急行軍
ようやく旅って感じになってきた。
ゆっくりと馬車に乗り、景色の良いところで休息をとる。
とくに急ぐことも無い旅。
まぁ本当なら急がないといけない筈なのだろうけれどね。
鳥がお手紙を運んできたら、それからは急展開が待っていた。
あれよあれよという間にレオンが王子様みたいにお洒落な服を着せられ
なんとニルが神龍の姿になると、レオンを背中に乗せて
あっという間に飛んで行ってしまった。
そうしてのんびりしていた筈の旅は
急行軍に早変わり。
こんな時に備えて酔い止め薬はたっぷり用意している。
それにセーラは治癒ができるからね。
私は藤姫を自分たちの馬車に連れ込んだ。
「ニルがいないから一緒に馬車に乗りましょうよ」
「いいけどね。どうせレオンの事を知りたいんでしょう?」
私は、おもいっきり頷いた。
「だって、凄く素敵な服着てたのよ。まるで王子さまみたい……」
そう言いかけて私は、声が止まった。
恐る恐る藤姫を見ると、藤姫はこくりと頷いた。
「本当に?本物の王子さまなの?」
「そう、みたいね。お祖父さまから聞いていないの?
王様から預かったらしいわよ」
「だったら龍の背中に乗るのもわかるけど、
でもすごく急いでいたよね」
「国王陛下と王子殿下が亡くなったらしいわ」
「えっ!」
「なんで、マリーはそんな事を知っているの?」
「今回私たちが王都に行くのは、レオンの即位を補佐するためなの」
「それ、もしかして反逆じゃ」
「違うわよ。バカね。
アドルフ辺境伯家はフリードリッヒ11世陛下から
密命を受けていたの。
レオン殿下を守り、必要な時が来たら即位させるように」
私は何も言えなかった。
いま、マリーは王をフリードリッヒ11世陛下と呼んだ。
それはつまり、王は死んだ。
国王陛下はもういらっしゃらない。
上手く声がでない。しゃがれた声で尋ねた
「カール王子は……」
藤姫は私を抱き寄せて。耳元で呟いた。
王子が王を殺した。
そして王はそれを知っていて魔法を仕組んだ。
自分が死んだとき、愛息子も一緒に逝けるように。
それはひどいと私は思った。
それじゃぁレオンは?
レオンは都合のよい歯車じゃないのに。
「レオンはそれでいいの?」
「どうかなぁ。でも私はレオンを支える。レオンと約束したから」
「王妃になるのね」
「最初はね。義務だと思っていたの。
でもね、レオンは私を愛しているって言ってくれたの」
「まぁ、プロポーズされたのね」
「そうよ。その時、レオンは私だけだと約束してくれたの。
だから、瑠璃姫の居場所はないわよ」
「うれしゅうございます。王妃陛下」
私はちょっと気取ったカティシーをした。
「いいこと、リゼ。あなたは私の親友なんだからね。
王宮にも付き合ってもらうわよ」
「それは無理だよ。私に女官や侍女は務まらないわ」
マリーはため息をついた。
「当たり前でしょう。王宮の女官や侍女を舐めすぎよ
リゼの役割は、ただのお友達よ」
「ひどいわ。そこまで惨くないと思うわ」
私はセーラとノーラに助けを求めたが、
二人とも首をふるだけだった。
私の評価って……。
その時、また鳥が現れてマリーの肩に止まった。
しばらく何やら呟いている。
「王宮からのお使い?」
ニルが凄い勢いで飛んで行ったとき、
お祖父様と辺境伯も、恐ろしい速さで馬を走らせた。
一部は追いかけたけど、大半は私たちと行軍している。
どうせお祖父さまたちは、とっくに王宮にいる筈だ。
「レオンがブチ切れたらしいわ」
「それ、悪くないと思うの」
「でも、早く即位しないといけないでしょう?」
「そんなの、王様になったらブチ切れられないのだから
今、思いっきり怒ったらいいと思うよ」
「すごいねー。リゼの思考って斜め上すぎるけど
時々正解だったりするのよねー」
「確かに、陛下になったら我が儘言えないものね
わかった!レオンにもっとやれ!って言っとく」
マリーがそう言って鳥を飛ばしたので、
私はちょっぴり反省した。煽るのは違うかも?




