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アストラル皇国

この黒龍は龍とは思えないほど、人間を熟知している。

「アストラル皇国は魔術師が起こした国だと言われています。

 しかし実際にオアシスを作ったのは黒龍さま。

 どうしてアストラル皇国では、黒龍の存在を秘していらっしゃるのですか?」


 リゼリアの質問にシュヴァルツは苦笑した。


「アストラルは虐げられた人々のために興した国だ。

 魔力の元が精霊や龍などと知られて良い事はない。

 初代皇帝と私は契約を結んだ。そして皇帝は私の娘を娶った。

 皇帝の一族は、私の血族でもあるのだ。

 それに、私も公爵位を持っているよ。

 フィクトス公爵の名前を、貰ったからね。大昔に婿に譲ったけれどね。

 それでもフィクトス公爵家の名前は便利なのだ。

 娘が生まれれば、フィクトス家の娘として育てられるし

 なにより娘を皇后とすることで魔力を分かつことが出来る」


「なるほど。

 それは良い解決方法ですね。プロセイン王国でも取り入れられる」


 ニルが感心したように言う。

 私も驚いた。

 王家の呪いを解く方法がこんなに簡単だったなんて。


「それでは戻ったら、早速レオンとマリアに教えてあげましょう

 定期的に龍の娘を娶れば、二度とあの悲しい出来事は起きないわ」


「もう一つ提案があるのだがな。

 アストラル帝国では、平民の魔力持ちは

 全寮制の学園で12歳から15歳まで魔力の取り扱いを学ぶ。」


「そして皇族や貴族は通学または寮に入って学院で魔法を学ぶのだ。

 どうかな、そこの小さなお姫さまも12歳になったら学院に留学させては。

 良ければ王子様方もな」


「なるほど。確かに龍は生まれてすぐ魔法を使う。

 学ぶ必要を感じない。けれど人間はそうもいかないのだな」


「そういえばレオンも魔力は持っているのに

 使っているのは、見ないわね。

 魔力の使い方は勉強しないと判らないのかも。

 あれぇ、私はなんとなく分かるけど?」


 ニルが困った顔をして白状した。


「君はほとんど龍みたいなものだから……。」


 なんですと?一体いつ私が龍に!

 そしたら、ニルが耳元で理由をこっそり教えてくれた。

 私は耳まで真っ赤になった。

 シュヴァルツは素知らぬ顔で見て見ぬふりしてくださる。

 古龍さまの前で恥ずかしい。

 全くニルったら、あとで覚えてらっしゃい。


「マリーも見えすぎる目で苦労しているわね。

 魔力をうまく制御できないんだわ。

 子供達は学院に通うにしても、魔法の先生をアストラル帝国から

 派遣して頂くことは出来るでしょうか?」


「政治的なことは、皇帝を通して貰う必要があるが……。

 アストラル12世は、まだ若く柔軟だ。

 私からも頼んでおくが、それぐらいは手配してくれるだろう。」


「ありがとうございます。シュヴァルツさま

 戻り次第 王と話を詰めて正式なお話を進めさせましょう」


 なんだかニルヴァが外交官みたいな口ぶりだ。

 王宮生活は無駄ではなかったらしい。

 戻ったら爵位を貰わないといけない。

 そしてリリーとクラウスを婚約させて、成人したらクラウスに爵位を譲る。


 私たちは精霊界か自然界でのんびり過ごせるし

 しかも龍の娘が生まれたら、クラウスが養女にしてくれるだろう。

 フィクトス家みたいに、定期的に王妃を立てれば、プロイセン王家も安泰だ。


 すっかり安心して帰ろうと思ったら、

 ステラを絶対に離そうとしないクラウス問題が残った。

 いくら龍の番だといっても、生後三ヶ月の娘を幼龍に託すことなど出来ない。

 困り果てていると、シュヴァルツさまがこんな提案をしてくれた。


「申し訳ないが、クラウスをお預けしても良いかな? 

 これでも龍だ。役にたつこともあろう。

 それに子供たちに魔法を教えることもできるぞ。

 学ぶのもよいが、子供同士、自然に覚えていくのも良い方法だろう。

 どうかな?」


「はい!お父様。ぼくはきちんとステラを守ります。

 あと、お義母様とお義父様の言う事をちゃんと守ります。」


 見事なぐらいの良い子のお返事だ。

 多分ステラからひと時も目を離さないだろうけれど。


「クラウス。ステラは人間の女の子です。

 子供だから喧嘩することも、意地悪されることもあるかもしれません。

 それでも、ちゃんと我慢して報復しないでいられますか?」


 クラウスはびっくりしたみたいだ。

 龍の方が我慢するなんて考えたことも無いのだろう

 しばらく考えていたが、質問をしてきた。


「ステラが危ない時は守って良いのですよね。

 ちょっとぐらいの仕返しは良いですか」


 ニルヴァがにやりと笑った。


「そうだなぁ。たとえば生意気な奴を池に投げ込むとか、ずぶ濡れにしてやるとか

 木にひっかけておくとか、ちょっとしびれさせるとか、

 ケガしない範囲なら構わないぞ」


 ニル、あなたってば、そんなに色々やらかしていたのね。

 クラウスはミニ ニルヴァなのかぁ

 幼い分 ニルよりよほど危なっかしい。

 後でニルをクラウスのお目付け役にしよう。


 クラウスはにこにこして約束した。


「はい、お義母様。僕ちゃんと我慢します。王子たちとも仲良くします」


 これは受け入れるしかないだろう。そうでなければステラを連れ帰れない。

 私たちはこの小さな龍と一緒に帰った


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