第5章3話
ぽりろ~ん
気の抜けそうな、そんな着信音が鞄の中からなり、後藤は……じゃなくて伍長は思わずズッコケそうになった。……後藤さんって誰だ!?
ちなみにスマホの着信音は、初期設定のままなのでこの機種を買った人は必ずズッコケると思う。思うだけであって100人中101人全員ズッコケるわけではない。……なんか一人増えてるし!
「あ、危な! 全くいい加減にこの着信音を変えないとな……。」
そういいつつ、伍長は鞄の中からスマホを取り出す。
「ええっと……。……やはりか……」
伍長は歩きながらその行分を凝視し、ため息交じりにつぶやく。
ついでにいうとこの国では歩きスマホおよびながらスマホは軽犯罪法違反で罰金刑に処される恐れがある。
前科は付かないが、スマホ操作により死亡事故などを起こした場合は、過失運転致死傷になり、懲役刑も課せられる恐れもある。なぜそんなに厳しいかは、謎であり、法律ができた理由すらわからない。
「私の見たものは、指定薬物だったの……か…」
いつも通り支給された警察手帳をいつでも出せるように、忍ばせ、速足で金髪男へ近づいていく。
なお支給された警察手帳は、一応本物なのだが、フェルトさんが皇宮財閥経由で首相に圧力をかけ手に入れたものなので、盗品っちゃ盗品だが、連邦捜査庁の正規手帳がまだできていないので、仕方がないのだろう。
伍長は気づかれないように、金髪男の真後ろにつき、男の肩を2回叩いた。
ぴったりくっついている訳でもなく、もちろん一定の距離は取っているが……。
「お兄さん、すいません。警察の物です」
警察手帳を素早く見せ、男の反応を窺う。
伍長より数センチ高い金髪の男は、動揺したこともなく黙ってうなずいた。
「お兄さん、先ほどぶつかった人に何か入れましたよね? 確認したところ超剤でした。
というわけで、ちょっと調べさせてもらっていいかな?」
一方入った路地に誘導し肩から掛けていたバッグの中身を確認する。
そして、あるものを見つけた。
「……これ、超剤の入った袋か?」
「…………」
男は黙ったまま、ずっと沈黙を貫くつもりだろう。
男が掛けていた鞄の中から、首相達が発見した封筒と同じものが後3つ発見され、その中から白い粉が袋に小分けにされた状態で発見された。
もしかしたら、これはただただ甘々な砂糖かもしれず、誤認逮捕という事もあるので、例の端末に小分けにされた粉を少々乗せる。
粉はまるで消滅するかの如く消えてなくなった。
待つこと数刻……
端末ではなく、スマホの方にその結果が送信されてきた。
その内容を見て、伍長は思わず二度見して、送り付けられた文章をじぃ~っと凝視してしまった。
『今日は少し遅くなりそうなのでご飯はいりません。ごめんねぇ~いっつも遅く帰って……』
あ き ら か に、送信場所を間違えている。
おそらく奥さん宛に書いた文章なのだろうが、何せ伍長閣下が今使っているスマホ……ス連内ではもうかなりの旧式化している奴で、メールの送信元が会社に問い合わせないとわからないほどであった。
ただ、旧式化しているのは、メールやラリンという無料通話アプリの性能が悪いだけなので、それ以外は最新機種顔同様の性能である。というか最新機種が旧式とそんなに変わっていない。
とその直後に、もう一通メールが届いた。
今度こそは……と思い内容を確認する。
そして、伍長は………
「ああ! もう! なんでだぁ!?」
スマホを地面に叩き落とし、右足で思いっきり踏んずけスマホをボロボロのバキバキにした。
「ええい! 証拠はいい! とりあえず私はこの目で入れるところを確認したんだから、9時30分! 国家指定危険薬物所持取り扱い法違反で現行犯逮捕する!」
「そんな……理不尽だ!」
「うるさぁい!」
問答無用で男の手に、黒く冷たい手錠が掛けられた。
なお、きちんと検査せずに逮捕すると、普通の警察官ならば明らかに違反的行為で処罰対象なのだが、伍長は連邦捜査庁という公務中はある程度の法律は適用されない特権付きなので、問題はない。
もし適用されるなら、初任務のもあれは窃盗罪にあたるので、逮捕されるべきなのだろう。
というか何気に男が声を発するのは初めてだったりする……。って! メタ発言はやめなさい
「って、あっ……。スマホ壊しちゃったな……。」
バキバキになったスマホを見下ろし、伍長ははげ激しく後悔した。ついでにいうとチャーチム首相はちょっと髪の量が少なかったりする。……その情報今いるか!?
「う~ん…、しゃあないか、」
本来ならばスマホで首相達の迎えを呼ぶはずだったのだが、どこかの誰かさんがバッキバキに壊してしまったものだから、連絡を取ることが出来ない。
ならばどうするか?
悩んだ末……
「おっ、そういえばこれがあったんだった……」
無線機を取り出した。
本来無線を使う場合は、事前に決められた秘匿周波数を決めそれで連絡を取ることにより、盗聴、傍受の可能性を抑えることが決められている。
なので、秘匿周波数に伍長さんもセットしようとしたのだが……
「あっ……」
もともと連絡はスマホでするはずだったので、そんなものは決めていない。
仕方がないので、念のため覚えていた首相の持っているはずの無線の周波数に合わせ、連絡を試みる。
ノイズ音が響き、数秒待つと、
『………ああ、B、首相です。どうぞ』
首相が応答する。一応傍受対策のため本名と所属と場合によっては階級は絶対に言わないようにする。
「ああ、私私、どうぞ」
『……私私詐欺の方ですか? うちはお金ありませんし、子供も孫もいませんよ? どうぞ』
「ちっがぁう!」
どこかで聞いたことのあるボケだな…。
「A、閣下だ! どうぞ!」
『ああ、閣下ですか。して、どうされたんです? どうぞ』
「ああ、迎えをよこしてくれ。どうぞ」
『わかりました、そちらに迎えに行きますが……、スマホはどうしたんですか? どうぞ』
「……。話せば長くなるが聞くか? どうぞ」
『あっ、遠慮しておきます』
あっけない態度だった。しかも無線を一方的に切られるかなしさ…。
「あのぉ…」
男がおずおずと訊ねる。おずおず過ぎておずおずしてきている、そのおずおず具合ときたらちょっと異常である。おずおずでゲシュタルト崩壊を起こしそうになった金髪男…。……何を言っているんだ?
「これ、恥ずかしいので何かかぶせてくれませんか?」
「……」
無言のまま伍長は羽織っていた自身のコートを脱ぎ、男の手に乗せる。優しいと思うか冷たいと思うかは、あなた次第です!
…………これ、何か違うよな…?
ついでにいうと、これの専売特許の番組を見たヨシフが、今度職場で機会があればやってみようと思った。




