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新しい護衛

 私がアルヴィス侯爵家の一員となったことを、

 正式にお披露目する小さなパーティを開くと、お祖母様が張り切っています。


 ちょうど来月が誕生日なので、11歳のお祝いとお披露目を

 騎士や依子を招いて行うことになりました。


 それでおじい様が専属騎士をつけようとしたら

 ニルが大反対したんだそうです。

 ニルは自分がいれば護衛騎士はいらないといいます。 

 

 ニルは自分はちょこちょこと消えてしまうのに、

 私が他の人と話すぐらいで焼きもちを焼いてしまいます。

 ですから年も近いというのに、レオンとはたまに話す程度

 ほとんど没交渉なのです。


 そんなある日、おじいさまがニコニコして言いました。


「ニルも認めた護衛が決まった」


 ニルが護衛を認めるなんて!

 正直あんなに嫉妬深いニルが護衛を認めるとは

 到底思えないのです。


 だって護衛は四六時中側に侍るのがお仕事です。

 ニルがそれを許すなんて。

 一体どうしたと言うのでしょう。

 

 私が信じられないという顔をしていると、

 おじい様が楽し気に護衛を呼びました。

 

 「アル。入ってこい」

 

 「えっ! お父様!」


 目の前に立っているのは、本当のお父様でした。


「リゼリア姫。護衛を担当するアルフレッドでございます。」


 お父様は騎士の礼をしました。

 私が口を半開きにしていると、ニルがからかいます。


 「みっともないぜ、リゼ。口を閉じろよ」


 おじい様がいたずらが成功して喜んでいます。


 「説明するから座りなさい。」


 何と!ローゼンベルク伯爵家は没落したそうです。

 お父様は平民となって、

 おじい様に私の護衛騎士として雇われたそうです。


 そんな馬鹿な話があるでしょうか?

 だってお義母さまも、エリーゼも意気揚々と王都に向かいました。

 一体なにがおきたら、貴族家が一瞬で無くなってしまうのでしょう。

 

 しかもお父様は、長年廃人のように静かに暮らしていました。。

 けれども今のお父様は、おじい様の副官ゼノン隊長と比べても

 遜色ない身体付きをしています。

 本物の騎士様のようです。


 おじい様は王宮であった出来事を話してくれました。

 お義母さまや、エリーゼが亡くなったなんて!

 王宮というのは、何と恐ろしいところでしょうか?


 それも二人ともムチで亡くなったのです。

 私は自分がムチ打たれた時のことを思い出してしまいました。

 まるで二人はその為に罰を受けたかのようです。


 「シオンは、弟はどうなりましたか?」


 「シオンは心配いらないよ。乳母と侍女を連れてきている。ここにね」


 「まぁ、シオンも一緒にいられるのですね」

  

 シオンだけでも助かって良かった

 継ぐべき家は無くなってしまったけれど命は助かったのです


 「リゼ、私とシオンは平民だ。お前とは違う

 それを忘れないでくれ。ただ平民でも騎士には、なれるからな。

 お父様は実力で騎士になったんだぞ」


 お父様はちょっと誇らしそうです。

 伯爵さまより騎士でいるほうが楽しいみたい。

 きっとシオンも立派な騎士になれるでしょう。


 おじい様も釘を刺します。


 「身分をわきまえて行動しなさい。

 できなければ、シオンやアルはこの領土では暮らせない」


 「はい、分かりました」


 それでも不思議です。

 エリーゼは確かに我が儘でバカな子でした。

 でもお義母様は、お父様を押しのけて伯爵家を牛耳るくらいの女傑です。

 むざむざとエリーゼに失態を演じさせるなんて!


 「お父様は演技していたんですか?」


 「お義母様がどうしてエリーゼの失態を見逃したのですか?」


  質問したいことは山程あります。


 おじい様はあの茶会で、

 ローゼンベルク伯爵家が没落することを知っていました。

 そうでなければ、あんなに急いで私を養子にしない筈です。


 おじい様たちが何かやらかしたに決まっています。

 それにしても


 「おとうさま、どうしてエリーゼを助けなかったのですか?」


 どれだけ我が儘でもエリーゼは5歳です。やり直しは効くはず。

 命を救う方法はあったと思うのです。

 お父様は困った顔をしました。

 

 「エリーゼは本物の貴族だったんだよ」


 その言葉だけで、納得できました。

 私やお父様、それにシオンは貴族でなくても生きていけます。

 ある意味、私たちは貴族らしくないと言えます。


 でも、エリーゼ。

 彼女は根っからの貴族でした。

 お義母さまも。


 お義母さまは知っていた筈です。

 自分がムチを受けてもエリーゼの命は助からないと。

 でも、ムチを受けた。

 平民として生きる気持ちがなかったのかもしれません。


 それよりも許せなかったのでしょう。

 エリーゼの遺体が残らないことが。

 幼い子供がムチ打ちにあうと遺体は残らないそうです。

 

 柔らかい身体は、すぐに崩れてしまうから。


 お義母さまはそんな屈辱が許せなかった。

 きちんと遺体を埋葬したかったのでしょう。

 誇り高く生きて

 誇り高く死ぬ

 それが貴族なのかも知れません。


 もし、そうなら

 お義母様はいまごろあざ笑っているかも知れません。


 お父様を見て。

 お前は貴族の誇りを捨てても生きたいのかと。


 でも、お父様は誇り高い人です。

 ただ誇りのありようが違うだけ。

 お父様は人として誇り高く生きているのでしょう。


 私が黙ってしまったのを見て

 お父様は優しく頭を撫でて下さいました。

 きっと父親として接してくれるのは

 これが最後。


 それだけは私にもわかりました。

 私は頭をしっかりとあげて言いました。

 

 「アル。これからよろしく頼みます」


 「はっ!畏まりました。姫」


 そうしてお父様は部屋を出ていきました。


 「おじい様、ありがとうございました」


 万感の想いを込めたそれを、

 おじい様はしっかり受け止めて下さいました。


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