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奇妙な違和感

 翌朝、アルフレッド・フォン・ローゼンベルク伯爵と

 シオン・フォン・ローゼンベルク伯爵子息は、揃って奇妙な違和感を感じていた。


 アルヴィス侯爵家の本館で、当然のように使っている部屋。

 確かにこの部屋は、妻エレノーラが生前使っていた部屋で、

 エレノーラが里帰りした時も、夫婦の部屋として使っていた。


 けれど……。何かがおかしい。そこにシオンがやってきた。


「父上、なんだか奇妙な気分なのです。うまく言えませんが

 借りものの服を無理やり着せられているような……」


「シオン。それは俺も感じているんだ。なんだろうなこの違和感は?」


 そこへノーラがやって来た。


「公爵ご夫妻が良ければ朝食をご一緒したいと仰せです」


「リゼリアのことか?」


 ノーラは呆れたような顔をした。


「勿論、閣下のお嬢様と御夫君のお誘いです。

 リリアーヌさまの婚約が正式に発表されることになるので、

 事前にご報告したいとのご希望です。」


「そうか。すぐに行くと伝えてくれ」


「父上、リリーの婚約者は、第二王子殿下でしょうか?」


「多分な。行けばわかることだ」


 朝食室にはヴァレンティノ公爵夫妻とリリアーナそしてラインハルト王子

 それにステラをあやす、身なりの良い男児がいた。


「お父様。シオン。お呼びたてして申し訳ありません。娘たちの婚約が決まりましたので

 正式に発表される前にお知らせしておきたくて」


「リゼ、そうせくな。義父上、シオン座って下さい。

 食べながら話しましょう」


 二人はなんとも怪訝な顔で席に着いた。


「それでこの少年は一体……」


「彼はアストラル皇国 フィクトス公爵家の御子息でクラウス。

 この度アストラル皇国との友好の証としてステラとの婚約が纏まった。」


「待て待て。一体何がどうしたら赤子と幼児が婚約することになるのだ」


「僕は幼児では御座いませんよ。それに私がステラ様に一目ぼれをして

 婚約を纏めて頂きました。

 お孫さんは大切にいたします。お義祖父さま」


 挨拶が終わると、シオンはステラに

 精霊界の桃をすりつぶしたものを与え始めた。

 ステラが桃を舌で押し出すと、ペロリと舐めとりもう一度スプーンを口へ。

 何度でも根気よく付き合って、

 とうとうステラがゴクンと飲み込むと、にこりと笑う。


「上手に食べたね。じゃあ次はミルクだよ」


 まるで乳母のような手際のよさだ。

 それをじっと見つめていたアルフレッドは急に立ち上がり、

 クラウスを指さして叫んだ。


「お前、龍だろう!」


「おい!ニル、貴様なにが公爵だ!何やってんだよ!」


「ほら、やはりバレたでしょう?先に会っておいて正解でした」


「そうだなぁ。公式の場で騒がれては苦心も水の泡になるところだ。

 しかしリゼといい、アルといい、ローゼンベルクは妙に感がいいな」


 そうしてアルフレッドがそれ以上騒ぎだす前に、昨日の一件を暴露した。


「どーして俺まで貴族に戻らないといけないんだよ。大人は検査されないだろうが!」


「それがな。しばらくは全員検査だとよ。見逃しがあちゃいけないとかでな」


「だから、セーラも男爵夫人になったのよ。おかげで夫のオットーは男爵だしね」


「オットーが男爵だぁ。あいつが貴族なんて柄じゃないだろうが」


「仕方がないわ。セーラが皇国に行きたくないと言うし、私もセーラがいなくなるの嫌だし」


「お前の都合か?都合なのか?」


「もう、騒がないでよお父様。これは国の機密なんですからね。シオンもよ」


 そう。既に決まったことだ。

 それにアルフレッドもシオンも皇国民になりたい訳じゃない。


「しかし、この法律。反発を食らうぞ。誰も皇国に行きたい訳じゃないからな」


「そうね。でもありがたいことに、今なら平民の魔力持ちは少ないと思うの

 貴族でも魔力持ちは、あまりいないしね。

 でも、これから龍の娘が増えて、龍の血がいつかは平民にも流れる筈よ

 だからこれは予防的措置なの」


「龍の娘かぁ。お前とステラが番。リリアーナも血が濃い

 確かに知らない間に血が広がっていくだろうなぁ」


「そういう事ね。今はまだ皇国にしか魔法学校はないし、

 実際にこの国に必要になるのは、ずっと先だろうけれど。

 いずれはこの国にも魔法使いが増えるかも知れないわね。」


 それは魔力持ちにとってはわくわくすることだけれど。

 魔力を持たないものは、きっと違う。

 だから、魔力持ちと持たないもので国を分ける

 そのためにアストラル皇国があるのだから。


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