戻って来た日常
ニルヴァは久しぶりに大空を伸び伸びと飛んでいた。
なにしろ父親になったのだ。気分は最高に良い。
その頃リゼリアも日常を取り戻し始めていた。
王妃はリゼが好きなスイーツとお茶を蒼天宮に準備させていたのだ。
最初こそ恥ずかしがっていたリゼだが
相手はあのマリーである。
さっさとリゼを呼び出すと、のんびりとお茶が始まった。
「えっと、マリーも赤ちゃんが出来たんだ。」
「そうよ。それも双子だって。幸いなことにつわりもないのよ」
「そういえば、私もないみたいね」
「そうでしょうねぇ。それだけパクついていて、つわりな訳ないわよ」
私は次に食べようとしたチーズケーキから、そっと手を離した。
久しぶりだから、つい食べ過ぎたみたい。
「気にしないでどんどん食べなさい。お腹に赤ちゃんがいるのよ。
しかも龍の子供。食べて体力つけないと」
「そうよね。任せて!私は食べるの大好きだもの」
マリーは大笑いをした。
笑いすぎて、目に涙まで浮かんでいる。
私の話のどこに笑いのツボがあったのでしょう?
「ごめんなさい。あなたがあんまり変わらないから。」
「大丈夫?もしかしてマリー虐められた?」
「王妃を虐めるのは、かなり大変よ。しかも王が私にべたぼれなのに」
「でも。マリー。なんだか疲れているよね」
「まぁね。なにしろ癒し担当のリゼがいなかったし。
わたしの目はうんざりするぐらい見えすぎるしね」
「そっかぁ。ごめんね。ひとりにして。
これからは一緒だから」
「そうね。これも運命よね。
だってまさか本当に、二人とも妊娠するなんてね」
「確かに。マリーの方は男の子で決定でしょう?
だって二人だし。
女の子はそんなに生まれないらしいし」
「多分そうだとおもうけど。リゼはどっちか分からないよね」
「生まれてみないとね。
女の子は普通に赤ん坊として生まれるんだって。
でね。龍の男の子はとても貴重でめったに生まれないんだって」
「それなら多分リゼのところも女の子よね。
お嫁さん候補かぁ。今から大事にしないとね」
「こればっかりはね。
龍の血を引く男どもは、自分で相手を決めるからねぇ。
親の想い通りにはならないかもよ」
「止めてよリゼ。フラグになったらどうするのよ」
「ごめん、ごめん。でも幼馴染ってかなり有利だよね」
生まれてもいない子供のことで、ここまで盛り上がるなんて。
うっかりしたら過保護になりそうだわ。
ニルは絶対に過保護に違いないから、ここは私がしっかりしないと。
そんな風に考えて、それから反省した。
初めての子供に少し気負い過ぎているみたい。
それから私は、どんなお母さんだったら嬉しいか考えてみた。
私がすっかり考え込んでいるので、マリーが心配したみたい。
「リゼ、どうしたの?何か心配事?」
「違うよマリー。
私、もし私が子供だったらどんなお母さんが欲しいか考えていたの」
「リゼっていつも変なこと考えるわね。
それで、答えは出たの?」
「うん、私が子供だったら、お母さんには笑っていて欲しいかな。
お母さんが幸せだったら、きっと私も幸せだから」
マリーは嬉しそうに笑った。
「それじゃぁ簡単ね。リゼはリゼのままで良いってことだもの」
「そーみたいだね。マリー私たち、いっぱい楽しもうね」
王妃は嬉しくなった。
こんなに気分が軽くなるのは久しぶりだ。
やっぱりリゼは私の癒しだと実感したのだった。




