レオンの求婚
同じ場所に向かうのだから当然といえば当然だけれど
辺境伯家のマリーとリゼリアは、いつの間にか親友になっていた。
不思議と藤姫、瑠璃姫と呼び合っているのは、多分ちょっとばかり
別の人になった気分がするからだろう。
藤姫はニルヴァに会った時、すぐにリゼの番だと気がついた。
「どうして分かったの?」
と聞いたら
憐れむような顔をして、
「そこまで染められていて、気がつかないほうが逆に不思議なのだけど」
と、言われた。
藤姫の目は、色々なものが見えるらしい。
見えすぎてうんざりするわ、と零している。
「まぁ、だから瑠璃みたいに、なーんも考えてないのが落ち着くんだけれどね」
などと、かなり失礼な事を平気で言うようになった。
ニルも藤姫には警戒心を持たないようだ。
そして一番変わったのはレオン。
何しろレオンと言えば貴公子。
とてもおとなしい良い子ちゃん。
私とも、めったに話さない。
まぁ、私と話そうとするたびに池に放り込まれていれば
普通の子供は近寄らないだろうけれどね。
それが、積極的に藤姫の面倒を見るようになった。
もうね。
みんなわかってしまう。
レオンは藤姫に恋しているんだろうなぁ。って。
「ねえねえ、藤姫。 レオンの事どう思っているの?」
そう聞いてみたけれど、藤姫はそっけない。
あんなにかいがいしくお世話されているのにね。
でも段々わかってきた。
藤姫はレオンが近くにいる時は、知らん顔しているけれど、
遠くにいると、ちゃんと目で追っている。
これもわかりやすい。
「好きなら、好きって言えばいいのに」
恋バナがしたくてそう言えば
「良いこと。あなたみたいに誰でも、ちょろいのだと思わないでね。
殿方というのは、苦労してようやく捕まえた獲物だからこそ
大切にする習性があるの。ちゃんと見極めないとね」
「凄いわね~。どうしてそんな事知っているの」
「お母さまがお父様を落としたテクニックですわ。
モテ男は、誰でも自分になびくと思ってしまうのですの」
なるほど。
なるほど。
勉強になる。
「どうしよーマリー。私ずっとスキ好きばっかり言っている
飽きられちゃうかも?」
すると藤姫はすんとした顔になった。
「あなたの場合、飽きられるどころか執着をどこまで回避できるか?
そっちでしょうね。問題は。
絶対に解決法なんてある訳ないけど。
聞いてはいたけど、えぐいわねぇ龍の執着って!
私ではとうてい無理だわ」
「そんな心配は必要ないな。お前に興味を持つことはないからな」
ニルがそう言いながら、私を抱っこした。
藤姫と遊んでいると、いつもこうして回収にくるのだ。
藤姫はひらひらと手を振った。
「あれで、執着に気がつかないなんて、
どうしたらあそこまで鈍感でいられるのかしら?」
「仕方がありませんよ。初めて出会った異性がニルで、
あれが普通だと刷り込まれていますからね」
レオンがしれっと今までリゼのいた位置に収まる。
「質問よ。ちゃんと答えて。
貴方は王妃として私を欲しているの?
それとも一人の女性として見ているのかしら?」
「可愛らしい質問をするのですね。
僕は君が好きですよ。
でも、パートナーとして相応しいとも考えている。
父の失敗を繰り返す訳にはいかない。
あの王妃のいびつさに、どうして気がつかなかったのか?
おかげで僕たちが苦労する羽目になりました。
民にも被害がでたし。
この先にも被害無しという訳にはいかない」
「ねぇ、マリー
僕は本当なら地方で穏かに暮らせる筈だった。
マリーも同じだよね。
だから、随分考えた。
僕の運命に巻き込んで良いのだろうか?
君に自由をあげたいとも思った。
でも、僕にも王家の血が流れているんだ。
王家の魔力は元はと言えば龍のもの。
執着が強い。
それでね。
僕の番は藤姫
貴女だ。残念だけれど手放しはしない
先に謝っておくね。ごめんねマリー
私の妻になって下さい」
マリーは泣き笑いのような表情になった。
「辺境伯家を舐めないで頂きたいわ。
元々、あなたに嫁いで王妃になれと言われて来たのよ。
それでも瑠璃姫をみていて羨ましいと思ったわ。
私は色恋は無縁だと諦めていたから。
まっすぐに私を欲しいと言ってくださってありがとう。
求婚をお受けいたします。我が王」
レオンは素早く立ち上がると
マリーを抱きしめた。
「愛しています。マリー。
私の忠誠は永久に君だけのものだ」
マリーはクスクスと笑った
「では、次代の王も王妃はひとりですのね?」
「そう申し上げていますのに。
誓いが足りませんか?」
そう言うとレオンはマリーにキスをした。
何度もキスを重ねながら独り言のように呟いた。
「あなたは新年には14歳になりますね。
あまり待たなくてよくて嬉しいです。
勿論結婚までは自制いたしますがね」
それを聞いてマリーは真っ赤になった。
辺境伯夫人は、きちんと妃教育をしてくださったのだと
レオンは思った。
そして、ほんの少し龍に対して優越感を感じた。
それも仕方ないだろう。
今までの仕打ちが仕打ちだから。
こうして彼らの覚悟は決まっていたが、
王都はどうなっているだろうか?




