第5章2/1話
数日前、ス連やス連邦圏、惑統連を震撼させるある一軒の火災が起きた。
その火災はス連邦の首都であり、連邦内でも4つある特別行政区の一つ、スウェットハーヴェン特別自治区の大きなビジネスホテルで起こる。
死者4名(重傷者うち2名その後死亡)重傷者19名、軽傷者48名というス連の歴史上片手で数えらる被害を出したホテル火災でもあった。
ただこの火災、一見知れば所詮何かの事故で起こった火災のようにも見えるのだが、実は国家存続を揺るがす大事件が国民が知らぬ間に起こっていた。
この時、VIPルームに一人の男の娘……ああいえ、男の子が止まっていた。
歳はまだ未成年、10代前半ながら国軍の最高司令官でもあり、世界最強国家の元首でもある、フェルトベルク大天皇帝だった。
しかし、彼は火災が起きた時、寝ぼけていたのと側近が誰一人として先に避難していると思ったので、彼は不運にも逃げ遅れてしまったのだ。
それに気が付いた彼の最側近、ルーズルート侍従長は相当焦った。
だがそこに一人の男が現れた……というよりもとよりそこにいた伍長が救助へと向かった。
しかし伍長が見たのは、倒れているフェルトさんだったのだ!
そんなことがあり現在伍長さんたちは今の役所についているのだが、伍長さんたちの知らぬ間に国防軍治安維持庁と警察庁で合同捜査本部が設置され、本格的に捜査に乗り出す。
そして捜査本部は3人の容疑者を特定し、国防軍治安維持庁事務次官から国防総省経由で皇宮省へ届きフェルトさんはそのうちの一人の男への捜査を非公式に命じた。
……と、あらかた今への経緯を伍長と中の人は考えていた。
伍長がいるのは、火災のあったビジネスホテルの向かいにある、例の容疑者の自宅がある建物を一望できる場所にいた。詳しい場所は捜査上話せない。
スーツにスーツ帽をかぶり、毎連新聞を広げながらベンチで一休み中、だがその新聞には人差し指が入るほどの小さな穴があけられており、容疑者の自宅を監視できるようになっていた。
古典的な捜査グッズだが案外ばれにくいらしく、公安警察の捜査員がよくこの方法を使っていたりする。
伍長は顔を完全に新聞で隠し一言もしゃべらずに男の自宅を見ていた。
時折ベンチに置いてあるコーヒーを啜りながらじっと存在感を消すように心がけている。
と、その男の自宅がある建物の入り口から、容疑者である男の姿を確認した。
「(む? ようやく来たか…。この寒空の中張り込みは案外体に凍みるんだよ…。)」
そう心の中でつぶやく。
現在のスウェットハーヴェン特別自治区の気温は最高気温25度、最低気温19度…意外と寒い。
それもそのはず、ス連邦やその連邦圏は真夏でも滅多に30度を超えることのない…冬が好きな人にとってはたまらない気候でもあった。
北部では最低気温-40度とかもしばしば…。
「(さて……私も移動するか)」
伍長は、ささっと新聞紙をたたみ、コーヒーの入った入れ物をごみ箱に捨て、男の追跡を始める。
人ごみの中、新聞紙を鞄に入れ男との距離を一定に保ちながら追跡していた伍長は男の挙動不審な行動に違和感を感じた。
「(ん? なんだ? あいつ何故さっきからきょろきょろあたりを見渡しているんだ? 周りはそんなに違和感のなく通り過ぎて行っているが…。あっ……)」
通行人のいかにも金融業界で働いていそうな顔をした男と、容疑者の男がぶつかった。どんな顔だ?
二人は揉めることもなく軽く謝罪を交わした後、別れていったが……伍長は容疑者の男が取った行動を見逃さなかった。
「(あいつ……ぶつかった瞬間、男に何か袋のようなものを入れたよな…? 一応シェリアさんと首相に通報しておくか……)」
伍長は道の端により、鞄をあさるふりをして首相あてにメールを打った。
実は今回の任務は、後方支援として首相が班長のC班がバックについてくれている。といっても主に伍長の回収や関連犯罪の逮捕などを担当するが……
何を打ち込んだかは詳しくは鞄によって確認できなかったが、多分『容疑者とぶつかった男、職質されたし』とかだろう……
メールを首相に送信し終えると、伍長は鞄をあさるふりをするのをやめまた追跡を再開した。
追跡対象の金髪男は、先ほどまでの挙動不審が嘘のようになくなり普通に道を歩く青年へと戻っていった。




