3 大輝くんと、クラスのカップル
大輝くんは、友達が多い。
誰とも気さくに話せるし、コミュニケーション能力が長けているんだと思う。
さすが元・ガキ大将だなと常々思ってはいるが、口にしたことはない。
「宗志、お前先週貸したマンガ返せよ」
「あーすまん、また忘れてきた!明日こそ持ってくるわ」
「おまっ、先週からずっとそれじゃねーか!」
翌朝、一晩経ったらライフが戻ったらしい彼は、同じクラスの男子、滝野宗志くんと楽しそうにじゃれていた。
僕は一限目に行なわれるであろう、英単語の抜き打ちテストに備えて勉強していた手を止めた。そして自分の席から、そんな二人をなんとなく眺めた。
(大輝くん、元気になって良かった)
落ち込む時はとことん落ち込むけれど、立ち直りも早いのが彼の長所だ。
などと、微笑ましく眺めていた二人のところに、一人の女子が入っていった。
「宗志、おはよ」
「たくみ、お前もう大丈夫なのか?風邪」
“たくみ”と呼ばれている彼女は、同じクラスの須田たくみさんだ。
(確かに須田さん、昨日欠席だったな。風邪引いてたんだ…。)
「うん。それで一日遅れてごめんだけど、これ。」
「あぁ、これな。分かった。」
須田さんは、手に持っていた赤い小さな箱に白いリボンの掛かったモノをそっと差し出した。そして、宗志くんはそれを真顔で受け取っていた。
(あぁ、なんか…―――)
頬杖をつきながらなんとなくそのやりとりを眺めていた僕は、二人が…、宗志くんが、…いいなぁと羨ましく思ってしまった。
僕は昨日、たくさんのチョコを貰ったけれど、
女子達はなぜかみんな、目が血走っていて怖いぐらいだったし。もう押し付けるという表現がぴったりなくらいだったし。
あんな風に、一人の子にだけ思われて…あんな風に、ひっそりと貰えたら。
(―――幸せ、なんだろうな…きっと)
「な、なんだよっコレ!チョコか?チョコなのか?」
目の前でそれを見せられた大輝くんは、相当動揺しているのか、それともただ、からかおうとしているのか?いや、多分どちらも正解だろうな。
そんな、変なテンションでそう囃し立てた。
(大輝くん、空気読もうよ…)
そう思ったけれど、大輝くんの表情を見たらそれは言えないなと思った。
…なんか涙目になってる。
そっか、バレンタインデー昨日で終わったと思ってたんだもんね?かわいそうに、また凹んじゃってるよ・・・。
「「うん」」
そして大輝くんの質問に、宗志くんと須田さんは同時に頷いて応える。
あぁ、やめてあげて。
大輝くんが凹むだけだから。
ああでも、大輝くんから質問したんだから自業自得なのか。
そう思い直して、僕はまた目の前の、英単語の勉強に勤しむことにした。
(絶対今日、抜き打ちテストあると思うんだけどなぁ、なんで皆あんなに余裕なのかなぁ…)




