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私の日記

 今日はのんびりと喫茶室を使おうと思っていたから

 エリーゼがくるのは すぐに分かった。

 素早く食事を収納するのと、エリーゼが喫茶室に入ってくるのとは同時だった。


「あら。嫌だ。ドブネズミがこんなところに。

 誰か、逃げないように閉じ込めておいて!」


 侍女たちがやってきて、私を図書館に閉じ込めた。

 しっかりと外から鍵をかけたようだ。重い扉はびくとも動かない。

 エリーゼは外からそれを確認したようだ。


「全く困ったドブネズミね。私の行くところに現れるのだから。

 殺しちゃえばいいのに」


「お嬢様。それはさすがに伯爵さまがお許しになりません」


「そう。それなら死なない程度に閉じ込めて。」


「かしこまりました。3日後に司書が来るはずですから。

 その時には発見されるでしょう」


 エリーゼはセーラを睨みつけた。


「余計な事を言うと承知しないわよ。

 お姉さまはうっかり迷い込んで閉じ込められたの。いいわね」


 セーラは真っ青な顔で頷いた。セーラが震えているのを見て満足したらしい。

 エリーゼは肩をそびやかして帰ったようだ。

 セーラは早速手紙を書いてマジックボックスに入れた。


「お嬢様大丈夫ですか? 必要なものがあれば教えて下さい。

 全部マジックボックスに用意します。」


 セーラは心配性ね。先に食事にすればいいのに。

 でも言わないとセーラはきっと食事もとらないで心配するだろう。

 私はすぐに返事を書いた。


「今回は痛い思いをしなくてすんで助かったわ。

 セーラはしばらくメイドたちと食事をとって。でないと不審に思われるから。

 心配しなくても丁度調べることがあったから、図書館は都合がいいの。

 それにしても、私も前世の記憶がもう少しあれば便利なのにね。


 あんまり心配しないで。後で寝具類を入れておいてくれると嬉しいわ。

 今日は大人しくしておくこと。

 明日以降侍女長に、私を出してくれるように頼むのも忘れずに。

 そうしないと不審に思われるから。よろしく」


 セーラからはすぐに返信が来た。


「お任せ下さいお嬢様。古参のメイドから情報を仕入れておきます。

 それから前世の記憶ですが、お嬢様が小さいとき

 自分はリゼリアじゃないと言い出して、奇妙な文字を書いていた時期がございます。

 もしかしたら小さい頃は前世の記憶があったのかもしれませんね。

 お嬢様の日記などは、図書館の子供の絵本コーナーに箱に

 入れておいた記憶があるので、探してみてください。

 3日もお会いできないなんて!あのエリーゼ。本当に嫌な子ですね。

 お嬢様、いつか復讐しましょう。絶対に」


 セーラはマジで怒っている。

 あの優しいセーラをここまで怒らせるなんて、エリーゼもたいしたものだ。

 でも、小さい頃に前世の記憶があって、大きくなるにつれて忘れてしまった。


 ありそう。

 小さい子供のいう事って、途方もないことが多いけれど、

 案外過去の記憶だったりするのかも。

 まずは朝食。お腹ペコペコだもの。


 お茶とパンとチーズ。それをテーブルに広げる。

 お腹からグーとはしたない音がする。

 パンにチーズをはさんでパクリ。

 うーん。美味しい。お茶も温かくて最高!


 エリーゼって、おかしいよねどうして石をぶつけたりわざわざ別館に来るのだろう?

 私だったら、嫌いな人にわざわざ会いに行かないわ。

 だって面倒じゃない。それより、美味しいご飯を食べる方が

 よっぽど建設的なのにね。


 エリーゼもエリーゼだけど。大人たちも本気なのかしら。

 10歳の子供に3日も断食させるなんて!

