↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
笑天宮御政録 ―自然に暴走する女帝と常識トリオ―  作者: 鑫鑫
第四章 白風の外交なんよ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
72/81

第十五話 白嶺に行ったんよ

天華国は、友好条約を更新するため、天華を団長とする使節団として、不戦と対話を示す翡翠色の旗を高く掲げ、東の白嶺へと向かっていた。

白嶺は揺れの国──だが、道中ではまだその静謐な文化の気配は薄い。


天華「ほい、白嶺ってどんな国なんよ?」


兵卒「ちょっと体がゆらっと揺れただけで『心が調和した』とか言い出す、静かにヤバい国なんよ……」


牧玄「調和……? 一体……何と何が調和するのだ……?」


揺読「(淡々と)……歩幅と袖の揺れ周期を記録します。」


影読「(淡々と)……揺れによって生じる影の重なりも確認します。」


蘭花「ふふふ……揺れとは……心の奥底にある礼節そのものでございます……」


薄花「……そうでございます……揺れの影が……静かに重なります……」


牧玄「(頭を抱えて)影が……揺れる……? 揺れが……影になる……? ど、どういう理屈だ……!?」


兵卒「牧玄殿! 白嶺の理屈も、蘭花様たちのポエムも、深く考えたら脳が狂って負けなんよ……!!」


天華「ほい、揺れたら楽しいんよ!」


牧玄はまったく理解できない顔のまま、白嶺の静まり返った揺殿へと足を踏み入れた。

白嶺の揺殿は、清らかな風が静かに通り抜け、

天井から吊るされた無数の絹布がゆるやかに揺れ、床には幾重もの影が静かに重なり合っていた。


揺間導師「静寂を……。天華国は白嶺の“揺れ礼外交”を完全に理解された! 揺れの間が完璧に一致した瞬間、我が国との友好は永遠に極まったのです!」


揺記官「(木札に刻みながら)姫君の袖揺れ、周期まさしく三拍……! お見事……! 古来の至高なる揺れ礼と完全に一致……!!」


揺衛士「(長槍を構え)揺れの乱れを即刻排除せよ! 神聖なる揺れの道を開けよ! 乱す者は不敬なり!」


揺僧「(静かに伏し)姫君の揺れが柱の影と重ね合わさった……。これぞ無上の『心の整い』……!!」


白嶺歓迎員一同「揺れが一致したーーーっ! 友好は極まったーーーっ!!」


天華はふんすと胸を張り、袖をゆらゆらと揺らした。


天華「ほい、自然に揺れただけなんよ!」


蘭花「ふふふ……姫様の揺れは……白嶺の方々の乱れた心を清らかに整えるのでございます……」


薄花「……そうでございます……揺れの影が……静かに重なるたび……歴史の物語が熱く息をする……美しゅうございます……」


牧玄「……こ、これは……一体どんな種類の儀式なんだ……?」


影読「(真顔で)……儀式ではありません。白嶺側の『揺れの誤認』です。」


揺読「(真顔で)……姫様の何気ない動作を、揺れの周期が一致したと勝手に誤認しています。」


兵卒「ただ勝手に揺れて、勝手に勘違いしとるだけなんよーーーっ!!」


白嶺の者たちは揺れの間合いを寸分狂わず揃え、静かな調和の呼吸で天華国一行を静かに熱烈歓迎したのだった。

友好条約も何もしていないのに何故だか自然に更新されたようだ。


──天華国・政務殿へ帰還。

玉座には、天華の祖母である太后が、威厳と静かな疑問をたたえて座していた。


太后「……天華。白嶺では、どのような歓迎を受けたのじゃ?」


天華は誇らしげに胸を張った。


天華「ほい、おばあちゃん、揺れただけなんよ!」


太后「……体が揺れたら……盛大な国家式典が始まるの?」


兵卒「違うんよ!! 式典なんか1ミリも始まらんのんよ!!」


天華「そうなんよ、揺れの間が一致したって、白嶺の導師が勝手に感動して大喜びしたんよ!」


太后「……揺れの間が一致すると……国家間の友好が成立するの?」


揺読「(真面目に)白嶺の文化体系においては、成立します。」


兵卒「成立せんのんよ!! 勝手に成立させられたら困るんよ!!」


天華「おばあちゃん、袖揺れの周期を測られたんよ! 三拍とか言われて木札にメモられたんよ!」


太后「……袖揺れの周期で……我が国の外交方針が決まってしまうの?」


影読「(真面目に)白嶺の判定基準においては、決まります。」


兵卒「決まらんのんよ!! そんな適当な周期で国の命運を決めんでくれなんよ!!」


天華「ほいじゃけぇ、揺れの乱れを排除されそうになったんよ!」


太后「……揺れの乱れ……? それは相手に対する敵意とみなされるの?」


揺読「(真面目に)白嶺では、敵対行動と誤認されます。」


兵卒「盛大な誤認なんよ!! ちょっと躓いただけで戦争になりかけるんよ!!」


天華「おばあちゃん、揺れが柱の影と重なったら、お坊さんたちに祈られたんよ!」


太后「祈る……? 揺れが重なると、人の心が整うの?」


剛明「(胃を押さえながら)一切整いません。」


兵卒「ただ揺れて影が重なった!! それだけなんよ!!」


太后「……つまり、本当にただ『揺れただけ』なのね?」


天華「そうなんよ、おばあちゃん、揺れただけなんよ!」


兵卒「ほんまにそれだけなんよ!!」


太后は静かに深く目を閉じた。

揺れの国の外交は、聡明な太后にとっても、理解するにはあまりにも“間”が深すぎたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。