黒い馬車再び
王都に向かうためにリゼリアは再び黒い馬車に乗り込んだ。
前回は悲惨だったけれど。今回は本当の旅だ。
わくわくしてしまいます。
けれど馬車に乗り込む前
ニルが私とセーラ、ノーラを呼び留めた。
そしてセーラとノーラに尋ねた。
「リゼを守る為に、お前たちに魔力を与える。
回復と浄化の魔法 暗示の魔法 どちらかを選べ。
セーラは
「私はリゼさまの近くにいるので、回復と浄化がいいです。
リゼさまのケガや病気が治療できるのですよね」
「そうだな。解毒やヒーリングも使えるようになる
ではノーラ。そなたは暗示でよいのか?」
「そうですね、私はお傍にいるより社交担当になるでしょう。
貴族ですから。暗示が使えれば便利そうですね」
「暗示は自分が支配されているとの自覚なく、行動を誘導できる。
万能ではないが、うまく使えば記憶も操作できるぞ。
よく考えて使え」
そう言うと、セーラには白い魔法石、ノーラには黒い魔法石を
私が逆鱗を取り込んだと同じように体内に取り込ませた。
二人は余程疲れたらしく、ぐったりとしている。
「馬車でゆっくり眠れ」
二人は素直に馬車の中へ。
「リゼリアはこれだ」
そう言って見せてくれたのは、瑠璃色の魔石だった。
セーラやノーラのと同じように時々キラキラと光る。
「おいでリゼ」
そう言われてニルに近寄ると、ニルは瑠璃色の魔石を口に含み
ガリガリと噛んでしまった。
びっくりしていると、ニルはそのまま私に口付けすると、
少しづつ魔石を私の中に流しはじめた。
あまりにも大きな魔力なので、途中でふらふらになった。
けれどもニルはそっと身体を支えると、ゆっくりと魔力を流す。
身体が熱くなって苦しい。
ようやく終わったらしくニルがそっと
私をお姫さま抱っこして馬車に乗り込んだ。
あれぇ。これ、前回と同じじゃないかなぁ。
眠りそうになりながら、ニルを睨むと
ニルはクスクス笑いながら、ソファに座る。
そしてゆっくりとあやすようにキスをする。
何度もキスされるうちに、私はぐっすりと眠りに落ちた。
なんて愛しいのだろう。自分の腕の中でぐっすり眠るリゼ。
エグゼキエルの魔力は、さすがに其のままでは取り込むのは難しい。
だから粉々にかみ砕き、自分の魔力でなじませながらリゼに与えた。
実際にはエグゼキエルの魔力はほぼ自分で取りこみ
リゼに与えたのは自分の魔力だ。
私の魔力にゆっくりと馴染んでいくリゼリア。
こうしてリゼリアは私に染まっていく。
いずれは人ではなくなるだろう。
だけど、少しずつだからリゼは気がつかない。
愛しいリゼ。 可哀そうに。
人ではなくなるなんて。でもねぇ。リゼ。
人と龍では寿命が違いすぎる。
君が先に死ぬなんて許せる訳ないだろう?
だけど、気をつけないと。 成長が止まっては大変だ。
人として成熟させながら、少しずつ取り込む。
この加減が難しい。でも、それも面白い。
ゆっくりと落ちておいで。私のリゼ。
ニルがすっかり満足しているので
旅も穏やかなものになる。
旅はひと月もある。ゆっくりいこうねぇ。
愛しいリゼ。




