新しいお家?
レオン王は、無駄に有能だった。
神龍を国の加護者と正式に認定すると
何と王宮の中に神龍の為の宮殿まで建設し始めた。
もとは7色姫が暮らす離宮を、蒼天宮として作り直してしまった。
しかも、
「民の税金ですからね。無駄使いと言われたくないでしょう?」
などと言い募り
時々は龍の姿で、王都を飛ぶという役割まで押し付けてしまったのだ。
「レオン。あいつ絶対に嫌がらせしてやがる。
ちょっとばかり池で水浴びさせただけなのに。
龍が仕事するなんて、聞いた事ない。
もしも、他の龍に知られたら、俺は笑いものだ」
ぶつくさ言いながらも、きっちり夕刻には空を飛ぶニル。
文句を言いにいったら、
「5千万ゴールド。蒼天宮の工事代」
ぼそりとレオンに呟かれ、すごすごとお仕事に行くようになった。
「面白いわねぇ。ニルヴァ様も。
何も隣に住むことないって気づいてないのかしら?」
マリーは可笑しそうに笑う。
「そーなのよねぇ。ニルってば生まれてもいない龍の娘のためなら
嫌いな王都だろうと、王宮だろうと。嬉々として住むんだもの。」
私がそう言うと、マリーは、あきれた顔をする。
「リゼが、龍の姫は王子たちの側で育てないとダメだと言い張るからでしょう?
幼馴染で婚約者って萌えるわよねぇ、なんて!
完全に、あなたの個人的な趣味じゃない。
龍は人間について疎いから、すっかり信じ込んじゃって」
「でも、萌えるじゃない。
神龍さまが、娘のためにせっせとお仕事する構図。
なかなか美味しいと思うの」
「言っておきますけどね、リゼ。
私の息子も、あなたの娘も、まだ影も形もないんですからね。
第一私たち、まだ結婚もしていないんですからね」
「それねー。めちゃくちゃ面倒くさいよね。
式典の練習とか礼節とかさ。
しかもドレスの仮縫い。何度やればいいのやら」
「確かにねぇ。私はピン打ちが一番苦手。
じっと立ってないといけないし、信じられないくらい
細かくピンを打つよねー」
余程苦手らしく、リゼも身を乗り出して同意している。
でも、リゼは判っているのかしら?
赤ちゃんを産むってことは……
そりゃ神龍さまも張り切るってもんでしょう。
リゼのやっていることは、やがて自分に帰ってくる。
結婚したら、しばらく
もしかしたら妊娠するまで、この能天気な親友には会えないだろうと
マリーは思う。
ご愁傷様。
私の結婚相手が、人間で良かった。
そう安堵しているマリーが、自分も甘ちゃんだったと
思い知ることになるのは、もう少し後だ。
ゆったりと大空を飛ぶのは龍の本能を刺激する。
いつも窮屈な人型で過ごすニルヴァは、夕刻のひと時が
実はお気に入りの時間だったりする。
娘が生まれたら、娘を乗せて飛ぶのもいいなぁ
きっと喜ぶだろう。
龍はとても強い。
多分この世界の覇者だ。
けれどもそれは雄限定なのだ。
龍の番は大抵人間の娘だ。
そして龍の娘は龍化出来ない。
膨大な魔力はあっても、その力はほぼ人間と同じ。
龍の血が人間に流れるのは、それが理由。
龍の娘は人間と結婚し、やがて龍の血は薄れていく。
その代わり人間が魔力を持つことが出来る。
もとは龍の魔力だから。
娘のために、ほんのしばらく人間の都に住むなんて苦でもない。
龍の寿命は長いのだ。
龍の娘は違う。人と同じ寿命しか持たない。
龍の娘が、龍の番となれば。番は魔力を与えるだろう。
自分の娘は少なくともひとりは王家に嫁ぐ。
王に龍の娘が嫁ぐ。
そうすれば王は、片割れの魔力を必要としない。
だから片割れまで龍の娘を娶らなくても問題ないのだ。
龍の娘はひとりで良い。その相手が王になる。
リゼはすっかり娘を二人生む気でいる。
それならそれでいい。
たっぷりリゼを可愛がってやる理由ができる。
だからニルヴァは訂正なんてしない。
「神龍さまだ!」
「蒼天の王ニルヴァさまぁー」
民が嬉しそうに声をあげる。
ニルヴァはそれに応えて、わざとゆっくりと空を舞う。
なかなかいいものだなぁ。
ニルヴァはご機嫌で今日も空を舞う。




