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黒龍と皇国

 ゆっくりと進む馬車の列。


 一つ目はニルヴァ夫妻。ニルが馬車では妻といるのは決まっている。

 二つ目が子供たち。ラインハルト王子と従者のシオンそしてリリアーヌ。

 三つ目の馬車に生まれて三ヶ月のステラと乳母、そしてセーラ。


「ラインハルト王子、旅は初めてですね。

 辛くなったらいつでもこのシオンに教えてくださいね」


 シオンが王子を気遣うと王子はかぶりを振る。


「シオン、僕はライだよ。シオンがお兄ちゃん リリーは妹」


 シオンはしばらくライを見つめて考えていた。


「シオン、ライは王子ちゃまじゃなくなりゅからライでいいの」


 シオンはリリアーヌとラインハルトを見る。

 ふたりは自慢そうな顔をしている。


「なるほど。ではライ、リリーこれからは僕の言う事をよく聞いて

 貴方たちが辺境で生きる方法を教えますよ。

 リリーもライも王宮に帰るつもりはないのですね。」


 リリーがよくできました。と言うように頷くと


「ライ、シオン、ちゅわって!」

 と笑う。


 こうして、ライとリリーそしてシオンは仲間になった。

 シオンがかなり年上だから、ライとリリーはきちんとシオンの指示に従った。

 その様子は小さなパーティのようだった。


 子供達の立ち位置が変わったのを、大人たちはすぐに気がついた。

 そして、それでも良いと思った。リリーに王宮は窮屈なのだろう。

 テオドールが王になるときには ライの魔力を根こそぎ持っていっても

 リリーがそれを補うだろう。


 未来については、またその時に考えればよいのだ。

 龍はとても長生きで、龍の娘はこれからも生まれるだろうから。

 未来の形が少しだけ変化したようだ。

 それでいい。

 誰だって未来の設計図を自由に描けるはずだから。

 設計図というものも、時がたてば何度でも引き直すことが出来る。

 そういうものだから。


 こども達が自分の足で歩き出したのを見て

 ニルもリゼも自分たちの決断を喜んだ。

 よい決断をしたのだろう。


「ニル、領地に着いたらあなたは黒龍さまを訪問するのでしょう?

 黒龍さまはどんなお方なの?」


「私も、若い頃に一度あっただけだ。その時すでに随分なお年でいらした。

 古龍という雰囲気でいらしたなぁ。

 皇国は、知っての通り高い山脈に隔てられている。

 しかも 広大な砂漠が広がる国だ。

 黒龍さまがその地を割って、地中から水を引き出し

 広大なオアシスと川を作った。


 黒龍さまの血を引く者が皇帝だという。

 アストラル皇国は魔法の国らしい。平民でも魔力を持つそうだ。

 新興国のプロイセン王国と、そもそも成り立ちが違う。


 実はそのアストラル皇国ですら新興国と見下す国もある。

 精霊が住むと言うルーンフェル王国。ここは森に囲まれた精霊国家

 すでに2千年以上の歴史があるとか。ただ、古代魔法は失われて久しい。


 一番活気があるのがセレスティア王国。王国とはいうが、海運と商業の国

 実力主義で平民の力が強いらしい」


 プロイセン王国は一番地味だ。

 鉄鉱石が産出されるので、鉄鋼業が中心の職人の国

 華やかさとか礼儀には疎い国民性だ。

 そんながさつな民にとっての父親のような存在が亡き法王だった。


 歴史も浅く、ニルが守護し始めてようやく国らしくなった若い国。

 他国との交流もいつも一番最後に廻されてしまう弱小国。

 だから蒼天の王ニルヴァの守護は民の誇りなのだ。


 実を言うとアストラル皇国との交流はない。

 小さすぎて見過ごされてきたようなのだが、

 最近アストラル皇国から使者が来ている。


 どうやらすべての王国はアストラル皇国の支配下にあるらしい。

 レオンが王となって4年。

 そろそろ国交を結び、アストラルの法を施行させたいらしい。


 アストラル皇国は王国の独立を認めている。

 唯一希望するのが、魔力持ちを皇国に引き渡すという法律だ。

 勿論王族や貴族は規定外。平民の魔力持ちを保護したいという。


 その件もあってニルヴァが黒龍に秘密裏に対面を求めたのだ。

 若い王をないがしろにして、皇国の力を背景に勢力を強め

 王権を弱めたい貴族たちがいる。

 そのあたり、皇帝の意図を知りたい意向もあるのだ。


 いずれレオンは公式にアストラル皇国を訪問する。

 それなら少しでも王権を強化しておきたい。

 アストラル皇国がレオン王を支持してくれればよいのだが。


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