合同結婚式
レオンとマリーは15歳
そして私は13歳
私たちは結婚式に臨んでいる。
国王陛下と蒼天の王の結婚式。
王国中が歓喜に沸いている。
王都の窓辺という窓辺。
街道の両端にも、花々が飾られて、王都は花に埋もれてしまった。
パレードでは、馬車に向けて花がまき散らされて、
リゼもマリーも髪やドレスに花びらがくっついている。
それが楽しくて、リゼも落ちて来た花々を、民に向けて投げた。
民も嬉しかったらしく、更に大量の花が投げ入れられる。
きゃぁきゃぁと笑うリゼをニルヴァは愛おしそうに見つめていた。
ようやく
ようやくだ。
リゼに初めて会った日は、クッキーを前に涙を流す細っこい娘だった。
いまは、ふっくらと乙女らしい丸みを帯びた美しい乙女に育った。
神龍をトカゲもどきと蔑み、魔力があるから飼っていると嘯く輩。
リゼを魔力持ちを孕むための道具としてしか見ない輩。
そんな貴族たちがいるというのに、リゼは笑顔を絶やさない。
ただ、親友を幸せにしたいと祈っている。
優しい娘なのだ。
そしてその優しさは王妃を癒している。
マリーは、あまりにもよく見える目を持っている。
親友をあざける人々も自分を若いと蔑む人々のことも全部見えてしまう。
そのままなら前王妃のように闇に染まったかもしれない。
そのことをマリー自身が自覚している。
だからマリーはリゼに執着する。
リゼの近くにいると、空気が穏やかになる。
居心地がいい。
あの王宮にとって、リゼはオアシスのようなものだろう。
けれど。
そのオアシスは、しばらく休業することになる。
ニルヴァは蒼天宮につくと、
すぐにリゼをお姫様抱っこして寝室に引きこもった。
事前に食べ物や着替えなどは、控の間に入れておくこと。
そして蒼天の間には誰も立ち入らないことを厳命している。
「リゼ、疲れたかい?」
「風呂にはいる?」
そう聞かれて私はこくこくと頷いた。
なんだかニルが怖い。
結婚が何を意味するかは聞いているけれど
できればなるべく先がいい。
けれど、その選択は浅はかだったと思い知った。
ニルヴァはすぐに温泉を展開した。
かなり色々調べたらしく、温泉は自然の中に点在している。
ここは既に王宮でも、王国でもないのだろう。
さやさやと風が心地よく吹きぬける。
抱っこされたまま、白い池のような温泉に浸かる。
気がつかないうちに、私もニルも生まれたままの姿になっていた。
白い不透明の湯が、身体を隠してくれていることに安堵していると
ニルがキスをしてきた。
ニルはゆっくりとキスを落とす。
顔に首筋に、胸に
あまりに甘いキスに私は湯あたりしてしまった。
「ニル、少し湯あたりしたみたい」
ニルはそっと私をベッドに運んだ。
何時の間に?
ここはどこ?
そんなことを考えられたのは、ほんの僅かでしかなかった。
ニルはとても丁寧に。
そしてとても執拗に
私の全身にキスをした。
知らなかった
キスがこんなに甘く切ないものだなんて。
ニルは本当にどこも逃さない
指の間から、口の中まで。
むさぼるように
ゆっくりと堪能していく。
捕食者という言葉が浮かんだ。
そう、私は哀れな獲物なのだ。
身体を揺らされながら、私はやっと理解した。
マリーの警告の意味を。
長いような
永久に続くような
短いような
刹那のような
そんな時間が過ぎていく。
朝か夜かもわからない。
お腹がすくとニルが給餌してくれる
ほとんど、口移しで。
そして
ゆっくりと私を貪る。
うつらうつらと眠り
ひたすらに愛される
そんな時間……。
ガンガン
ドンドン
けたたましい音が楽園中に鳴り響いた。
ニルヴァは煩そうに眉をひそめた。
私たちは蒼天の間に戻り。扉が開いた。
扉の前には、セーラとノーラ
そして医師団を引き連れた王妃が待っていた。
王妃が合図すると医師団が私を取り囲む。
ニルは諦めたように私を医師たちに譲り渡した。
「相変わらず空気の読めない奴だな、
お前も新婚なのだから、他人に構わず旦那の面倒でもみていろ」
ニルの憎まれ口にひるむ王妃ではない。
「半年経ちました。半年です。
私は王妃として神龍さまの番の健康を確認しにきただけです」
そこに医師団長がうやうやしく報告にやってきた。
「ご懐妊です。出産時期は王妃陛下と同じころになるでしょう。
ただし、王妃陛下はお二人お腹にいらっしゃいますが
番さまのお腹にいらっしゃるのはお一人です」
「大丈夫だ。医師殿。子供ならいくらでも仕込んでやるさ。
リゼは若いからな」
あまりにも直截な言い方に、王妃は顔を赤らめた。
「神龍さま、お聞きの通りリゼリアは身重です。
生まれるまでは自重なさってくださいね」
王妃に睨まれただけでなく叩きつけるように命令されて
ニルも大人しく頷いた。
そして私の横にくると
「ありがとう。」
そう言ってつむじにキスをした。
「そろそろ、お仕事なさってください。民が待ちかねています」
王妃に言われてニルは大人しく仕事に向かう。
半年だって。
半年も……。
私は恥ずかしくてベッドにもぐりこんでしまった。