 図書館内にも給湯設備があるから、死にはしないだろうけど

 確実に身体が弱るはず。

 それでも平気なんて。まぁ気にしても仕方がない。

 まずは日記を探さなければ。

 まずは絵本コーナーへ。小さい頃の私が、何か残してくれるといいけれど。

 お願いよ。小さな私。

 

 図書館の絵本コーナーなら1階の窓辺日当たりの良い場所のはず。

 最近は来なかったけれど懐かしい。

 絵本コーナーは小さい子が遊べるようにふかふかの絨毯が敷き詰められていて、

 クッションもこれでもか!とばかりに置いてある。


 メイドさんたちのお仕事も完璧で、どれも綺麗なままだ。

 もしかしたら、弟のシオンの為かも知れないけれど。

 今夜はここで寝ようかな?

 いけない。いけない。

 寝床が確保出来そうなので、すっかり用事を後回しにしてしまった。


 絵本の棚のところに箱

 箱ねぇ~?

 あっ!あった!


 私でも持てるぐらいの小さな箱。蓋をあけると ちいさな日記帳

 わざわざ保管してくれていたのだ。

 どれどれ。ページをめくると奇妙な文字。この国のものじゃない。

 でも知っている。これは日本語。私は日本人だったのだ。


 内容は……。

 私が三浦理恵って名前の大学生で、ファンタジー小説が好きだったらしい。

 この世界が「蒼天の神龍」というファンタジー小説であること。

 日照りが続くのは神龍に生贄を捧げないからだと言われて、私は12歳で神龍の生贄になる。


 私が生贄になってから雨がふる。

 それでエリーゼは生贄の乙女の妹として有名になった。

 エリーゼはいつも生贄の乙女であった姉を慕っていたと話しているらしい。


 そのうち王子もその心優しいエリーゼに惹かれる。しかし生贄の制度は続く。

 やがて王子はエリーゼと協力して神龍を倒す。めでたし。めでたし。


 というストーリーみたい。全然めでたくない!

 しかもあのエリーゼが心優しい乙女??? 私を慕っていた?


 ありえないありえないから!


 原作がバグっているのでなければ、この話には裏があるはず。

 小さい頃の私もそう考えたみたい。お母さまはいたって元気だった。

 ある日。神殿からの贈り物が届く。その夜 お母さまは急に寒いと言い出し、

 いくら温めても身体が氷のように冷えて死んでしまったという。


 どう考えても怪しいのは神殿からの贈り物。

 それなのに、そんな贈り物はなかったことになったらしい。

 神殿は贈り物をしていないと言い、実際に記録もなかった。

 しかも贈り物自体が消えていた。


 なるほど。

 それならお父様が疑念を持つのは当然だ。

 けれどそれから僅か1年でお父様は捜査をあきらめてお義母さまと結婚する。

 そして今やお義母さまの言いなりになってしまった。


 やっぱりおかしすぎる。それに神龍というなら、神のしもべのはず。

 生贄を捧げなければ雨を降らせない。そんなことを神様がするだろうか?

 やっぱり、それも怪しい。お母さまは本当の事を知る能力があった。

 だからこの世界の闇を知ったのではないか? それで殺された。


 お父様は殺されていないけれど、ほとんど廃人に近い。

 自分の意志を現したことがない。

 昔はもっと苛烈で逞しい人だったと思う。


 多分

 お母さまは殺されて、お父様も心を殺されている。

 私を生贄にすれば全てが闇の中。そんな勢力がいるのだ。

 きっと。


 どうすればいい?あと2年もない。

 あっと言う間に12歳になってしまう。

 日照りの兆候はある。この頃雨が降らない。

 これが2年も続けばお父様の領地は枯れてしまう。


 もう始まっていたのだ。お母さまが死んだ時に。

 お父様が再婚した時も。


 それならきっとお義母様が何か知っているはず。もしかしたらエリーゼも?

 お義母さまの実家ノクス伯爵家 それが鍵かも知れない。


 私はどうしてこうも虐待されるのだろう。その理由も調べなきゃ。

 確かに継子だけれど。ここまで目の敵にするなんてね。


 

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