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王家の呪いの謎

 王都の官僚たちは、きっとこの数ヶ月で、何年分もの仕事をしていると思う。

 とにかく、人が死に過ぎた。王族のほとんどが死んでしまったのだ。

 誰がこの結末を予想しただろう。

 あまりにも悲しみが大きかったから、

 その分レオンの戴冠式は盛大なものになった。


 みんな希望と未来を知りたかったのだ。

 そんな重すぎる期待をレオンは朗らかに背負って見せた。

 王というものを、一度だって見たこともないくせに、

 レオンは王様そのものだった。


 法王から王冠を授けられた時も

 民の前にその姿を現した時も

 パレードの間でさえ

 彼は生まれついての王だと証明してみせた。

 レオン陛下万歳の声が、国中に満ち溢れていく。


「どうした。何がそんなに悲しいんだ。今日はお前の兄の戴冠式だろ?」


 ニルは私を抱き上げて、心配そうな声をだした。


「不思議だと思っただけなの」


「だって、本当なら死んだのは、私とあなた」


「戴冠式の主役はカールで、王妃はエリーゼだった」


「まさか……。後悔しているのか?自分が死んだ方が良かったと?」


「いいえ、違うわ。

 違うけれど。でも、運命が過酷すぎると思っただけ

 どうして、めでたし、めでたしで終われないのかしら?

 運命の楔を、どうしたら破ることができるのかしら?」


「お前が知りたいのは、王の子供の運命について、なのか?」


「そうよ。戴冠式が終わったら、マリーはレオンと結婚する

 そうしたら、また繰りかえすことになるのでしょう?

 まるで呪いのようだわ。

 片割れが生き、片割れは死ぬ。

 そんな運命を背負って、レオンやマリーは幸せになれるの?」


「リゼリア。きちんと言ってくれ。お前は何が言いたいのだ?」


 私は黙って考え込んだ。

 なにが言いたいのか、よくわからなかったから。

 でも、今伝えなければいけない。それだけは確信していた。


「あのね、ニル。あなたを責めるつもりは全くないの。

 それだけは信じると約束してちょうだい」


「あぁ、信じるとも。だから聞かせておくれ」


「誠実王は、目の前で兄が死んだのを見たのよね。

 きっと王は死ぬ覚悟をしていたはず。

 そして希望に満ちていた兄が死んだ」


「あぁ、なるほど。

 まるで俺が責められているように感じるがそうではないのだな?」


「ええ、そうよ。責めてはいないわ。

 でもきっと誠実王は、自分を責めたと思うの。

 兄の運命を、自分が横取りしたように感じたかも知れない」


「人間は、そんな風に感じるものなのか?」


「良かったわ。ちゃんと伝わった。

 だからきっと誠実王は、レオンに会わなかったのじゃないかな?」


 上手く伝わるだろうか?

 レオンは一度も家族を見てさえいない。

 だからきっと罪悪感を持つことはないと思う。

 だってレオンにとって、

 王も王妃もカールも、見たことも無い人たちなのだから。


「わかった。つまり誠実王は、レオンを隠し、存在しないものとすることで

 カールや王妃に、王家の呪いを実感させなかった。レオンにも。

 それほど、兄の死が誠実王の心を傷つけていたと言いたいのだろう?」


 良かったわ。伝わっているわね。


「つまり、王家の呪いは存在しているけれど、

 今はレオンもマリーも、その恐ろしさを実感していないの」


「どうして欲しいのだ。

 私が死んでも、王家の呪いは解けないぞ。

 そもそも、龍の血が足りないから、二人も育たないのだからな」


「つまり、龍の血が濃ければ、王族は増えるという訳?」


「そうなるだろう?普通。

 どうしたって、王が王として立つには膨大な魔力が必要だし

 それはひとりでは無理なのだから。

 王の兄弟の魔力は、どちらか片方に集中する。

 だから、片割れが死ぬ。」


「魔力を補う方法はないのかしら?」


「ないわけではないが……」


「あるのね!もったいぶらないで早く教えてよ」


「だって、絶対に怒るだろう?」


「レオンとマリーが幸せになるのに、どうして私が怒るのよ!」


 はぁー

 ニルはわざとらしくため息までついて見せた。


「お前が、言えと言ったんだからな。おれのせいじゃないからな」


「リゼが女の子を二人生んで、レオンの子供たちと結婚させるんだ。

 龍は魔力を伴侶に与えることができるからな。

 龍の娘なら、当然できるようになる」


 赤ちゃんを二人も生めと言われてリゼは真っ赤になった。

 しかも言い出したらニルは止まらない。


「レオンの子供たちが大人になる前に、

 娘たちと結婚させないと間に合わなくなる。」


「リゼも、もう12歳だし早く結婚しよう」


「いい加減にして!」


「ほら、怒ったじゃないか。怒らないと言ったくせに」


 喧嘩をしていたら、

 その騒ぎを聞きつけてレオンがマリーと一緒にやって来た。


「なんだ、簡単よ レオンとマリーが赤ちゃんを産むのを

 3年ぐらい延ばせばいいのよ。

 そうしたら、急いで結婚する必要がないもの」


 なんの話かときょとんとする二人にリゼは説明した。

 そうしたらレオンは、成る程と頷くと。


「女性の結婚年齢12歳に下げればいいんだな

 リゼ、早く龍の娘を産んでくれ」


 と、言い出した。


「何、言ってんのよ。自分たちの結婚式だって一年後のくせに」


 するとマリーも頷いた。


「合同結婚式にしましょう。来年ならリゼも13歳だし。

 13歳なら早すぎるって程でもないわ。

 昔、降嫁した姫君は大体12~13歳でけっこんしていたし。」


「そうだね。合同結婚式なら、きっと子供たちだって

 同じくらいに生まれるだろう?そうしよう。

 どうせ準備を進めているんだ。

 リゼ達のが加わっても、遅れたりしない筈だよ」


「そうだな、レオンも王として立派になったな。

 いやぁ、素晴らしい。合同結婚式楽しみだね。リゼ」


 あっと言う間に、合同結婚式が決定してしまった。

 しかも、大人たちまで、呪いが消えると大喜びしている。

 ニルによれば、龍の娘と結婚したら、あと数百年は

 あの悲しい呪いは起きないそうだ。龍の血って凄いのかも。

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