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混乱の王都

 法王を装備に身を固めた騎士たちが取り囲んだ。


「あなたの身に危害を加える気はありません。

 我々の言う通りに動いて下さればね」


「ほぉう。 神殿に土足で踏み込むような輩に脅されるつもりはないが。

 しかし、ここは神の御前。

 希望があるなら言うがよい」


「なぁに、簡単なことですよ。

 カール王子の即位を認めて下さればよい。

 王の冠は法王が授けることになっておりますからな。」


「それは、ちぃとばかり無理な注文じゃな。」


「断るなら我らにも覚悟があるぞ!」


「そんなに気張るではない。

 それでは教えて貰えぬか。

 どうやったら、死者に冠を授けることができるのかを」


「なにを世迷い事を。カール王子が死ぬなどと!」


「事実じゃからのう。死んでしまったものは、どうしようもない」


「まさか!」


 そこに礼拝堂に向かった一団が、慌てふためいてやって来た。


「隊長! 大変です。カール王子が亡くなっております」


「なんだと!」


 隊長と呼ばれた男は、蒼白になったが、やがて剣を下した。


「皆、剣をすてろ!。我らは逆賊になった。

 ここで逆らえば家族にまで類が及ぶぞ」


 それを聞いた騎士たちは次々に剣をすてて投降した。


 彼らは神官によって、地下牢へと連れていかれた。



「法王。どうなさるおつもりです。

 王までも亡くなったと知られたら、王都は大混乱になりますぞ」


 神殿騎士たちが、法王の元に集まってくる。


 王と王子が同時に死亡。

 こんな事態はこの国始まって以来、初めてのことだ。

 そこにハウゼン宰相がやって来た。


「人の口に戸はたてられません。 

 王と王子の死亡は、瞬く間に民の知るところとなりましょう

 新王はいつ到着されるので」


「ここまで急展開するとは、思わなかった。

 新年の立太子式までは、何事もないだろうとゆっくりと動いている」


「ことは一刻を争います。

 貴族どもがどう動くか?」


「仕方がない。すこし強引な方法を取るしか無かろう」


 法王と宰相は、

 神殿前広場に来ることができるものは、

 全員集まるようにとの御触れをだした。


 夕刻6:00 日の入り前

 法王が重大発表をする。

 宰相も臨席すると……。


 噂雀がこれほど活躍したことはないだろう。

 どこに行ってもこの話題で持ちきりだ。

 反乱の噂。

 辺境伯が王位を狙って進軍しているとの噂。

 ともかく、民は落ち着かない。


 この混乱の中

 略奪や暴動が起こらないのは、王が施した食料のおかげだろう。


 そうは言っても、法王の発表次第では、それもどうなるか分からない。

 騎士たちは戒厳令が出されるのではないかと予想して、準備を始めている。


 貴族たちはもっと混乱している。

 誰が次の王になるのか?

 下手な動きをすれば没落は必至。

 しかし、うまく勝ち馬に乗れば?


 しかし、全員が一致していることがあった。

 とりあえず法王が何を言うか?

 それを聞いてからのことだ。


「言うまいぞ。言うまいぞ。余計な事は言うまいぞ」


「やるまいぞ。やるまいぞ。余計なことはやるまいぞ」


 人々は息をひそめ、静かにその時を待っていた。

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