜報員兼事務員とか……全員事務員じゃないか!
まぁ人手が足りないのは事実なので、別の班でも一時的に編入されたりしている。
ちなみにシェリアさんの操縦技術なのだが伍長が思った以上に達者で、人間に数センチ単位で接触せずに超低空飛行も可能にした。どれほど凄いかというと、人間が生身で戦闘機の上でバク転するにぐらい凄い……。それは相当凄いな!
さらに余談だが、ハウニブⅠ(初代)ハウニブⅡ(量産機)ハウニブⅢ(試験機)もほとんどおんなじ操縦技術やエンジンなのでどれかの機体で操縦できるなら、ほかの機体でも難なく操縦できる。
…………お前余談多いな!
その首相機長は機長席でのんきにスマホをいじっていた。
それを覗き込むシェリアさん。シェリアさんは首相が任務中に彼女へのメールか何やらいかがわしいものを見ているのかと思ったが、ただのメールだった。
しかし、その差出無いように首を傾げる。
「『容疑者の男とぶつかった男、職質されたし……』なんですかこれ?」
「ぶつかった男? 通信手! その男は今どこだ?」
首相機長は叫ぶようにモニターを見ていた通信手に問う。
「ええっと……ぶつかった地点から100mほどの交差点で信号待ちをしています。」
「ふむ……手の空いている整備員と銃手の君と君! 私と一緒についてきてくれ」
「わかりました。しかし班長、何故A班班長はぶつかった男を職質されたしなんて連絡してきたんですか?」
「さぁな、まっ職質したらわかることだろう……。」
「それもそうですね」
「ああ。通信手、男が信号待ちしている交差点の……あの路地裏に転送できるようにしておいてくれ」
「わかりました」
首相が指定した場所の座標を、モニターに打ち込む通信手。
これにより指定された座標に、転送装置に入った人間や物を転送させることが可能となった。シェリアさんが最初の任務で伍長を回収しに来た時も、空中停止モードにセットしながら転送装置で降りて来た。
その装置を使い地上に着陸せずとも人や物資が一方通行ながら降ろせるので、便利な世の中になるものなんだな……。そうこのシステムを開発した責任者は、部下に言ったようである。
さて、その地上の路地裏に転送された首相達。
一応念には念のため、偽物……というか陛下が捜査するときに活用するだろうと用意した警察手帳を懐にあるのを確認し、犯人の逃亡や暴動対策用に麻酔銃と警棒と手錠をあるのをそれぞれ確認しあった首相達は耳につなぐイヤホンから聞こえてくる通信手の指示に従い、交差点を渡ろうとしてきた男に声をかけた。
「すいません、警察のもんですが、ちょっとお話を聞かしてもらってもいいですか?」
「はぁ、警察……」
通行人の通行の妨げにならないように、道の端へよりぶつかった男を取り囲むように職質を始める。
「実はですね、貴方が先ほどぶつかった男性いましたでしょ? スリの常習犯でしてね、もしかしたらお兄さんの財布とか貴重なものが盗まれているかもしれないので声を掛けさせていただきました」
これは嘘である。
ただ単に伍長からの職質しろといわれ、やったはいいが、正当な理由なく職質出来るものではないので、仕方がなく嘘を言うしかなかった。
「スリですか……。」
男は自分のポケットや鞄の中を確認する。
「いえ、何も盗まれていませんでいたよ。」
「ああ、そうですか……。あっ、でもね、一応鞄の中確認してもいいですか?」
首相は男が鞄を確認する際、軽く見ただけで済ましたので怪訝に思っていた。
そしてそこを見せてほしいと言われた男は……
「っ……!」
情緒が不安定になっていた。
ちらりと男を見ると、両手が震え、男の額からは脂汗がにじみ出ている。
「いえ、すいません。会社の機密文章などが入ってますんで……」
「あっ、大丈夫大丈夫、すぐに終わるし」
「しかし……」
数分間駄々をこねていた男だったが、渋々鞄を銃手の男性に手渡した。
覗き込んだり、手で不審物がないか確認すること数秒、
男性の手が一つの物をつかんだ。
それを引っ張り出すと、それはお年玉袋くらいの大きさの封筒で何かが入れてあるように少しばかり膨らんでいた。
「これは……何ですか?」
「! それは!」
男の動揺っぷりが一層激しくなっていく。
それを見た銃手の男性は、何の変哲もなさそうに見える封筒の封を開き中身を確認し、絶句した。
数秒間の沈黙後、男性は封筒の中からゆっくりゆっくり、白い粉が入ってある小分けにされた袋……その数7つを取り出した。
「これは何だ!?」
首相もたまらず声を荒げる。
首相達は大体その粉の正体を察していた。
今ス連の闇社会で話題となり、たびたび社会問題へと発展している超剤の一種だろう……。
超剤。
フェルトワン内で闇で流出している、中毒性がある非常に危険な薬物である。
だが超剤は地球での薬物よりさらに上の薬物でもあった。
症状としては、吐き気、嘔吐、頭痛、めまい、脳神経の破損などが挙げられており、現在国家評議会の厚生労働省関連委員会でたびたび取り上げられているほど危険な薬物である。
首相はたまたま数日前に特番で超剤が取り上げられたので、声を荒げたというわけだ。
「おい! それを本庁に送れ! すぐに鑑定してもらうように言っといてくれ!」
「は、はい!」
銃手の男はポケットから何やら小型の端末を取り出し、小分けされた白い粉を袋から少し取り出し、端末の上に載せた。
すると、白い粉はみるみるうちに消えていき、端末に置かれた粉は綺麗さっぱり無くなっていた。
「どのくらいかかりそうか?」
「数分のはずですが……」
首相達が端末にくぎ付けになり視線も端末の方へ完全に向いてしまったその時!
「ああ! 逃げやがった!」
男が鞄を置き去りにし、全速力で走り出した。
ちなみに道の端からいつの間にか路地の方まで来ており、中の人も気づかないうちにここへ来ていたことに驚いた。
男はそのまま大通りの方へ突っ走り、そのまま人ごみの中に吸い込まれるように消えていった。
「君は向こうの路地から! 君はその反対の底の路地裏から! 私は奴を追いかける! 挟み撃ちにするぞ!」
首相は的確に指示を飛ばし男を追跡する形で猛ダッシュした。
銃手の男は言われた通り路地から更に細い路地裏を通り、整備員の男はそのちょうど反対側の路地裏を使い確保へ向かう。
だが全速力で走る首相達……いや逃げた男にも言えることだが、全員スーツに革靴という明らかに運動不向きな服装だった。
首相は、男を追跡しながら、スニーカーか運動靴で行けばよかった……。と今更になって激しく後悔した。
「む? メール!? こんな時に?!」
嫌がらせとしか思えないタイミングのメールに困惑しつつも、首相は走りながら右手にスマホを持ち遠目で内容を確認していた。
「なるほど……やはりそうか!」
メール一覧から伍長の名前を探し出し、伍長宛の短文を打ち込む。
送信ボタンを押すと、首相は路地裏へ消えていこうとしている男に猛ダッシュからのタックルをかまし、硬く凹凸のあるコンクリートへ体を打ち付けた。
「ええっと! 現在9時23分! 国家指定危険薬物所持取り扱い法違反で現行犯逮捕する!」
首相と一緒に地面へ転がった男へ容赦なく冷たい手錠がかけられた。




